相模嵐山相模湖駅から相模嵐山

中央本線の高尾駅から下る列車はしばらく狭い谷間を走ってからトンネルに入り、出たと思えばまた入りを繰り返す。逼塞していた空間が広がるとそこは相模湖駅で、湖の向こうに背のわりには大きく石老山が広がっている。しかし湖畔にある山はこればかりでない。来し方にやや視線を戻すと、嵐山の穏やかな姿が近くにある。


この山の名については由来があり、山麓に建つ正覚寺に伝わるところによれば、「嵐山とは今より千百余年前、 大和の隆弁僧正この地に遍歴の際、山城の嵐山に似たるとてこの名を附せりとあり、西行法師はこの嵐山に憧れて、歩をこの「間の山」に進めしものという(正覚寺のサイトより引用)」。もともとは道志の山々と高尾の山々のあいだにあるので「間(あい)の山」と呼ばれていたらしい。いまでは嵐山で通るが、本家の嵐山と区別するため相模の名を冠して呼ばれることもある。
駅前に降り立てばすぐそこにあるように見えるので簡単に山頂に着けそうな気がするが、歩けば小一時間はかかる。山道の登りは30分ほどだが、適度に斜度があり、12月中旬だというのに多少の汗をかかされた。落ち葉が散り敷かれた広い道のそこここに苔のついた岩が顔を出している。見通しのよくなった木々の合間からは、左手に奥高尾の山並みが大きく、とくに正面の城山が悠揚迫らぬ姿で心地よい。右手に大きく開けたところがあり、相模湖を眼下に収め、彼方には扇山や大菩薩が望める。この展望は山頂からでも得られるが、アンテナ施設が少々気になるところだ。
山頂から相模湖・扇山(中景中央)・権現山(中景右)
山頂から相模湖を見下ろす。
中景は扇山(中央)・権現山(右)。
背景は南大菩薩および小金沢連嶺。
どことなく傾いて見えるが、じっさいにこう見える。
上ってきた道を下ってもよいのだが、それでは土の上を一時間と歩かないことになる。山頂着が夕方4時近くだったが、歩き足りなさを感じて石老山登山口に向かう道に入った。これは稜線をたどっている間は登り同様に気持ちの良い雑木林のトレールだ。残念ながらこれはほどなく相模湖ピクニックランドという遊園地の敷地に突き当たってしまい、これを迂回するために下って山腹を歩くようになる。小さいなりに谷や支尾根が入り組んでいるので、地図で地形を頭に入れていないとどの方向に歩いているのかわからなくなる。
山頂からバス停のある車道まで一時間弱はかかるが、下っては登るを繰り返す道のりを下山ととらえると不満がたまることだろう。むしろ山中逍遥ととらえた方がよく、やや暗めの雰囲気も山深ささえ感じさせてくれるものだ。途中数カ所ある木橋は濡れて滑りやすく、それだけでも短時間で歩ける低山と侮れるものではなかった。


このルートは東海自然歩道なので、いまでも歩くひとはかなりいることだろう。だが山塊の稜線を続けて歩くことができていれば、手軽さと快適さが受けて、さらに人気のルートになっていたのではと思う。地図を広げて「間の山」小山塊の主要部分がすべて遊園地になっているのを見ると、残念な思いを禁じ得ないのだった。
2003/12/13

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