奧香落周辺 奧香落の鎧岳

この辺りは登る山も多いが、観光だけでも赤目四十八滝に曽爾高原、奧香落の鎧岳・兜岳・屏風岩があり、脚をのばせば室生寺もあるという計画するだけでも楽しいところだ。じっくり腰を据えて遊び回りたいと以前から思っていたが、5月の連休に5日続けて休みが取れたので連れと二人で行ってみることにした。


最初の二泊は奧香落高原ロッジに宿をとる。この近くには小ぶりのマッターホルンとも言うべき鎧岳があり、近鉄名張駅からバスでここ奧香落に来る途中にその麓を通ったときは「この山はいつか崩れ落ちて来るんじゃないか」と思ったくらい急峻に立ち上がっている。隣の兜岳同様に柱状節理の発達が顕著で、向かいの倶留尊山が噴火したときに溶岩が飛んできて冷えて固まってできたとガイドには書いてあったが、いったいどうやってその溶岩が一ヶ所に積み重なったのか不思議でしようがない。宿に着いたらすぐ雹が降ってきたので、この日は出かけるのは諦め、この目で見るのを楽しみにしていた鎧岳を窓から眺めるだけで十分とする。
二日目はいったん名張に戻り、電車とバスを乗り継いで赤目四十八滝入り口へ。滝の続く渓谷は運動靴で十分なところで観光客も多かったが、次々と繰り出される滝の眺めは飽きることがなく物足りなさは感じなかった。上流に向かって歩き続けると道はバスが走る車道にぶつかるが、我々はその車道を椿井峠を越して奧香落まで歩き通した。途中兜岳への登山口があったはずなのだが見つけられなかった。いずれにせよこういう岩壁のそそりたつ山には相方を連れて登りたくないのでそれでもよかったのだが。
赤目四十八滝 荷担滝
赤目四十八滝 荷担滝
三日目は広い谷を挟んで宿とは反対側にそびえる倶留尊山に登る。このときは山菜取りの人たちが多く訪れていた。ところでかなり多くの人が山菜を根こそぎ取っていた。これはやり方として悪くないのだろうか。根のすぐ上を切って取るものだと思うのだが....。この山は私たちが登ってから何年かして入山料を徴収するようになったらしいが、こういうことも関係している気がする。
登る前に国立少年自然の家というところでお茶をいれて飲んだのだが、日が陰るとかなり寒い。広々とした草原風景の曽爾高原を眼下にして新緑の山頂に至る。東にすっきりした形の大洞山や尼ヶ岳が見える。あちらを歩くのも眺望がよくて楽しそうだ。下山は「二本ボソ」との鞍部から十の場峠方面に下る。かなりガレた道だった。
倶留尊山にて
倶留尊山にて


さて次の日、今日はどこに登ろうかなどと贅沢な楽しみに浸った後で、西方にある住塚山と国見山という山を登りに行く。昨日から宿は曽爾高原ロッジ口の民宿に変わっているが、交通の便は変わらない。今日の登りは宿から歩いて一時間半ほどの屏風岩という地図上では2キロも続く柱状節理の岩壁の下から始まる。住塚山は眺めがよかったが山頂が狭いのでその先の国見山まで脚をのばす。名は体を表すと言うが、国見山という山はたいてい眺めがよく、山頂も広かったのでこちらで昼御飯とする。

そこからは東海自然歩道に合流して奧香落に戻ったのだが、途中の済浄坊渓谷という短い谷が赤目四十八滝の滝に劣らないきれいな滝をいくつか持っていた。人気もなく静かで、連日の山歩きに疲れた身には沢音が耳に心地よく、ぼーっとするにはよいところだった。
済浄坊渓谷
済浄坊渓谷


最終日は再び名張に出て近鉄で室生口に行き、バスに乗って室生寺を目指す。荷物が軽ければ奧香落から歩いても行けたのだが、連れが連日の山歩きにさすがに音を上げたので電車移動にした。石楠花が盛りの室生寺は人も多かったが花も多く、春の盛りを感じさせた。狭くない寺域内をあちこち歩いたのでちょっとしたハイキングにはなった。室生寺近辺の名物は草餅のようで、作りたての餅を買おうと大勢の人が店先に行列していた。抹茶に草餅のセットを頂いたが歩き疲れていたせいもあってたいへんおいしかった。

室生寺五重塔は1998年の台風で傍らの大木が倒れ、屋根がかなり破損したということだが、ひじょうに残念なことだ。だが既に修復への働きかけが進んでいるとも聞く。人の手によって大切にされている古建築を見にいつか再訪しなくてはならないだろう。
室生寺 五重塔
室生寺 五重塔(破損前)
1991/5/2-6

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