男体山     日光白根山 中曽根からの下りから日光表連山
男体山が宗教の山であり、今でも宗教的理由で登拝している人が多いことはよく知られている。また日光の自然を代表するものとしては華厳の滝、中禅寺湖、戦場ヶ原とならんでいる。山に興味がない人でも、男体山の名前は知っている。同じ日光の山でも日光白根山や表連山中の女峰山や大真名子・小真名子などはたいがいの人が知らないだろう。それだけ知られた山の常で、「ちょっと登ってやろう」と取り付く人は多いと思う。 
だが、はたして男体山は登って楽しい山だろうか?夏の盛りの8月中旬、やや日が高くなった午前中に麓の二荒山神社中宮を出発して頂上を往復した私は楽しいとは思わなかった。登り始めに林間の緩斜面を行く以外は頂上直下までほとんど斜度の変わらないジグザグ道をただ登るだけで道そのものは変化に乏しい。「山頂から中禅寺湖とは反対側の志津越え側に下りれば自然景観が少しはよい」と新潟の妙高山を登りに行ったときに隣にテントを張った方からうかがったが、志津からの林道歩きを考えるとおいそれとは実行しがたい。だがあとあと考えるとこのような横断登山をするべきだった。

山道近辺は神域として保護されてきているはずだから植生が豊かだと思われるが、植物に詳しくない私は個々の草木を観察しきれず、また盛夏の山に花は多くない。山道の途中や山頂からの眺めがよければまだしも、山頂で午後から湧くガスに周囲を遮られては結局単に登っただけの山になってしまった。

幼年期火山の山体に走るナギの縁を登ったり、下りの休憩中に野生の猿が餌をねだって出て来たりと興味が全く湧かなかったわけではないが、「開山の勝道上人は残雪期に登って正解だったな」などと昔を偲んだところで、ただひたすら真夏の日差しが容赦なく照りつけてくるのに耐えるだけの山登りであることに変わりはない。内容としては貧弱な山行だった。この山を楽しむためには、かなりの下準備と思い入れが必要だと思う。
1995/8/5

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