天城山  三月の天城山稜線 
3月も半ば、雪もあってちょうどよい手応えだろうと思い、伊豆の天城山に登りに行った。
歩く分には、春山の締まった雪でもあり、先行者たちのトレースもあったおかげでさほど踏み抜きはしないで済んだが、安定はやはり悪くかなりくたびれる。山から帰った翌日からすねの前面外側が痛んで仕方なかった。加えて雪が厚く積もっているおかげで,普段ならぶつからない筈の木の枝がさんざん頭にぶつかる。これにはかなりいらいらする。下りではアイゼンもよく外れ、ベルトの締め方の悪さを棚に上げて「欠陥商品じゃないのか」と毒づきもした。
気分をよくしてくれたのは、終日、富士・箱根・丹沢に相模灘、伊豆七島の眺めがよかったこと。それに、万二郎岳と万三郎岳のあいだの馬酔木の森は花の満開時には見事なものと思われた。石楠花や山桜もあるので、お花見山行にも向いていそうだ。印象的なのは馬酔木に混じって生えている鉄錆色の樹肌をした落葉樹だ。ちょっとした林になっているところは、林床が雪で白い上に赤茶色の木の幹が青空をバックに林立していて、ちょっとよそでは見られない異様な明るさの光景を出現させている。あとになって、これらはヒメシャラの木とわかる。


朝、伊東駅に降り立ってみると、本日まで東海バスは多雪のせいとかで天城高原止まりである。時刻表にはそんなことは書いてなかったぞ。そのうえ乗ったバスが終点まで行かないうちに他の客につられて矢筈山の登山口というところで降りてしまう。仕方なく坂道の車道を歩き出す。するといくらも行かないうちに下ってくるタクシーに遭遇。渡りに船とはこのことだ。さっそく天城山の登山口のあるゴルフ場まで行ってもらう。
雪はあるだろうと思っていたが、なんと積雪30〜50センチ。スパッツにアイゼンを付けて歩き出すと、ご丁寧に雪まで降ってきた。ここは伊豆だろう、天城でこれはないじゃないか、と思いつつ正面から吹き付ける雪を避けるためうつむきかげんで歩く。雪は20分ほどで止んだ。

登山道で地面が見えるところの距離総計が約5メートル。あとはみな雪また雪だった。登りで下ばかり見て歩くと眩しくて目が痛くなってくる。この季節はサングラスが必須と思った。通常かけている眼鏡にかぶせるセルロイドのカバーのようなやつはどこにしまったのだったっけか。
登山口から旧天城峠まで縦走しようと思ったが、たどり着いた万三郎岳の山頂でトレースは途切れており、自力でラッセルするしかない状況。時間もないので結局往路を戻る。
天城高原を15時台に出る当初乗車予定のバスは結局捕まえられず、次の便を待っていても相当の時間が空くので、暇つぶしに来るときに間違えて降りたバス停まで車道を延々1時間40分歩く。下りでこれだから、登っていたらもっと時間がかかっただろう。つくづく朝タクシーを捕まえられてよかったと思う。バスが来るまでさらに時間があったので、矢筈山登山道に少しはいって「もう誰も通らないだろう」とばかり、薄闇があたりを漂う道の真ん中でひとり湯をわかしてココアを飲む。熱くておいしい。夕方5時前のバスで伊東駅に出た。
ゴルフ場への道から天城連山
ゴルフ場への道から天城連山
1998/3/15

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