四阿山 根子岳との鞍部から見た四阿山

キャベツ生産で有名な嬬恋を越えて車でなおも進み、スポーツで有名な菅平に向かって行くとやがて周囲は高原状になり、右手遠方に目をやれば片方に傾いだ直角三角形の山が二つ並んでいるのが目に入るようになる。四阿山と根子岳である。これらの山は戸隠バードラインを長野市街に下ってくる途中でも遠望できたように思うが、すっきりとした開放的な姿をしていて登ればきっと爽快だろうと思っていた。そこで夏の終わりに登りに行ってみることにした。


最近のガイドには上田からタクシーで鳥居峠に出ることを勧めているものが多いが、よくよく地図を見ればJR吾妻線鹿沢口駅からバスで行くことの出来る鹿沢温泉口から鳥居峠までの車道歩きはほとんど標高差がなく楽に歩けそうだ。距離からして一時間あれば十分とみて行ってみたが、実際そんなものだった。歩いている途中で箱詰めされた高原キャベツを大型トラックに積み込んでいるのを何度も見たが、あれだけたくさんの箱詰めキャベツを見ると市場で値崩れしないのかと余計な心配をしてしまう。首都圏全体の消費量からすれば微々たる量なのだろうが、何台ものトラックいっぱいのキャベツというのを実際に見ると食物と言うよりは工業製品のような気がしてくる。
鳥居峠からのコースだが、このコースはカラマツ林の中の一本道歩きから始まって樹林帯の登高、見晴らしが良く休憩に最適な場所の多い稜線、信仰の跡を示す多数の石宮というように変化が多い。ガンコウランやゴゼンタチバナも見られるし、ハイマツはないもののちょっとした高山気分が感じられる。山頂直下で初めて姿を表す根子岳の姿も印象的なら、登り着いた山頂から浅間連峰方面に急激に落ち込んでやがて緩やかなスロープをなす裾野の眺めも爽快だ。四阿山は根子岳とともにカルデラの外輪山を構成し、山頂には陥没部を背にして上州宮と信州宮の二つの社が建っている。どちらがどちらかは建物がそれぞれの名前が示す方に面しているのですぐわかった。
山頂から根子岳に続く鞍部は踝ほどのササが生えた小広い草原で、目の前に鋭角にそそり立つこれも一面ササ原の根子岳を眺めながら天上の楽園気分に浸れる。心地よい風が菅平方面から吹き渡り、9月を目の前にして初秋の雰囲気が漂う。四阿山から縦走してくると、根子岳山頂部は直前に累々たる岩石を連ねている。これらの岩の基部を巻くようにして広く見晴らしのよい場所に出ると、そこが山頂だった。小さな社が一つあり、その向こうには草原のなだらかな斜面が眼下に広がる菅平高原まで緩やかに下っている。鳥居峠からの登り始めはやや暗い雰囲気だったが、こちらは何とも明るい。
根子岳山頂からは遥か下に見える菅平までかなりかかりそうに思えるが、飛ばして下りたせいもあってすぐ下り着いた。上田方面に向かうバスをつかまえ、真田の町で途中下車して日帰りの温泉センターで一浴して駅に出た。
1997/08/31

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