ニセ外人来日記
ちょっと日本に帰ることになった。久々の祖国で懐かしさで胸がいっぱいかというと、そんなことはなく、
「ニッポン、びる、タカイタカイ!」
とか、
「ニッポンジン、あじあジンダト、オモテタケド、カミノケ、クロクナイネ」
といったように初めて来日した外国人のようなカルチャーショックを受けていた。最大のカルチャーショックといえば、やはり技術進歩だ。今の日本では、音楽が聞ける携帯電話とか、テレビ録画ができるパソコンとか、どこへでも行ける光ケーブルとか、信じられないことが実現していた。
さらに聞いた話では、日本ではスイカで電車に乗れるらしい。一体これはどういうことであろうか、ニセ外人が推測するに以下のようなことではないか。
(駅の切符売り場に男がやってくる)
駅員「どちらまでですか」
男「どや、見て、みい、エエつややろ。」
駅員「・・・・・・?あの・・・どちらまで」
男「何やと?俺が持ってきたコレが見えへんのか?」
駅員「・・・・・?それが何か・・・?」
男「”ソレ”やあれへんがな、”ソレ”や。コレはのう、今年取れたての西瓜や。糖度バツグンで、夏はこれさえあったら他は何もいらんでぇ。」
駅員「え・・・・そ、そうですね。おいしそうですね。確かに」
男「な、な、そう思うやろ。」
駅員「で、・・・・・どちらまでですか」
男「大阪まで、のぞみ往復。」
駅員「2万8100円になります。」
男「何いうとんねん。なめとんのか。」
駅員「えっ・・・・?」
男「さっき、これさえあったら他はいらんっちゅうたやろうが。お前んとこの会社は客をだますんかい!たったと切符ださんかい。」
駅員「ヒィィィー!」
男「言うとくけど、グリーン車やからな。」
「トテモ、トテモ、サツバツトシテイマス。ニッポンノココロ、ドコイキマシタカ」
ニセ外人が嘆くのも無理はない。今の日本は、金儲け第一主義のために人と人とのふれあいという大事な物を失ってしまったのだ。何しろ今では女性専用車というふれあいを拒否する人達専用の車両まで誕生してきているのだ。
ふれあいを求めて町中をさまようニセ外人の眼にとある電柱が飛び込んできた。
「コッ・・・・・・、コレハ!?」
てやんでぇ、最近の若いモンは出会い系サイトなんぞ、しみったれたマネしやがって!
男なら、どおーんと、自宅の電話番号さらさんかい!!
と、そんな意気込みが感じられる心強い張り紙である。
「スッ・・、スバラシイ!! コレガ、ウシナワレタ、ニッポンノココロ、デスネ。
サイゴニ、トテモイイモノヲ、ミセテイタダキマシタ。」
こうして名も知らぬ(でも電話番号は知っている)男に勇気付けられたニセ外人は日本を後にしたのであった。そして人間として大事な物は何かを気付かせてくれたこの方に幸あれと、願うのであった。
ま、願わなくても十分幸せな人だと思うが。