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 トンデモ批判のトンデモさ

 

 このサイトが本に紹介されてるよー。と、教えてもらい、「うれしいな」と思って買ってみました。

 ただし、冒頭右の「あの本」がらみだとわかったとき、少しイヤな予感もしました。

 やってきたのが左の本です。

 どっちも、さらしときます。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4835539230/qid%3D1117192352/249-3999084-6756358

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 以下「右本」「左本」と書きます。

 右本の作者は「A」、出版社は「B社」。左本の作者は「C」、出版社は「D社」とでもしときます。単なる手抜きです。他意は「ありません」。


 一読しての感想はどちらも「ひどいな・・。」です。
 右本はもはやハイジファンの中では伝説のトンデモ本でしょう。
 
 左本はトンデモ本というステキなネーミングを社会に定着させたシリーズの一冊です。
 その活動の一環として、右本を5頁使ってとりあげて紹介しており、その最後にこのサイトの右本の評というか警告、
 「一般ファンによる意味不明の作品。支離滅裂に近い。おすすめしない。」
 を「同感」として、URL付でご紹介いただきました。


 自分と同意見であるとして評価していただいたのは、とても名誉なことのはずなのですが、おもわず「おいおい!」と、左本を読み終えて叫んでしまいました。
 それを以下に書きたいと思います。

 

 左本には、読者にわからないことがはっきり書かれていないのです。

 右本を出した出版社「B社」のことです。

 本を書く人間なら、この出版社がどんな会社か、ウワサぐらい聞いたことがあるでしょうし、事実「C」氏は、同じ本の別の項目で言及しているので、わざと書いていないのです。

 B社がトンデモ本の量産にずいぶんと貢献していて、ネタの宝庫で、その内幕だって存分に知っているようです。

 「情けの一つもかけてやれや」と、私はAさんに同情してしまいました。
 ちょっと無慈悲すぎる。


 もちろん、私はハイジという傑作をダシにして、奇妙奇天烈としかいいようのない本を書いて流通させ。読んだ読者を確実に絶句させて怒らせたA氏を評価しません。できるわけがない。

 読んだ直後は「このおっさんナニやってんのか、わかっとんかー!」と思った。(今日は言葉がアレテマス)

 だから、ハイジファンとして、怒りを静かにこめて、はっきり警告したのです。

 でも、このAさんは、プロにいいようにオモチャにされたシロウトなのです。

 ですからかなり同情もしました。
 これ以上は、右本には触れず、そっとしておくつもりでした。
 あの警告は、作者Aさん以上に、B社と、その編集者にむけられたものなのです。

 右本がなぜ書かれたのか。その背景は読めばはっきりわかります。
 このオジサンはガンを患って、苦しい治療をして生還したのである。
 生きるか死ぬかの瀬戸際で、絶望の淵までいきながら、強い精神力で希望を持とうと努力してやりとげたのです。(拍手)


 その感謝をどうにかして伝えたい。
「ひょっとして小説家としてユーメーになれるかも♪」といった自己顕示欲もありましょうが、同じ病気で苦しむ人を助けたいという「現実世界」「社会」への恩返しの意味があるはずです。
 ハイジをネタに、カネもうけをたくらむポルノ作家とはわけが違います。


 しかも本を出したのは「B社」です。
 おそらく目の玉がとびでるほどの資金が必要だったはずです。

 私も自費出版を考えたことがあるので、いろいろ調べていくうちにビックリしたのがこの出版社で、しかもよりによってこの出版社の編集部に知人(正確にいうなら、編集部にかかわりのある人の親戚が私の知人・・・これで特定はできまい) がいることがわかって、それなりに内情も聞いたことがあります。

 だから「こりゃひどいわ。ボッタクリの詐欺同然だ。だれか止めてやれよ。」と私は言いたい。

 カネのために、普通ならこの世にでるはずのない水準の本を、作家が文章に命をかけて出した本と一緒に一般書店の店頭に並べる出版社なのです。


 Aさんは、出版にかかる費用をすべて負担したのです。作者はとことんシロウトです。
 すこしでも慣れていれば、同人誌で右本を出した方がはるかに安く出せるのがわかるはずです。
 うまいこといわれて、ついその気になって、体面とカネを失った被害者といってもいいと思います。

 だから、この本を出した出版社は、認知症の老人をだまして先物取引させたり、保険金やら不要なリホーム費用をかすめとる海千山千の悪質業者と似たようなモノだし、その惨状を業界の内幕にふれずに、面白おかしくとりあげる左本作者は、被害者をさらに笑いものにして二重に痛めつけているのと同じなのだ。


 ハイジをクイモノにしたAさんは責任をとるべきである。
 そして恥を天下にさらして責任をとりました。

 そして、素人の作者が責任をとるなら、その人を食い物にしたプロのB社と、そのことを隠したままAさんだけを笑いものにしたC氏とD社も責任をとるべきなのである。

 まったく恐ろしい話である。


 私だって有名作品・ハイジのシリウマにのっかって勝手にサイトを作ってるし、原作者のスピリだってゲーテのパクリをやってるから、みんな同類だと思えばそうである。


 だれだって金は欲しい。(私もA氏ももうけてなんかいない。大赤字だ(大滝汗))

 しかし、

 金のためなら

「なんでもしていい」

「どんな本出してもいい」

「どんな文章書いて、反論の手段のない弱者をタコなぐりにしてもいい」

 と思ったら大間違いだ!


 私は、その知人の親戚のB社の編集関係者と酒を飲んだことがあります。
 その人は、自分たちの会社が出版業界でどんな冷たい目で見られて、まじめに作って出した本までまともに評価してくれないか、寂しく話してくれました。

 それはしごく当然でしょう。
 B社は長い歴史をもつ日本の本のすべての著者たちと出版業界の誇りを傷つけているのです。

 だから、えらそうなことはいわない人でした。
 これは法律にふれなくても恥ずかしい仕事です。
 でも、生活のためにはやらねばならないことだってあります。
 この本の売れない時代の、不安定な小出版社の社員の立場は弱いのです。

 ですから沈黙するのです。
 それはそれで正しいと私は思います。
 会社のCEO以外の社員は、ある意味、やっぱり被害者でもあるのです。

 私もこの人の事情がある程度わかっているので、傷ついている人をそっとしておこうと、この手の話題はさけましたが、何かのふしに私の態度に冷ややかなものを感じたのでしょうか、私が何も言わないのに、自分から自分の立場を自嘲しました。

 それは実質的な懺悔であり、自己の良心の救いを求めているあかしなのでしょう。
 ますます私は何も言えなくなりました。


 それからもちろん善意と金さえあればなんでもできる・・というのも大間違いです。

 何もしらずに読んだファンを「なんじゃこりゃー!」と悶絶させて命の危険にさらさせるのは・・よくないよ。ねぇ、Aさん。もうやらないで。


 ということで、もしもこの駄文を読んで、冒頭の左右の2冊に興味が出た人は、正規の代金をはらわないように古本を探していただきたいと思うのです。
 どうかよろしくお願いいたします。


 お天道様に笑われないように、ハイジみたいに冷たい水で顔をごしごし洗って、
 今日も牧場へ行きましょう! 
(高畑ハイジ第3話より)

tshp 2005/5/27