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紹介したい資料(一部未収集のものがあります)

題名 アルプスの少女 世界名作物語 ; 11


訳 : 堀寿子編 
出版社 : 黎明社 233頁 発行日:1951/08/05昭和26 価格: 100円

説明 (参考画像)
渡辺郁子絵  
堀寿子もこれ以降、数回ハイジを紹介しており、コルネリも手がけている。
「解説」222-223頁所収


題名 アルプスの少女 世界名作全集 ; 23


訳 : 吉田絃二郎
出版社 : 講談社 358頁 発行日:1952/02/10 昭和27  価格: 200円

説明 (参考画像)
蕗谷虹児絵 図版有  「解説・原作者と作品について」那須辰造352-358頁所収

内容は1949年版と同じだが、全集に収録され、箱付で装丁も堅牢なハードカバーになっている。
全集は全150巻。


題名 アルプスの少女ハイジ 角川文庫


訳 : 関泰祐・阿部賀隆
出版社 : 角川書店 角川文庫  280頁 改版後300頁 発行日:1952/06/15 価格:100円 (臨時定価)

説明 (参考画像)
抄訳。 かなり普及した版で、これでハイジに接した方は非常に多い。
表紙の写真は旧漢字から新漢字に改めた改版後より使用。
1965年西ドイツ・オーストリア合作の劇場用最初のカラー実写映画の写真。
(人物と背景はそれぞれ別画面から合成されている)
挿し絵の作者はパウル・ハイ(表記なし)

2006年に改版されて再々出版された。
挿絵は除かれたがイギリス制作の新作「ハイジ」実写映画の写真つきのタイアップ帯がついている。

1952/06/15 初版 臨時定價100円 1975/01/?? 改版?刷
1958/12/20 10版 100円(所蔵) 1978/02/?? 改版17刷 
1960 14版 赤帯 1978/10/?? 改版18刷300円 
1968/08/30  19版(以後改版) 1979/07/30 改版20刷300円(所蔵)
1971/01/30 改版5版160円(所蔵)  
1974/01/?? 改版9刷220円 2006/07/25 改版初版 476円(所蔵)

題名 ハイジ 上 岩波少年文庫40


訳 : 竹山道雄(1903/7/17 - 1984/6/15)
出版社 : 岩波書店  308頁 発行日:1952/09/15 価格:

説明 (参考画像)
レオナルト・ヴァイスガルト絵1946年。 訳者は「ビルマの竪琴」の作者として有名。
1986年29刷より改版(定価は33刷で570円) 小学上級以上対象。
「ハイジ」が初めてドイツ語原文から全文翻訳された。原文を尊重した意義ある訳。もっとも普及しているハイジの翻訳の一つだが、絶版で過去の訳となってしまった。 現在、この文庫に収録されているハイジは別の訳者の翻訳である。
1950年に刊行開始されたこの文庫は、古典だけではなく現代作品も数多く紹介し、停滞していた当時の児童文学出版の転機になる。
また、同時期に、子供向けの「名作全集」の企画が、各社で数多く開始されて、活況は七〇年代まで続く。
(山の手は文庫、下町は全集。といった色分けがあったようだが、どちらも成功している)

また、この訳がアニメ・高畑ハイジの定本の一つになった。セリフが一部ほぼ同じであったり、この本のあとがきの特徴的語句が、企画書の紹介文に流用されている。


上巻 下巻
1952/09/15昭27 初版 130円(所蔵) 1953/07/15昭28 初版 130円(所蔵) 幾何学模様のソフトカバーに透明ビニールカバー
1955/08/30昭30 3刷 160円 1955/12/10昭30 2刷 160円
1962/02/??昭37 9刷   1956-65 昭和30年代は、ハードカバーで臙脂色の幾何学模様
1968/07/??昭43 12刷 1968/07/??昭43 10刷 1966-75 昭和40年代は、ハードカバーでベージュ色 箱入
1972/??/??昭47 16刷 1973/??/?? 昭48 14刷 ハードカバー、箱付
1974/05/30昭49 18刷 500円(所蔵) 1974/05/30昭49 15刷 500円(所蔵)  
197?/??/?? 1981/05/25昭56 1刷(所蔵) 岩波版ほるぷ名作文庫3 岩波版のハードカバーそのままで別会社より発売された
1986/11/13昭61 29刷改版 1986/11/13昭61 26刷改版 昭和60年代以降は、ソフトカバーで、新装版
現在のものとほぼ同じ
1989/07/15平01 33刷 570円(所蔵) 1989/04/05平01 29刷 570円(所蔵)  
1998/04/08平10 44刷 640円 1998/05/25平10 40刷 640円  

題名 アルプスの少女 児童文庫 第2巻第3号


訳 : (訳者名なし かなりの自由な簡略訳)
出版社 : カバヤ児童文化研究所 100頁 発行日:1952/11/09 価格:120

説明 (参考画像) カバヤ文庫について
「はしがき」今西錦司 (当時ヒマラヤ・マナスル遠征直前とのこと) 3頁に所収

巻末に「カバヤ豆じてん 火事の原因はなんでしょう」「町から村から」(文庫読者のお便りコーナー)あり

カバヤ文庫は144冊シリーズ


題名 アルプスの山の少女  世界少年少女文学全集. 17(ドイツ編 4)


訳 : 植田敏郎
出版社 : 創元社  400頁 発行日:1953/11/30 価格: 380円

説明 (参考画像)
図版 朝倉摂絵 ハイジ7-354・ひつじ飼いの少年モニー355-392・解説393-400頁収録

ハイジの本としては、
はじめての堅牢な大型の本
ハイジの代表的紹介者・植田敏郎訳の最初と思われる。
「ひつじ飼い」というところは明らかな誤訳だが、スピリの短編代表作「モニ」の日本最初の翻訳と訳者が紹介している。
(正確にはモニの初紹介は1946年のスイス童話集1に収録されている遠藤正子訳である。)

河出書房で1962/05/10に再版されたものと同じ。河出書房の版は、活字の版形そのものを流用しているのは出版社の経営難が反映されている?。


題名 アルプスの少女 学級文庫 ; 2・3年生


訳 : 中村一雄文
出版社 : 日本書房   199頁  発行日:1954/01/20 価格: 150円 地方155円

説明 (参考画像)
石垣好晴絵 1956/12/10に再版されたものと同じ。画像は再版より流用。(同一デザイン)


題名 アルプスの少女 保育社の名作絵文庫 ; 6


訳 : 保育社編集部編
出版社 : 保育社  207頁 発行日:1954/01/01昭和29  価格: 130円

説明 (参考画像)


題名 アルプスの少女 幼年世界名作全集 ; 15


訳 : 酒井朝彦
出版社 : あかね書房  207頁 発行日:1955/09/30 価格: 180円

説明 (参考画像)
いわさきちひろ絵 すでにいわさきちひろの画風か確立している。
物語は大きく改変され、原作にないシーンもある。


題名  アルプスの少女物語 名作物語文庫 ; 35
 
訳 : 堀寿子
出版社 : 講談社  240頁  発行日:1955/(日付不明) 価格: 100円

説明 (参考画像)
日向房子絵  「名作の入門書」羽仁節子1頁 


題名 アルプスの山の少女 新潮文庫


訳 : 植田敏郎訳
出版社 : 新潮社  355頁 発行日:1956/03/05 価格:130(1967 第10刷)

説明 (参考画像)
価格は1967/2十刷のもの 訳者はドイツ文学者として有名。 10回近くさまざまな訳でハイジを紹介している


題名 アルプスの少女  若草文庫 28
 
訳 : 国松孝二,城山良彦
出版社 : 三笠書房  282頁  発行日:1956/07/15 価格: 250円

説明 (参考画像)
現在も偕成社から出版され、ハイジの代表的翻訳として現役の「国松孝二、鈴木武樹訳」の参照元となったと思われる。
偕成社文庫のあとがきには、「みすず書房」から出版されたとされるが、みすず書房版は未確認。

若草文庫の名前のとおり、「若草物語(大久保康雄訳)」シリーズ、「赤毛のアン(村岡花子訳)」シリーズが中心の少女向け小説文庫。


題名 アルプスの少女 世界名作文庫


訳 : 水島あやめ
出版社 : 偕成社  ?頁  発行日:1956昭和31 
価格:160円地方165円

説明  (参考画像)

詳細未確認 1952年版の再版の可能性高い。
これ以後、水島あやめ訳は存在しないようである。


題名 アルプスの少女  学級文庫33


訳 : 中村一雄文
出版社 : 日本書房   199
頁 発行日 :1956/12/10昭和31  価格:150円地方155円

説明 
石垣好晴絵 小学校2・3年生用 1954年版の再版と思われる。 

「先生と父兄の皆さまへ 著者」3-4頁所収 「★児童憲章第九条「すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、わるい環境から守られる。」が文末にかかげられている。

この学級文庫シリーズは全500巻
村岡花子・大木惇夫・酒井朝彦・西田虎一監編集 「小学生の学年別課外読本として最適書とある。」


題名 アルプスの山の娘  世界の名作 ; 2


訳 : 野上弥生子
出版社 : 筑摩書房   328頁 発行日 :1956/04/10昭和31  価格:190円

説明  (参考画像)
杉全直絵 図版有 「読者のために」326-328頁所収 これまででもっとも分量多い、興味深いあとがきである。
単独で出版された野上訳ハイヂはこれが最後。省略がなく、新かなづかいに修正されている。岩波版は最後まで旧かなづかいのままなので、これが最も手の入れられた野上訳決定版といえるが、すでに直接全訳が主流となっていた。

岩波文庫版ハイヂは1991年まで。コルネリは1959年で角川文庫版があり、全集でハイジが1987年に出版されているものの、以後ハイジの代表訳の地位はなくなったと考えられる。



総 評

 昭和20年代終わりに、ついにドイツ語原文から完訳がでました。
 しかも訳者が「ビルマの竪琴」の作者です。野上訳に続いて、これが長くハイジの代表訳となります。

 そのほかにも角川文庫版訳、植田新潮文庫版訳、現在の偕成社文庫訳など、正確な翻訳がほぼ出揃い、どれも長く版を重ねていきます。人気の高さがうかがえます。

 そして簡単なソフトカバーがせいぜいだった本の質が格段によくなり、大型の本も登場します。

 さらに昭和30年代に入り、終戦から10年近くの時が流れたのを一番よく示すのが「学級文庫」でしょう。

 いまではあまり見かけないようですが、昭和40-50年代の私の小学校時代では教室の隅に本棚があって古ぼけた本が並んでいて、だれでも読めるようになってました。

 学校の図書館とは別に、各教室にそんな本棚がありました。
 1956年の学級文庫の巻末に全500巻(冊数では166冊(^ ^;))の広告が載っており、前文は「先生と父兄」にあてられています。

 購買ターゲットが父兄であり、教室の子供たちの保護者たちがお金を出し合って、子供たちのための環境を整えようとしたわけです。

 たかが一教室におかれた本が、自国の子供たちのために自国で翻訳して印刷され、カラーの表紙と、モノクロながら多くの挿絵のついた166冊ものシリーズであったという学級文庫。

 それを買える経済力があり、また買おうとする共通意欲があるからこそ、市場として成立したのです。

 ここのリストは、まさに「戦後復興ここに完成せり」を、実感させるものです。

 まだまだ物心両面で影響は深く、心の傷跡にふれれば血がふきだすほど生々しい感覚をともなった時代でありましょう。
 戦勝国で繁栄を謳歌するアメリカに比べれば、比較にならない状態であったでしょうが、「学級文庫」の存在は、日本が立派に立ち直ったことのささやかな証拠です。

 そして、この166冊のラインナップは、当時の日本人が、何を子供たちに望み、与えようとしていたかを示す「自画像」ではないでしょうか?
 この自画像は、けっして醜くはなく、むしろ「美しいもの」としてとらえたいです。

 終わりにあげておきます。


2005/6/26