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 高畑ハイジ初期設定


 いくつか資料がありますので、紹介したいと思います。

 上記は、高畑ハイジがどんな作品であるか、宣伝用としてマスコミ・関係者など多方面に配布された広報用パンフレットの表紙です。

 これは放送前の資料で、その後いろいろ状況が変化して、いまでは公式に見かけることはありません。

 見てのとおりハイジは三つあみの髪をしており、クツをはいていますし、服装の色なども放送時と違います。
 黒のベストも可愛いですよね(^ ^)

 また小鳥は青の小鳥のピッチーではないです。中のキャラクター紹介では「メンデル」となっていて、特定のハイジのペット・常連キャラクターとして扱われています。
 
 中には他にもイラストが掲載されていて、初期のキャラクター商品のイラストはここからとられたように見えました。


 現在、高畑ハイジの紹介をするときは、作品への視聴者の感想と過去の反響とで充分でしょう。

 しかしこのパンフレットは、この作品が生まれた背景を知るための参考になります。



 バンフレットの最後にかかげられた「番組制作理念」

上品な良質番組として

 子供たちの素朴な疑問に答え、限りない夢や冒険心を青ててくれるのは文化遺産とも言うべき数々の名作古典です。

 それらは、生きることの尊さや愛することの美しさを教えてくれます。

 知識や情操を養う要素がたくさん含まれ、いわば心の糧です。

 それらの中でもこの「ハイジ」は。自然の美しさと人間性の尊さを全面的に愛し、神を信じた作者ヨハンナ・スピリの精神が隅々まで脈打った、ほんとうにすぐれたメルヘンであろうかと思います。

 真の人間の幸せとは何か、この普遍的なテーマを、いきいきとした話しぶり、微妙な観察、感じのいい滑稽味等、もっとも判り易い話術で、誰しも共感できる説得力で迫り、時代を超えて読む人に強い感動を呼び起さないではおかないものがあります。

 おそらく、自然を離れては生きられない人間の姿を、これほど端的な形でとらえた作品は他に例を見ないでありましょう。

 この一事だけでも現代人にはたいへんな魅力と言えます。

 自然と人間性の回復が大きく叫ばれている今日、大人たちが、明日に生きる子供たちに自信をもって贈ることのできる、十分に吟味された評価された数少い作品の一つであります。

(注)
「カルピスまんが劇場」の次回作はこれをおいてありません。

 文学書としての原作は、小学校四年生から中学二年生の間でもっとも読まれているという調査結果がありますが、"ソーントン・バージエス"の「アニマル・ストーリィ」(同じく小学校四年生より上に向け)という物語の世界を、「ロツキーチャック」という映像の世界に翻訳したのと同じように、色彩感あふれるカラー・アニメーシヨンと明るく楽しい音楽で表現して、「カルピスまんが劇場」の視聴対象である幼児から低学年向けに、そして番組の支持者である母親たち向けにわかり易く、ていねいに作り直して豊かな作品世界としておくりとどけます。

 こんにち、ヨハンナ・スピリの健気で、あたたかい思いやりの精神は、子弟の教育面でのもっとも重要な間題提起でもあります。

 必ず子供から大人までを感動の渦にまきこんで、茶の間の話題をさらうに違いありません。


 (注)以降は、スポンサー企画書にのみある文章で、このマーチャンダイズパンフレットには含まれていません。
 ここで切ると、文章は原作の賞賛のみで、アニメ・高畑ハイジがどのような作品であるかわかりにくいです。


 実際の番組が、この理念のとおり実現されたことは、大変素晴らしいことです。
 そして日本の子供向け文化の分水嶺の一つとして、長く記憶されることになりましょう。


パンフレット結語



 「アルプスの少女ハイジ」は,スイスの女流文学者ヨハンナ・スピリの書いた"子供たちと子供を愛する人々のための物語"の中の一編です。

 「ハイジ」の原題で1880年に出版され,以来版を重ねて広く世界中の少年少女に愛読されております。

 この作品が語っていることは一口にいって,きよらかな自然と,その中に生きている入々の,のびのびした生活です。

 自然はいきいきとして正しく,人間はその中にとけこんでこそ,純粋な心をもつことができるという,いわば自然をたたえる歌です。

 あかるくて健康で詩的な物語です。


 まさにそのとおり。
 ちなみに、上記の「製作理念」「結語」の茶色文字部分は、岩波少年文庫竹山道雄訳の「あとがき」の抜書きとまったく同じです。
 高畑ハイジの製作にどの訳が参照されたか、傍証の一つでしょう。


 「おまけ」として、資料を探していて、「あっ」とおどろいた「晴れ着姿」も紹介します。

 1974年の雑誌の表紙と、その一部分の拡大と、付録の塗り絵(左右逆)です。
 イミテーション・バッチもの!?・・・ではありません。正式な「高畑ハイジ」のイラストなんです。

 初期の設定で、おそらくおんじが回心して教会に行くときのハイジの衣装なのでしょう。
 まだ線が多く、アニメとして動かすための設定としてはこなれていません。
 一点もののイラストでしょう。
 結局は、シーンごと使用されませんでしたが、まだいろいろありそうです。(^-^)
 ハイジ展で出てくるかな? と思ったのですが、なかったので側面支援です。

 この雑誌の1974年の前後1年ほどを上野の国際児童図書館で閲覧させてもらいました。


 表紙のハイジのイラストは4月号(編集1月、発売2月おわり)のものです。
 新番組なのですが、地味に思われたのでしょうか、一番一般受けしそうなイラストを選んでおきながら(推定)、キャラクター中最小の扱いです。
 この時点では人気がでるかどうか未知数だったのでしょう。つい拡大してしまいたくなりました。

 しかし、その後月をおってイラストの面積は大きくなっていき、人気が上昇していくのがうかがえました。
 その下の表紙は一年後の1975年1月号の表紙です。
 ハイジ放送終了を告げる号で、このイラストでハイジの面積は最大で、他のキャラクターを圧迫してます。

 そして以後の月からはフランダースの犬のイラストが掲載されますが、ハイジの人気を引き継いで、ハイジ開始のときよりも、あつかいが良くなっているようです。

2005/6/10

続く