TRONSHOW2003,TEPS2003 雑記

  2002.12.12(木)〜14(土)の三日間、TRONSHOW2003 及び TEPS2003 がラフォーレ・ミュージアム六本木にて行われました。私は金・土の二日間を見に行きました。今年は、金曜日のTRONSHOW後の BTRON Club の例会にも参加しました。(昨年は残念ながら出席できなかったので)会場の模様はパーソナルメディアさんのこちらをどうぞ。(2003.1.5記)




  2日目の13(金)15:00ちょい前に会場のラフォーレに到着。1年前の同じ場所に来ているのに、駅から行くのに少々迷い、道ゆく人に場所を聞きながらなんとか目的地に。受付にてTRONSHOW と TEPS(あらかじめ予約が必要)の登録を済ませて中へ。ちょうど、「坂村健/T-Engine開発各社によるT-Engineパネルセッション」が行われるところでした。

■坂村健/T-Engine開発各社によるT-Engineパネルセッション(13(金)午後)

  開始10分程前はセッション会場にほとんど人がいなかったのでやや安心して各社の展示を見てましたが、これが大誤算。始まる直前には満員御礼で空席が無く立見する人がいる有り様。仕方がないので、コソコソと会場の後ろ側で立見。
  相変わらずエネルギッシュな坂村先生の攻勢(?)にメーカーの方もタジタジでしたが、負けていなかったのがピンチェンジさん(社長さん?)。「一家に5台ピンチェンジを目指しています」と威勢が良く、今後が期待できそう。T-Engine ベースの教育用端末(T-Engine Appliances, TEAシリーズと呼んでいるとのこと)の実物も見ることが出来ました。ようやく、必要な機能(メールとブラウザ)に特化した安価な端末というものが現実の物になりそうな気がします。現在の複雑で高価なパソコンではなく、合理的な価格で堅牢で使い勝手の良い機械が出来るのではないでしょうか。(余計な eXPeriance と eXPensive では無しに。期待しましょう。

■T-Engineフォーラム、使ってみようT-Engine、遊んでみようT-Engine(14(土)午前)

  パーソナルメディア社のT-Engine開発キットによる実際の使用例を交えたデモと説明。正直、盛り上がりに欠けていたが、これは実際にT-Engineで何かやってみようと思っている人向けの技術的な話が多かったからか。もっと安くなったら購入していろいろやってみたいとは思う。昔、TK-80とか高くて買えなかったけど、そういう昔の「電子工作」というのが T-Engine で出来そうで、これは面白そう。

パーソナルメディアの展示
  メインはやはり、T-Engene。「超漢字4」についてはそう目新しいものはありませんでしたが、T-Engene上で超漢字4が軽快に動いていました。

・高精細版超漢字システム、QUXGA-Wide 3840×2400
  びっくりしたのは高精細版超漢字システムのデモ。QUXGA-Wide 3840×2400 の高解像度を目の当たりにして暫し呆然。「なんちゅう広さや〜」これに比べたら、1024×768 のナント狭いことよ。しかし、本当に「紙と同等」かそれを越えようとするのであれば、これくらいの解像度は必要か。近い将来、博物館等で死蔵されている貴重な資料がどんどんデジタル・アーカイヴ化されて、こういう装置で手軽に見ることが出来るでしょうね。博物館等に所蔵(死蔵)されている貴重な書物や巻き物等は来場者がそれを手にとって見ることが出来ませんが、これをデジタルアーカイブ化すれば誰でも必要な部分を自分で操作して見ることが出来るのですから。それにしても、これだけの広い画面を実際に使えたら気持ちがいいでしょうね。超漢字は沢山のウィンドウを開くので 1024×768 の解像度でも狭く感じてしまいますが、これだけ広ければそれは問題にはなりませんね。

・超漢字の最近の動向(機能改善について)
  つい、担当の方に色々と質問(苦情も多少・・)してしました。最近、パーソナルメディアさんから「超漢字4」関係に関してあまり情報(特に機能改善について)が流れてこないのでちょっと心配していましたが、今回の展示で「超漢字4」の今後の機能改善等について色々デモを行っていたので、少々安心しました。「ファイル変換のMS変換時のファイル名制限の緩和」「バックアップ小物のバックアップ容量の制限緩和」「NTFSへの対応」「Mozillaのバージョンアップ」等々。しかし残念ながら、「実身数の制限撤廃」とか「実身名の制限緩和」などシステムの根本にかかわる改善はやはり難しいとのことで、またまた当分見送り。それにしても、こういう改善の取り組みについてはホームページ上で公開してユーザーに知らせて欲しいと思いますが如何でしょうか?なんにも情報が無いのは、ちょっと不安です。某会社のように、実体がないのに派手な広告をぶち上げる(Vapor Wareと言うそうですが)のはこまりものですが、沈黙は必ずしも金ではありませんから、少しは(誇大気味な)宣伝も必要では・・・?

・超漢字版 Mozillaについて
  現在超漢字4にオマケでくっついている超漢字版 Mozilla 0.9.3 に替わる Mozilla 1.0 の移植を進めているとのこと。Mozilla は、基本ブラウザでは開けないページを見るときや買い物(日米amazon, 米ebay, 米paypal)などに重宝しています。がしかしこのMozillaはあくまで「試用と評価用」のものであり、「動作保証」無しで「使えない機能」も多く、それに加えて「不安定」なので頭が痛い。とにかく(基本ブラウザに比べて)動作が遅いし、まるで某OSの如く「プロセッサ例外」などという腹立たしいメッセージまで出て重要なページを見ている最中に終了してしまう。おまけにこの Mozilla を使っているとOSの動作も何となく不安定(Shift+Break で強制終了するか、さもなくば手動電源断)になる。他のアプリケーションとの連携も出来ないし・・・。ということで、こちらにも期待したいところ。

・その他
  展示では、超漢字4プリインストール済みのノートパソコン(確かIBM)の限定販売、等のソフトウェア及び書籍も販売されていました。「カクテルブック」とか、場に全然そぐわない面白い本もちらほらと・・・。私は、広辞苑と新漢語辞典、そして「システムの科学」という書籍を購入しました。

ピンチェンジ

  ピンチェンジさんは色々と面白い物を出展していました。まずは、手のひらに乗るサイズの「ヴァーチャル・キーボード」。机上にレーザー光でキーボードを描いて、その描かれた場所を指でタッチすると赤外線センサーで位置を検知して文字入力が出来るというもの。手書き入力もO.K.とのこと。デモでは qwerty配置のキーボードだったけど、これなら TRON キーボードも(それ以外のキーボードも)機能的に可能なので、安価に実現できたら面白い。1万円程度で実現できたら買いますね。
  この他、T-Engine ベースの教育用端末や、PLUPLUというヘンテコな名前のBookShelfタイプのCD再生機(スピーカーを内蔵していてこれ1台でステレオ再生可能というもの。本当に本棚に収納できそうなもの)・呼べば答える縫いぐるみ・情報トースター(名前はうろ覚え、カードが充電され情報も入れられた時点で、トーストされたパンのようにカードが跳ねる・・・という代物)等など、見ていて楽しい物が多かった。

オークス電子

  16ビット・32ビットの昔懐かしの(あくまで私の個人的なイメージです)ワンボードマイコン。そして、そのボード類による工作(センサーで障害物を検知したりガイドラインを検知しながら自走する車)。イーサネット通信ボードキット(こちらは、アンカーシステムズの製品)などもあり、本当に「電子工作」というか「マイコン」というイメージを再認識させてくれました。仕様は全て公開され開発環境も整備され結構安く入手できるので(5千円〜2万円程度)これなら遊びでやってみても良いかな?と思います。なんにせよ、今の「パソコン」で失われた「コンピューター」に触れて見るには手ごろな物でしょう。

■全体の印象

  今回のTRONSHOWの展示を一通り見て、各社の T-Engine に対する並々ならぬ意欲と期待を感じました。今までの「いかにもコンピューターでございます」という、やたらと機能を詰め込んだおかげでかえって使いにくくなってしまった現在の「パソコン」に代表される「コンピューター」はやがて廃れていき、これからは必要最小限の機能に特化した「使いやすい道具」としての「専用機器」とそれらを有機的に結合する「組込みマイクロプロセッサ」が名実ともに主流になっていくでしょう。
  今のパソコンは、「ギガヘルツのマイクロプロセッサ」「メガバイトのメモリ」「ギガバイトのストレージ」というすごい物量の機械にこれまたとんでもなく肥大化したOSとアプリケーションを載せて、「ブロードバンド」という錦の旗のもとにさまざまな物を取り込もうとしていますが、個人的にはついていけないな・・・と感じています。
  「電子メール」「ホームページの閲覧」「文書作成」「図の作成」「絵と写真の取り込みと簡単な加工」くらいの機能であればこんな大仰な機械は不要で、その分「消費電力が少なく」「取り扱いが容易」で「壊れにくく」「安価な」機械(端末)で実現出来るはずでは?大抵の人にはこれだけの機能があれば必要十分でしょう。にもかかわらず、現在のパソコンは相も変わらず高機能化一辺倒です。
  私は、音楽はステレオで聞きます。パソコンで聴くことなどありません。パソコンで再生した音楽に感動なぞ出来ません。また、最近のパソコンはDVD等のビデオディスクが再生できるようですが、お世辞にもその画質・音質は良くなく、2万円〜3万円で買えるDVD再生機には到底及びません。パソコンのちゃちなディスプレイで見る映画ではとても感動できませんね。「ブロードバンド」したけりゃ、現在の「ブロードキャスト」である、ラジオ・テレビ・ケーブルテレビ・衛星放送があります。こちらは昔から「ブロードバンド」です。インターネットでこれらと同等の品質を実現しようとしたらとんでもない費用が必要でしょう。なんでもかんでも「インターネット」と「パソコン」では能が無さ過ぎるというものです。(ちなみに、パソコンやインターネットそのものを否定しているわけではありませんので念のため、要は「適材適所」でいきましょうということ)
  既存のインフラをうまく取り込み余計な設備投資をせずに有機的にありとあらゆる物がネットワークとしてつながる、所謂 "MTRON:Macro-TRON" 「どこでもコンピューター:Computing Everywhere" "超機能分散システム:HFDS:Highly Functional Distributed System" "Ubiquitous Computing"とはそうあるべきものでしょう。これからは、そういう方向で正常に進化していって欲しいものです。ついでに「超漢字」もね。





  - TRON Electric Prosthetics Symposium:TRON 電子補綴技術 シンポジウム
「ユビキタス・コンピューティングとイネーブルウェア」

  昨年のTEPS2002が非常に興味深い内容だったので今年も参加しました。期待通りの充実した内容でした。ちなみに、TEPSとはTRON Electric Prosthetics Symposium の略で、TRON 電子補綴技術に関するシンポジウムのことです。TRON Project は 1987年から Enableware (Disable persons -障害で何か出来なくなっている人々- を 電子補綴技術によって Enable -できるようにする- その障害のハードルをなくす)に熱心に取り組んでおり、コンピューター関係のシンポジウムで障害者を対象にしているのはここぐらいではないでしょうか。テレビ携帯電話の出現でこれが Enableware としての大いに期待されており、今回もその話がメインの一つとなった。

■坂村先生の講演
  「ユビキタス・コンピューティング=どこでもコンピューターの時代
    -我々は何を考えなければならないのか」

  さて、13:30からの坂村先生の講演は相変わらずボルテージが高い。内容自体は昨年度の講演とさして大きな違いは無く、「携帯電話が障害者のコミュニケーションの重要な機器になりつつある」「汎用機から専用機へ」「障害者を焦点とした機能はオプションではなく標準機能として付けるべき」「マイクロチップを組み込む技術的可能性は克服され、今後は実装の方法を検討すべき段階だ」に更に付け加えて「新しい技術さえあれば問題が解決されるわけではない」ということが強調された。つまり、新しい技術・製品も「利用者である障害者の視点」が抜けていてはなんにもならず、却って障害者に対する「バリア」になってしまうという危険性があるということ。社会福祉法人日本点字図書館の長谷川評議員のお話は正にそれであった。


■テレサポートにおける1年余の実証試験と今後の展望
  長谷川貞夫(社会福祉法人日本点字図書館 評議員)

  カメラ付きの携帯電話(テレビ携帯電話)を使ったテレ・サポート(tele-support,電話tele-phone と テレビtele-vision に合わせた名称とのこと)についての講演。前回のTEPS2002にてテレサポート(昨年は「テレガイド」と呼んでいた」)の体験を発表されていたが、今年はそれを大勢の人に実際に体験してもらうお話。例えば、街中の自動販売機にて飲み物を購入する例をあげると、購入する人は支援者(サポーター)に携帯電話から電話をかけて、そのカメラで自販機を写してサポーターに画像を見てもらいながら、コインの投入口や自分の飲みたい物の商品のスイッチ位置を確認してもらう・・・といった具合。この実証と支援の為のテレサポートNET(テレビ携帯電話視覚障害者支援NET)を組織されているので、かなりの力の入れようである。まだまだテレビ携帯電話の通信費用が高い等課題は多いが、今後の視覚障害者支援の可能性としてはかなり実用性が高いもののようだ。


■視覚障害教育の現場から〜教育とマンマシンインターフェース
  三崎吉綱氏(都立八王子盲学校高等部 教諭)
  視覚障害の現場から "My Viewpoint on teaching Visually Impaired Students"

  JR東日本のタッチパネル式切符販売機をめぐる経緯について。この件は結果として両者の話し合いと歩み寄り(特にJR東日本側)により、視覚障害者利用も考慮した「新型音声ガイド+テンキー付きタッチパネル販売機」が開発されたことにより解決されたが、色々と考えさせられることが多い内容だった。JR東日本側は当初「タッチパネル式」を大量導入する計画だったが、障害者との対話により、今後の販売機は全て「新型音声ガイド+テンキー付きタッチパネル販売機」にするという画期的な方針転換を行った。この大きな方針転換の決め手となったのは、「利用者である障害者による実証試験により最終判断を行った」ことである。もちろん紆余曲折があり、その過程において「各駅に1台のみ障害者用販売機を設置する」という案もあったが、実証試験により駄目であることが判明。(その1台にたどり着くだけでも大変ということ)健常者であっても、例えばラッシュ時の新宿駅において自販機にたどり着くことさえ大変なことを考えれば当然とも言える。

  余談ではあるが、JR渋谷駅周辺でトイレにたどり着くのに往生した。その時は朝早くて百貨店等の店舗もまだ閉まっており、公衆トイレを使うしかなかった・・・がしかし、駅のトイレは改札の内側しかないようで、仕方なく地下街にもぐって見つけた「トイレはこちら」という表示に従って数百メートルを歩いて行ったら結局「トイレはこの改札を通って・・・」というほとんど漫才のオチのような表示を突きつけられた・・・馬鹿野郎!その後、「どうせ銀座線に乗る予定だからそのホームで・・・」と思って銀座線乗り場へ急いだが、無情にも「銀座線のホームにはトイレはありません」というお知らせが階段にあり(それも掠れて消えかかった表示)、途方にくれた。その後必死の思いで公衆トイレを見つけて何とか事なきを得た。しかしこれ、障害者だったらどうすんの?と思った。私はこれだけのために、少なくとも1キロメートルは歩くはめになった。なんでこんなことになるのだろうか・・・

  重要なことは、

(1)専門家・職人と障害者との共通認識が大切
  機械(コンピューター)に詳しい人と障害者(又は障害者に詳しい人)がお互いに共感し理解しない限り話が進展しないこと。

(2)話し合いの場が必要
  切符自販機のテンキーはある視覚障害者の発言から生まれた。

(3)インターフェースの最終判断は実地検証による試験で
  万の議論よりも、実際に使用すれば良いか悪いかは一目(一聴)瞭然。

(4)すべての機械を障害者対応にしなければ意味がない。
  障害者専用機は高価になるし、実際の使い勝手もすこぶる悪い。

ということ。現在の新型切符販売機でも乗換切符を購入できない(テンキーからは購入できないということ)という不具合はあるものの、今後非接触カード(Suica等)が普及すればそれも問題とならなくなるかもしれない。しかし、今度はそのカードを利用するためのマンマシンインターフェースで同じようなことが問題となるだろうとの話であった。つまり、「新しい技術さえあれば問題が解決されるわけではない」ということである。

■パネルディスカッション

  パネリストとして、坂村先生・長谷川氏・三崎氏とがNTTドコモマルチメディア研究所の中野所長(もしかしたら名前が違っているかもしれません)とJR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所の江上所長が参加され、興味深い話が展開されました。

  長谷川氏からは、「『バリアフリー化』を標榜しているはずの施設や決まり事が逆に『バリアー化』になっているという厳しい指摘がありました。例えば、近ごろはとんとお目にかかることのない"あの"「弐千円札」について。お札は、千円・伍千円・壱万円と5mmずつサイズが大きく作られており、それで目が見えなくても金額が判断出来るそうですが(私は今回初めて知りました)、あの「弐千円札」についてはそのような事情がほとんど無視されたそうです。千円・伍千円の間の大きさを取ると、その2種類のお札との大きさの差は2.5mmになりますが、それではサイズの差が判断できないそうです。長谷川氏は「幅の大きさを変えたらどうだ」と提案されたそうですが、結局、千円・伍千円の間の大きさになったとのことです。結局、実用性よりも「先にデザインありき」の典型例になってしまい、弐千円札は消えつつある存在となってしまいました。(ここ1年くらい目にしてませんね、私は)

  それから、駅の「エスカレーター」設置による「バリア化」について。エスカレーターというものは障害者にとってはあまり安全な乗り物ではないようで、エスカレーター付近には障害者を誘導しないよう点字ブロックや点字表示を設置しない指導がなされているそうです。そのようなわけで、階段のエスカレーター化が進んでいるところほど障害者に対する「バリアー化」が進んでいるという皮肉な結果になっているとのこと。一番困るのは東京駅の1番ホーム(だったと記憶していますが)で、そのホームは全部エスカレーターなので視覚障害者は途方にくれるようです。視覚障害者にとっては「階段」の方がまだ「バリアフリー」なのです。

  ちょっと関係ないかもしれませんが、駅の「エスカレーター」は車椅子利用者にも便利とは言えないと思えます。駅従業員の補助が必要ですし、端から見ていても「大丈夫か?」と思えるほど危なく見えます。障害者利用を考えるのであれば、エスカレーターよりはエレベーターの方が良いでしょう。

  色々と考えさせられる事例ではありますが、こういうことは実際に障害者の視点(一番良いのは、企画・開発の過程に実際に利用する障害者を加えること)に立ってやらないと、却って「バリアー化」してしまう危険性が大いにあり、それは残念ながら実例に事欠かないのが現状のようです。なお、この件についてはJRの江上氏は早速メモをとり確認するとのこと。このシンポジウムの対話にりこの指摘事項が改善されれば、それは意義深いことなので今後の経過を見届けたいと思います。

  テレサポートについては、やはり通信料を安くして欲しい(あるいは、制度として障害者(テレサポート)割引があると良い)という要望がありました。NTTドコモの中野氏は「通信事業は設備産業であり、コストダウンは非常に厳しい状況ではあるが、検討したい。」とのこと。JRの江上氏からは流石に紅一点の視点と言うか、テレサポートについて、「カメラに移されたくない人を図らずとも写してしまう状況になった場合、プライバシーの問題もあるし運悪く短気な人に遭遇した場合下手をすると刃傷沙汰になるのでは?」と問題点を指摘された。確かにその通りなので、これは今後の検討課題だろう。

  それにしても印象に残ったのは、「待つことの大切さ」というお話。10年前であれば、このテレサポートのようなことが実現するとは考えられなかったと。最善を尽くして、その上で「待つこと」が大切であると。これは、「超漢字」ユーザーの置かれた立場に似ているかもしれませんね。

  三崎氏は、「障害者を開発の現場に積極的に参加させるべき」であり特に「最終のジャッジは利用者の障害者による実証試験でなければならない」ということを強調。外国では、障害者を一定の割合で雇用しなければならない法律があり、障害者が自分の意見を反映させる場や機会が多いが、日本ではまだまだであると。また、残念なことに障害者自身が社会に対して垣根を作っている傾向があり、これが技術者と障害者との対話を疎外している原因の一つであることも問題だと仰っていました。これについては、坂村先生より「我々技術者はおとなしくかつ良い人(?)が殆どで、一生懸命頑張って良い物を作ろうと努力しており、皆さんを困らせるために物を作っているわけではない。しかし、我々には利用者・障害者が何を望んでおりどのような機能が必要であるかの知見が不足しているので(つまり、わからない。想像することは必要ではあるが、それだけでは駄目)、技術者と障害者との積極的な対話の場(例えばこのTRONSHOWのTEPSのような)を持たなければならないし、障害者からの積極的な発言や参加も期待したい」と、技術者として忌憚のない発言があった。(時折、会場に向かって「NTTドコモ以外の方も発言したいことがあったらどうぞ。技術者として言いたいことはどんどん言ってください」などと呼びかけられて、会場はその都度笑い声に包まれた。NTTドコモの中野氏は苦笑されていたが・・・)JRの江上氏からは「JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所所長のオファーがあったとき、JR側から『生活者・女性・利用者の視点と立場から技術者が気がつかないことなどをどんどん指摘してくれ』とお願いされた。やはり開発技術者と利用者との交流が重要」であるとの話された。


■雑感

  まだまだ克服すべき課題は山ほどありますが、新しい技術がそれを克服する手助けとなればそれはその技術の最も有用な利用のされ方と言えるでしょう。しかし、作る側と使う側がお互いに協力してよく考えて知恵を出し合った上で規格・仕様の策定及び実用化を行わないと、せっかくの良い技術も「作ったは良いが問題は解決しなかった」ということになりかねないわけで、結局は携わる「人」次第ということですね。このTEPSにおいて、障害者・利用者の「立場・視点」の重要さを改めて認識させられました。それはこれからの開発者・技術者にとってより一層重要視される資質・要素であることは間違いないでしょう。


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