BTRON Club 第50回例会
〜2002.12.13(金)ラフォーレ・ミュージアム六本木にて〜

  2001年のTRONSHOW2002は最終日しか見に行けなかったので、残念ながら2日目開催のBTRON Club例会には参加できませんでしたが、今年こそは参加すべく日程を調整して行きました。今回はBTRON Club会員以外でも参加できる「お試し例会」ということで、前回の通常の例会よりも人数は遙かに多く、会場はほぼ満員御礼となった。手持ちの eTRON カードにて入場登録を済ませて会場に入りました。(2003.1.5記、2005.1.18加筆修正)

<項目>
・Wintel PC におけるBTRONと超漢字の限界
・超漢字の最近の動向(機能改善について)
・超漢字の最近の動向(機能改善について)
T-Engineについて
・日本語マイクロスクリプト
ピンチェンジさんのヴァーチャル・キーボード
・Unofficial TAD Guide Book
・例会の後は・・・

<内容>

Wintel PC におけるBTRONと超漢字の限界
  壇上には、坂村会長及び日立製作所・三菱電機・ピンチェンジ各担当の方計4名がパネリストとして登場。
  坂村会長の最初の話はやはり T-Engine。結局、現在の Wintel PC ではこれ以上の根本的な機能強化(「実身数の制限撤廃」とか「実身名の制限緩和」等のシステム根本にかかわる改善)は考えておらず、それは今後発展が期待できるであろう T-Engine 上で実現したいとの方針が明確に示された。(と思う。以前から言われていたことではあるが)確かに、現在のブラックボックスである Wintel PC に無理やり超漢字を搭載する限り、その PC の機能をフルに使用することは出来ないし、機種の差異による挙動の不安定さは絶えることがない。(Windowsより遙かに軽快で安定して使え、ウィルスの事など全く気にしなくて済むとはいえ)これは、 Wintel PC に搭載する Linux もまた然り。
  だから、「急がば廻れ」でオープンなプラットフォームをT-Engine で実現して、その上で BTRON-OS(超漢字)の根本的なシステムの見直しもやりたい・・・とのこと。現在の Wintel PC 上でBTRON-OSを稼働させることに対して余程フラストレーションが溜まっているようだ。それは、利用者側も同じ想いではある。
(超漢字4をWintel PC上で稼働させることに対して、当然のことではあるがWintel PCメーカーのサポートは期待できない。言わ
ば、PCメーカーからすれば予期しないイレギュラーな使い方なのだ。私もそれでかなり苦労した。)
とはいえ、現在のWintel PC上の「超漢字4」の改善も出来得る限る継続して頂かないと困る。こちらは利用を続けており、どんどんデータは蓄積されていくのだから切実である。(美崎さんはついにしびれをきらしたようですが・・・)
  「坂村先生はBTRONを止めたいのではないか?」などの(無責任な)憶測がちらほらネット上で書き込まれているようですが、坂村先生本人は全然その気は無いようで、ことあるごとに「僕はBTRONも文字コードも、これからも続けます。全然諦めるつもりはありません」と言われています。ただ、Wintel PC上でこれ以上理不尽でコンピューター技術者として「面白くない」苦労をするつもりは無いということでしょう。オープン仕様の T-Engine という土俵において、捲土重来(?)ではないけど「急がば廻れ」でハードウェアの条件を整えてから改めて取り組む意向のようだ。なんにせよ、我々「超漢字」ユーザーはまだまだ待つ必要があるようだが、うまくいけばそれは長いことではないかもしれない。

超漢字の最近の動向(機能改善について)
  「超漢字4」の今後の機能改善等について紹介があり、少々安心しました。(最近そういう情報が無かったので・・・)「ファイル変換のMS変換時のファイル名制限の緩和」「バックアップ小物のバックアップ容量の制限緩和」「NTFSへの対応」「Mozillaのバージョンアップ」等々。 根本的な改善ではありませんが、大いに期待したいところです。

T-Engineについて
  T-Engineについては、日立・三菱さんからさまざまなバリエーションの物が紹介されました。μT-Engine・pT-Engine・微細チップ・・・等。あんな小さな基盤に搭載できる網膜カメラもあり、技術の進歩に驚くばかり。また、T-Engineどうしで接続コネクタの規格をきちんと決めて、異なるメーカーの物でも合体して機能強化できるまさに「昔の合体ロボ」のようなことも出来ますととの話がありました。ああして喜々として合体させている様子をみると「子供が遊んでいるのとのさして変わらないなあ」とほほえましい一幕もありましたが、こういう遊びの気持ちは今のパソコンからは失われているような気がする。
  一方、T-Engine 上で「超漢字」を動かしている様子が紹介されたが、あんな小さいボディであれだけ軽快に GUI-OS が動くのは改めて凄いと思う。「超漢字」自体が軽快なI-TRONベースのOSということはあるけど。
  T-Engine は昔の「電子工作」の現代版のような感じがする。開発キットはすべて仕様が公開されているから、基本的に解らないということはない。オークス電子(株)さんは安価なワンボードマイコンによる色々な応用例を展示していたが、ああいうことが行えるというのは楽しそうだ。プログラマや専門家でなくても、昔の電子工作の再来・・・という気分でちょっとやってみようかな・・・と興味がわく。

日本語マイクロスクリプト
  マイクロスクリプトの「日本語版」試作版の発表を見て、昔トミー(だったと思うけど)から発売された「ぴゅう太」を思い出してしまった。もう20年近く前になるのかな?日本語BASICを搭載しており、PRINTが「カケ」で GOTOが「イケ」といったような命令だったが、正にそれと(イメージが)似たようなものがこのような場所で見られるとは思わなかった。
  最近、学校教育でコンピューターが導入されていると聞くが、やっている内容が「Windows の操作方法」や「Word,Excelの使い方」では坂村会長が仰られている通りあまりに情けないと思う。やるのであれば「プログラミング」を通して「コンピューターとは何か?」ということを教えるべきでしょう。PC自体が既に廃れつつあるこの時代において、PC の操作方法を教えてもそんな物は直ぐに陳腐化するから無駄と私も思う。だから、コンピューターの本質を理解する上での手助けとしての「日本語によるスクリプト言語」の開発というのは大いに意義があると思う。(実用面においてもそうだと思うが)
  しかしどうも日本語のプログラミング言語は、「笑い」がこみ上げてくるのを押さえきれないのは何故だ?「ぴゅう太」の時もそうだった。でも、その時私はすでに英語BASIC(松下電器のJR-100という8ビットパソコンに搭載されていた非MS系のBASIC)を使っていて片言英語に慣れていたからかもしれない。初めから日本語であればそのような違和感は無いだろう。
※2003年に「プログラミング言語T」として超漢字4(R4.100)より標準実装されました。(2005.1.18記)

ピンチェンジさんのヴァーチャル・キーボード
  注目は、手のひらサイズの「ヴァーチャル・キーボード」。机上にレーザー光でキーボードを描いて、その描かれた場所を指でタッチすると赤外線センサーで位置を検知して文字入力が出来るというもで手書き入力もO.K.とのこと。ピンチェンジさんも坂村会長に負けず劣らずで、そのヴァーチャル・キーボードによる「TRONキーボード」の実現性について、会長がその場で「いくらだったら買うか?」という即席アンケート(?)を来場者に対して行った結果を聞いて「それならたぶん出来ます」という商品化への意欲があるともとれる発言をされていました。「一家に5台ピンチェンジ」で教育端末が安くなり量産効果が出れば、BTRON-OS(超漢字)の次へのステップの布石になる(かも)。やはり「急がば廻れ」で、「超漢字」ユーザーには当分「待ち」の状態が続くのでしょうが、これまでの T-Engine の急激な展開を見ていると、それは案外早いことになるかもしれませんね。

Unofficial TAD Guide Book
  今回のクラブ例会では、特定非営利活動法人Nortia Order による "Unofficial TAD Guide Book"が完成し、その即売会が行われました。手に取った瞬間、「これはすごい労作だなあ」と感心した次第。今までちんぷんかんぷんだった TAD についてイメージだけでも理解出来たような気分になりました。(まだまだ読み込んでいませんが)
  坂村先生は、「これ、"TAD Classic"ということにして、これでFIXしよう」と労作であることを評価しながらも、これをベースにBTRONのTADを拡張していくという考えではない模様。どうやら、T-Engine の環境が調ってから新しいデータフォーマットの規格を考える腹積もりのような気がしますが、果たしてどうなることか?

例会の後は・・・
  滅多に集まる機会のない「超漢字」ユーザー同志の飲み会に参加しました。15人程度の人数で会場探しに手間取りましたが、何とかお店(ジョン万次郎だったか?)を見つけて入りました。普段話し合う機会の少ない「超漢字」ユーザーとして大いに楽しみました。


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