コミュニケーション能力  11/28
 ゆうべのNHK「プロフェッショナル」は、過去に出演した人たちとのトークスペシャル番組でした。対談者はグラフィックデザイナー、工業デザイナー、装丁家、建築家
の4人。これは見ないわけにはいかない。 どの人からもいろんな刺激がありましたが、その中で、佐藤可士和(さとうかしわ)さんというグラフィックデザイナーについての感想をちょっと書いておきますね。
 きのう初めてこの人の話をじっくり聞いていてわかったのは、コミュニケーション能力の高さです。改めて、頭のいい人だと思いました。対談の中で自ら「コミュニケーション能力」という言葉を使い、その重要性を語っていましたが、受け答えを見ていると、それが仕事の根幹にあることがよくわかります。
 デザインのようなビジュアルワークは一見言葉とは遠い世界のように思われがちですが、仕事というのは実は言葉による思考やコミュニケーションがかなりの比重を持つものであり、それをおろそかにしてはいけないと、ぼくはここ数年で確信するようになりました。そこが、いわゆる芸術絵画と違うところです。原研哉さんといい、佐藤可士和さんといい、いい仕事をするグラフィックデザイナーたちは言葉が違う、と改めて思ったのでした。

ペットは癖になる  11/26
 ハムスターブームはとっくに終わっていますが、わが家ではいまだに続いています。去年まで1年余り中断していましたが、今年の春にまた新しく1匹飼い始めました。ところがたった半年でそのハムスターが死んでしまいました。猛暑が過ぎて秋めいてきた10月のある日突然、動きが鈍くなり、冬眠にはいるような気配を見せて、そのまま2日後に死んだのです。
 昔に比べるとハムスターが早死にするようになったのはどうしてだろうと親子で話し合っているのですが、まったく不可解。犬や猫ほどではないかも知れませんが、ハムスターでも死んでしまうと、飼い主はプチペットロス症候群になったりするものです。
 さて、光が丘で毎週金曜日に不動産のチラシが配られるのですが、その中に「おゆずりします」とか「さしあげます」という欄があり、住民同士がリサイクルやものの譲渡などを行えるようになっています。昔はこの欄に「ハムスター差し上げます」というのが結構出ていたのですが、ここ数年見かけませんでした。そしたら、先週、出ていたのですよ、珍しく。即電話をして、翌日娘と一緒にもらいに行きました。
 というわけで、わが家にまたハムちゃんがやってきました。種類はジャンガリアン。後日、写真を掲載します。ところが来たのはいいけれど、2日たっても、名前はまだない……。

言葉、ご用心  11/20
 
今年の流行語大賞の候補が発表されましたが、ぼくの知らない言葉ばかり。流行語も歌やスポーツなどと同じで、昔のようにみんなが知っているものはなくなって、どれもきわめて限定的な現象になってしまっているということでしょう。その中であえて大賞を予想するなら、「KY」だろうとにらんでいます。  
 この「KY」も寒々しい言葉だけど、
もう一つ心にささくれを起こすのは、小さい子どもたちが口にする「そんなの関係ねえ」。テレビから垂れ流される言葉に洗脳されているようで、見ていて不快ですが、考えてみればこの種の言葉は、言い回しが少し違うだけで、70年代から聞かれたものですということは、関係性を断ち切ってしまいたいという気分が、今もなお社会の中に続いていると言うことなのでしょう。
 候補の一つ、久間元防衛相の
「しょうがない」も
、流行語と言うより、日本人の普遍的精神構造の一端を表しています。
 しかし、言葉を侮ってはいけません。今、子どもたちは意味もニュアンスもわからずに「そんなの関係ねえ」と口走っているかも知れない。でも、言葉というものは人の中に入って繰り返し唱えられるうちに、やがて命を得て、人は気分やニュアンスも含めてその言葉を生きるようになるのですよ。くれぐれも取り扱い注意。

こだわるおじさん  11/17
 
昨日、散髪に行って来ました。千円でカットだけしてくれるQBというチェーン店です。今年の5月に自宅近くに開店したので、以来そこを利用しています。土日は結構混んでいるので、平日に行きます。
 ぼくはヘアスタイルをどういじっても変わり映えしないよと家族から言われているので、お金はかけません。まして、染める気などはさらさらない。
 順番が来て椅子に座るとまず「今日はどうなさいますか?」と聞かれます。ぼくはたいてい「2、3センチ切ってください。裾は刈り上げず
、耳にかぶらない程度に」と伝えます。そうすると結果的には髪の毛をだいたい3cm以上は切られますから、それを計算に入れて2〜3cmと言うわけです。
 そしたら、ぼくの次にぼくの隣に座った60代とおぼしきおじさんが理容師の若いお兄さんに「2センチ5ミリ切って」と言いました。聞いていて、何なんだ、そのこだわりはと思いましたね。それほど見てくれに気を使っているふうには見えないんだけれど……。ぼくは自分が終わったら、さっさと出ていったので、その後どうなったかは知りません。

2007年宇宙の旅  11/14
 昨夜のニュースで、月探査機「かぐや」から撮影した地球の出、地球の入りが公開されました。美しい!これはもうBGMに「ツァラトゥストラかく語りき」を流さなくてはいけないじゃありませんか。今夜、NHKで特別番組があるから、ぜひ見よう。宇宙機構のウェブサイトでも動画を見られるんですね。
 数日前にも、月面の映像が公開されましたが、クレーターなどがくっきりと映し出されていて、見入ってしまいました。月の表面は荒涼とした灰色の世界なのだけれど、冷たい美しさをたたえていて、美術にも音楽にもまた新しいインスピレーションを与えるのではないかと思いました。
 そして遠くに輝く小さな地球のなんと青いこと。深い深い黒の世界のここだけに色があり、そのことが地球の美しさをよけい際だたせていました。
 思い出すのは1969年のアポロ11号月面着陸です。あの時のボヤボヤの映像に比べると、テクノロジーの大いなる発展を感じることができます。アポロ11号に関しては、どこかの撮影所で作られたフィクションなのだというジョークが伝えられていますが、もしかすると今回の映像も、CGだろうと思っている人も多いのでは?

ブックモニター  11/12
 朝日新聞のアスパラクラブという会員制サービスがあります。コンサートやスポーツ観戦、グッズなどさまざまな懸賞があり、ぼくはよく応募するのですが、
会員数が増えたおかげで(今では100万人を超えている)ここ4年ほどずべてハズレばかりでした。ところが、先週実に久しぶりに、ブックモニターというものに当選したんですよ。
 これは、朝日新聞社の新刊を送ってもらい、感想などのアンケートを返送するものです。ぼくがいただいた本は『「新しい人」の方へ』(大江健三郎著)の文庫版。

 気がつけば、大江さんの作品は最近読まなくなっていました。でも新聞の連載エッセイは読みます。言葉に対する姿勢については、ぼくはこの方からの影響も受けていて、今回もこの本を読んで、また自分の位置を確かめたような気がしました。若い世代とその母親向けに書かれた本なので、ぼくが読み終わったら(もう間もなくです)、家族に読んでもらおうと思いますが、若い人たちだけじゃなく、どの世代が読んでもいい本です。
 生きる練習、ということを本の中で大江さんはおっしゃっているのですが、それはつくづく大切なことだと思います。

乱丁本の取り替え  11/8
 生まれて初めて乱丁本の交換をしました。

 夏に『デザインのデザイン』(原研哉著、岩波書店)という本を図書館で借りて読んだら、予想以上に面白かったので、これなら手元に置いておきたいと思って1冊買ったのです。中身は読み終えていたので、買った本はそのまま本棚に入れておいたのですが、つい先日、ちょっと調べたいことがあって開いてみました。
 そしたらなんと、本文の間に奥付が挟まっているじゃありませんか。あれ、著者の遊び心で(何しろ著者自装ですから)こんな製本になっていたんだっけ?と一瞬思ったのですが、そうじゃない。ここにあるべきページが間違いなくすっぽりと抜けていて、奥付はもう1枚、あるべき所ににちゃんとある。乱丁本なんて確かにレアものではありますが、中身が読めないんじゃ持っててもしょうがない。
 休み明けの月曜朝、岩波書店に電話をしました。対応は非常に誠実で迅速でしたね。さすがだと思いました。正常な本を送ってもらい、その段ボール箱で不良本を返送するというやり方でした。なるほど。今朝、きれいな本が届いて、ぼくは乱丁本を返送しました。一件落着。こんな経験もたまには楽しいものです。

なぜデザインなのか  11/7
 今年、原研哉さんというデザイナーの本と出会ったのは収穫の一つでした。夏に『デザインのデザイン』を読んだとき、それまでぼくが抱いていた、現在のデザイン界に対する拒否反応のようなものを、この本が取り払ってくれたからです。
 ちょうどそのころ、NHKスペシャル「デザイン・ウォーズ」という番組を見て、今デザイナーたちは、戦時中に戦意昂揚の手伝いをした画家たちと同じことをやってるんじゃないかと思いました。まさに拒否反応を増幅するような内容だったから、ますます原さんの本に助けられたという思いがあります。
 先月末に新聞で、この人の新刊『なぜデザインなのか。』
広告を見て、原さんの本なら読む価値ありと思い、躊躇せずに買って読みました。これは阿部雅世という建築家との対談ですが、期待に違わず素晴らしい内容でした。どちらの本もいわゆるデザイン業界関係者だけでなく、一般の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。面白いから。
 「この本が面白い」コーナーで、たまたま原さん関連の本が2回続きましたが、それだけ思い入れがあるんですね。自分でもびっくり。マイブームです。いやいや、ブームでは終わりませんよ。

にちゃにちゃ  11/1
 「にちゃにちゃ」という表現を使ったり聞いたりしたことはありますか?液体などがベタつく感覚を表したものです。よく言われるのは、ベトベト、あるいはベタベタ、ですね。でも語感としては、それよりももっと細かくて粘着性のある状態を指します。指にくっついた接着剤が糸を引いてなかなか取れない感じ。
 ぼくの出身地、福井市ではごく普通にこの言葉を使います。おそらく今もネイティヴの福井人たちは使っているはずです。ぼくは日本全国誰でも使っていると思っていたのですが、東京に来たばかりの30年以上前、横浜の友達と話していてこの表現を使ったら「何、それ?」と言われました。そうか、これは福井弁なんだと思って、それ以来あまり使わなくなったのですが、ほんとうはこの言葉でしか表せないのにと思うことがあります。
 ところが昨日、漱石展を見に行く電車の中で、漱石の『夢十夜』を読んでいたら、この「にちゃにちゃ」が出てきたのですよ(第二夜で)。もちろん意味も同じ。漱石は江戸っ子ですから、必ずしも福井弁ではないと言うことでしょう。よし、これからもっと使おう。語彙は豊かな方がいいのです。

10月の「ごあいさつごあいさつ」