もう6分の1が 2/28
ぼくが学校に勤務していた10年ほど前の2月末に、同僚のアメリカ人との雑談の中で「今年ももう6分の1が過ぎた。速いなあ」と話していたことをなぜかよく覚えています。校舎の階段を下りながらの光景がはっきりと浮かんできます。どうってことない会話なんだけど、学校の3学期はあわただしく、年が明けたとたんすぐに入試の準備だの次年度の準備だのをしなくてはいけないから、ことさら最初の2か月があっという間に過ぎたと感じられたのでしょう。
それ以来2月末になると、いつもこの会話を思い出します。そして儀式のように口にするのです。「今年も6分の1が過ぎた」
そうだ、きっとぼくのどこかで、そんな風にして冬に別れを告げて、春を呼んでいるのかも知れません。でも今年の東京は雪の降らない画期的暖冬。暖かい風が吹いても、ありがたみが今ひとつ感じられません。やっぱり、冬はしっかり寒くあって欲しいと、雪国育ちのぼくは思うのです。
田中将大選手がんばれ 2/27
ぼくはあの夏の甲子園決勝戦以来、田中選手を気に入っていて、ちょっと応援しているのです。理由はいろいろあるけれど、一番心を動かされたのが、楽天入団が決まったときです。ドラフトの決定を即受け入れて、素直に喜びを語っていました。あの最下位の楽天ですよ。最近これほどすがすがしい(と言う表現がふさわしいかどうかはよくわかりませんが)野球選手は珍しい。
だってそうでしょ、あの江川(ぼくと同じ学年)や桑田を始め、どれだけの選手が今まで自分の希望の球団に入れないと言うのでごねたことか(でもぼくは彼らの実力は認める)。特に巨人が絡むと、果てしない欲望がむき出しになり、あの手この手の策略を使ってまで自分のわがままを押し通そうとする人たち(まあ巨人側にも問題はあるが)がうんざりするくらい現れました。
そこへ行くと田中選手の入団の経過は新鮮でした。「ぼくは悪役です」と言い切るやんちゃ坊主ぶりが面白いし。今、キャンプの様子が連日報道されてますが、ぜひ本番ではいい成績を上げて、松坂を超えてもらいたいものです。
時代
2/23
次の文章を読んでみてください。いつの時代に書かれたか、見当がつきますか。
ある日彼はその青年の一人に向かってこう言った。
「君らは幸福だ。卒業したら何になろうとか、何をしようとか、そんなことばかり考えているんだから」
青年は苦笑した。そうして答えた。
「それはあなた方時代のことでしょう。今の青年はそれほど呑気でもありません。何になろうとか、何をしようとか思わないことはむろんないでしょうけれども、世の中が、そう自分の思い通りにならないこともまたよく承知していますから」
なるほど彼の卒業した時代に比べると、世間は十倍も世知辛くなっていた。……
仮名遣いを変えていますが、これは夏目漱石の『道草』の一部。大正4年に書かれた文章です。信じられないですね。舞台設定を現代に持ってきても、そのまま通用します。ぼくは自分が子供だった40年前のほうが今よりずっとのんびりしていたと懐かしむことがあるのですが、漱石から見れば、それより遙か以前に世の中が世知辛くなったと感じているわけですよ。あの時代にこんなことを言っていたのだとしたら、漱石が今の時代を見たらなんて言うだろう。
ぼくは『徒然草』でも、著者がたびたび彼の生きている時代を批判して、昔は良かったと言ってる文章を発見し、驚いてしまうことがあります。おとなが今の若い奴はなっとらん、と言いたがるのも、昔は良かったとか、今は世知辛くなった、時代が悪くなったと思うのも、人類の歴史の中でずっと繰り返されてきたと言うことでしょうね。人の性質はさほど変わらず、ただ時代だけはめまぐるしく変わる。それが歴史なのかも知れません。
では、今の子どもたちが成長した頃は世の中がますますひどくなって、21世紀初頭を振り返って「あの頃はのんびりしていた」なんて思うんでしょうか。
週間ブックレビュー 1/21
NHK-BS2で日曜日に放送の「週間ブックレビュー」が面白い。以前はぼちぼち見ていましたが、最近は欠かさず見るようになってしまいました。
この番組がどれくらい人気があるかというと、ここで紹介された本が、後日Amazonでチェックされていることでわかります。「この本を買った人は、こんな本も買っています」という項目に出てくる本が、番組で紹介されたものばかりなのですよ。
さらに、図書館の貸し出し予約もそう。インターネットで検索すると、予約がどっと入っていて、簡単には手に入らなくなる。結構熾烈な競争だったりします。きっとぼくくらいの中年オヤジが番組を見て、チェックを入れているのでしょう。まったくやることはみんな同じだ。
司会は二人で担当し、毎週不動なのが女優の中江有里さん。親しみやすい美しさの中に知性を感じさせて、たぶん7時のニュースに出てくるお天気お姉さんのさえたん(半井小絵さん)と同じくらい中年男性に人気があるのではないかと、ぼくは密かに推測しています。
落語家の話術 2/19
先週土曜日に、ぼくの住む地域の「青少年育成三地区合同講演会」がありました。息子の通う中学校のPTAから、参加してくださいという依頼をいただいたので、聴きに行きました。
「笑って笑って元気になって!笑いは心の栄養素」という題で、三遊亭若圓歌師匠のお話。落語家のお話だから退屈はしないだろうと思っていたら、ほんと、笑えました。1時間40分間、原稿も休憩もなしでずっと話し続けてました。さすがプロ。
話のネタはけっこうオヤジ臭い部分もありましたが、テレビのバラエティーによくあるようなくだらないギャグじゃないのが良かった。落語風の笑いって、一般の人たちももっと取り入れていいと思ってます。間の取り方かな、コツは。
聴覚障害者のために手話通訳が二人、交替でやっていましたが、落語家のおしゃべりをどれくらい通訳できたんだろうって、そっちがちょっと気になってました。圓歌師匠が最後ややこしいことを言って、まじめそうな通訳をからかってたのがまた笑えました。
訓練された宇宙飛行士
2/10
数日前アメリカで、女性宇宙飛行士が三角関係から別の女性に危害を加えようとして逮捕されたという事件が発生しました。
三角関係のもつれから傷害や殺人事件を起こすというのはよくあるけど、このニュースが世界の耳目を集めたのは、エリートである宇宙飛行士が起こした事件である点です。
ニュースを聞いていて感心(!)したのは、その計画と行動です。飛行機を利用する相手の先回りをするために、車でテキサスのヒューストンからフロリダのオーランドまで1500kmの道のりをノンストップで走り続けたそうです。しかも途中トイレ休憩をとらなくてすむようにおむつをしていたらしい。このおむつが宇宙飛行士仕様なのですね。
さすが宇宙飛行士として厳しい訓練を受けただけのことはあります。フツーの人間だったら最初から実行不可能と決めつけてしまう計画を、この飛行士はしっかり立て、しかもそれを実行するだけの体力、意志、発想、道具(おむつ)を充分に備えていたと言うことです。
しかし、その行動と目的の落差、スペースシャトル時代の顔と逮捕後の顔の落差が、これまたビックリという事件ではありました。
感動させる要因 2/6
今日はお昼ご飯の時間がずれたので、珍しく「徹子の部屋」を見ました。そしたら、ゲストがあの「千の風になって」の秋川雅史さん。大晦日の紅白出場以来CDの売り上げが急激に伸びたことは聞いていました。ぼくは秋頃に同じくNHKの番組でこの人の歌うのを見たことがあります。紅白ではバックの映像がとても印象的でした。あの歌は歌いやすい旋律と歌詞なので、自分で歌っても癒される。ただし絶えず秋川さんとの歌唱力の差を思い知らされます。
ぼくはときどきこの欄に書いていますが、ずーっと昔から、歌のうまい人をうらやましく思っています。でも歌がうまいと言うのは、イコール朗々と歌えるという意味ではなさそうです。テクニックが上手でも感動しない歌は結構あります。
若い人で歌唱力のある歌手は今もたくさんいますが、例えば平原綾香などは何度聴いても、心に響くものがありません。もちろんぼく個人の好みにもよるのですが、その違いはどこにあるのだろうとよく考えるのです。
それは、上手に描けている絵と心に届く絵が必ずしも一致しないということと共通しているようです。しかしその要因は何かと問われると、いまだに的確な言葉が見つかっていません。いずれ見つかったら、またお話しします。
1月の「ごあいさつごあいさつ」
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