場 所 : 東京都美術館 (上 野)
今回の展覧会は、NGAの印象派絵画を展示している西館の改修工事に伴って開催されることになったようで、これだけの作品を一同に展示するのはめずらしいとのことだった。実際展覧会は、すばらしいの一言だった。どこが良かったかというと、やはりモネの「日傘の女性、モネ婦人と息子」は、空梅雨のからっとした初夏の天気のように、実にさわやかな作品だった。日差しの明るさを感じた。図鑑等で何度かこの作品は見たことがあるが、本とは比べものにもならなかった。大きさも100*81センチと傑作揃いの今回の展覧会のなかで、ひときわ光って目立つ作品だった。
風景画では、コローの独特の色調(銀灰色)。クールベの海辺のボート,エトルタ。ブーダンのトゥル−ヴィルの浜辺が印象的だった。特にブーダンの作品では、小さな漁村が、鉄道の開通によりリゾート地へと変わっていく様子を描いた作品だった。絵画の中では、まだ、都会の人が海辺にただ集まっているだけの光景で、とてもリゾート地とは呼べない状態なのがおかしかった。走りのころはこんなものかと納得してしまった。フレデリック・バジ−ルのエギュ=モルトの城壁、エドモンド・メートルもよかった。この絵は、キャンバス全体が明るい光の中にあって、空も海もきれいで、城壁も強い光のなかで輝いていた。人物画(エドモンド・メートル)は、肌の色といい、スーツのしわ、肖像画の気品も十二分に出ていた。バレエの絵があった、すぐドガとわかった。クラシックバレエも1890年頃は、オペラの幕間に行われていたようで、当時は芸術的にまだ認知されていなかったようだ。オペラ終了後、お目当ての踊り子を誘っていたそうだ。
ベルト・モリゾの姉妹も、ぱっと目に飛び込んできた。明るいふいんきで今日の天気に似て、さわやかな作品だった。ルノワールで印象に残ったのは、髪を編む若い女性とおもちゃで遊ぶ子供だった。独特のやわらかなタッチは、暖かなやさしい表情をかもし出していた。
個人的には、モネ=アルジャントゥイユという印象が強い最初に見た作品が、睡蓮より早かったせいもある。西洋美術館所蔵の冬のアルジャントゥイユは好きな作品の一つだ。後半の睡蓮は、抽象的な花に焦点を当てたものばかりだが、初期は花ばかりでなく、池の全景、橋などを描いていたことを知った。ピサロの作品も良かった、麦わら帽子をかぶる田舎の少女は特に印象的だった。野原にただすわっている姿なのだが、存在感というか、絵の表情は1つだが、それがいろいろの表情を持っているように感じてしまうところがすごいと思った。シスレーの作品もあった、これがシスレーかと名前だけで関心してしまった。有名画家の作品だとそれだけで最初から妙に関心してしまうから不思議だ。
セザンヌは私が好きな画家の1人だが、今回展示された未完の作品サント・ヴィクトワール山は異質だった。アルルカンは全部で4点あるそうだがその内の一点が今回展示された、この作品でたぶん2点目だと思う。ボナールの庭のテーブル・セットはこんなところで食事したらいいだろうなと思わせる明るい印象の作品だった。花束はテーブルクロスの色が印象的だった。サージェントのマティルド・タウンセ゜ット嬢は、華やかできれいだった。
またね特別展示として、古典絵画の巨匠(オールドマスター)の作品も数点来ていた。カナレット/パドヴァのポルテロ門は62*109の大きさだったが作品はどこまでも繊細に描かれ印象的だった。世界に30数点しかないと言われる。フェルメールの手紙を書く女性も、印象的だった。部屋から逆にこっちを見られている感じを受ける作品だった。印象的な作品が多い、すばらしい展覧会だった。