スラウェシ島で採集した蝶と「マレー諸島(ウォーレス著)」
ウォーレスは、著書「The Maley Archipelago(マレー諸島)」のNatural History of Celebes
の章で、鳥類について述べた後に蝶についてかなりの分量を割いて説明を行っている。
その中で、セレベス(スラウェシ)が近隣の島々に比べていかに特産種が多いかを説明した後、
その特徴としてまず西方の島々の蝶に比べて大きいこと、
そしてその大きさ以上に、形が特徴的であることを記している。
原文には以下のように書かれている。
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Graphium milon(ミロンタイマイ、注1)に、
Graphium sarpedon(アオスジアゲハ、注2)の左前翅を重ね合わせた。
Graphium milonとGraphium sarpedonはごく近縁の種類と言われている。
ウォーレスも同様の組み合わせの例(Papilio miletusおよびPapilio sarpedonと記載している)を図示して、
Graphium milonの前翅前縁の基部が急に折れ曲がっていると説明している。
しかし、私の採集したGraphium milonでは、
ウォーレスの言うように前縁の基部が本当に急に折れ曲がっていると言えるのか微妙である。
注1)Sulawsi島Tawaeliで2004年12月27日に採集。前翅長50mm。 注2)13 Miles to Tapah, PERAK MALAYSIAで1998年5月2日採集。前翅長37mm。 |
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Graphium meyeri(セレベスミカドアゲハ、注1)に、
Graphium doson(ミカドアゲハ、注2)の左前翅を重ねた。
Graphium milonと同じく前翅の先端が尖っているのがわかる。 また、ウォーレスがスラウェシ島の蝶の特徴に挙げた基部が折れ曲がっている様子は、 Graphium milonよりはっきりしているようだ。 注1)Sulawesi島Panekiで2003年12月28日採集。前翅長52mm。 注2)Kuala Woh Tapah, PERAK MALAYSIAで1998年4月30日採集。前翅長40mm。 |
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Menelaides polytes ♂(シロオビアゲハ)の例。
スラウェシ島産(注1)に、マレー半島産(注2)を重ねた。
スラウェシ島産は、マレー半島産に比べて著しく前翅先端が外側に突き出ているのは、
ウォーレスの言う"being often somewhat hooked"にあたるのだろうか。
注1)Sulawesi島Tawaeliで2004年12月27日に採集。前翅長56mm。 注2)Kuala Woh Tapah, PERAK MALAYSIAで1998年4月30日採集。前翅長44mm。 |
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上の3つの例はアゲハチョウ科だったので、
最後にシロチョウ科のHebomoia glaucippe ♂(ツマベニチョウ)の比較例を示す。
スラウェシ島産(注1)に
マレー半島産(注2)を重ねて図示した。
スラウェシ島産は、まずその大きさが目を引くが、翅形もアゲハチョウの場合と同様の傾向、
つまり前翅の先端が突き出ていることがわかる。
注1)Sulawesi島Panekiで2003年12月30日採集。前翅長57mm。 注2)13 Miles to Tapah, PERAK MALAYSIAで1998年5月2日採集。前翅長45mm。 |