二枚飛車のパズルは常に玉の逃げ方が二通りあって大変。
本作では更に七段目も一つ置きに空いていて、そこも馬の王手、歩打の選択があってかなり複雑です。
作者 「2枚飛車プラス馬の大駒3枚で玉を追い詰めます。受方85香は9手目を限定するだけの駒で、ちょっと残念な配置です。」
逃げ方がたくさんあるので、頭からやみくもに読んでいっては発散しそうです。 方針を考えながら進めましょう。
1.馬が53に移動(86を塞ぐ)
初形で目に付くのは86から9筋への逃げ道があること。
これを詰ますには53馬から98飛といくことが必要なので、左の飛を右に動かすためには、先にこの逃げ道を塞がなければいけません。
44馬、86玉、53馬、77玉、
これで86へ行けなくなったので、左の飛も動かすことができるようになります。
44馬に78玉は? 68玉は? と読みだすとこれまた大変。
こういう変化はだいたい作意順に短絡して早く詰むとしたものなので、先ずは受方に有利そうな逃げ方を読んで作意らしい順を見つけましょう。
2.馬が75〜64に移動
78歩、同玉、79飛、68玉、69飛、58玉、
78歩に68玉は78歩も残って2手短絡するので、ここは同玉。 69飛のとき逃げ方が4通りありますが、
1) 77玉は、78歩、同玉、79飛左、88玉、89歩以下。 78玉も同様。
2) 57玉は、75馬、58玉、59飛、68玉、57馬以下で、右側に逃げられなくなるので簡単。
なので、58玉と逃げます。
このまま59飛、49飛、39飛と追って左右の飛で挟むのが二枚飛車のパズルの定跡。
しかし、29飛までいったとき38玉と逃げられると、39飛左、48玉、49飛、38玉で千日手模様で失敗です。
これを避ける手が、馬の繰り替え。
59飛、48玉、75馬、37玉、64馬、48玉、
これで28玉と逃げられなくなります。
75馬に38玉の変化も大変(棋譜ファイル参照)で、ちょっと指しにくい手です。
38玉が詰むなら37玉でも38歩、同玉とする手も考えられますが、歩が足りなくなって詰みません。
3.左の飛車が69に移動
49飛、58玉、59飛左、68玉、69飛、58玉、
64馬と据えたので、49飛に38玉は39飛、48玉、37馬以下。
58玉と戻って、いよいよ左の飛が始動します。
69飛に77玉や78玉は86が塞がっていて早いので、58玉と逃げて、結果的に99の飛を69に移動させることに成功しました。
4.再び75馬
58玉に59飛右、48玉、49飛、58玉では千日手。
48玉のとき再び75馬とします。
59飛右、48玉、75馬、37玉、
5.右端で折り返して収束
75馬に37玉でさっきとよく似た局面になりましたが、左の飛車が移動して包囲網が狭まっているので、今度は38歩と打って詰ますことができます。
38歩、同玉、39飛、28玉、29飛、17玉、53馬、18玉、
19飛、28玉、17馬、37玉、38歩、48玉、49飛右、38玉、
39飛、48玉、26馬、57玉、35馬、48玉、49飛左、58玉、
59飛、48玉、57馬 まで53手
収束といってもかなり長く、3枚の大駒の繊細なやりくりは見応えがありますね。
二枚飛に馬まで加わった難解なパズル。
馬の動きを見破れるかどうかが鍵のおもしろい作品でした。
それでは、みなさんの感想を。
解答到着順です。
- 小山邦明さん:
- 飛と馬の細かい動きがややこしいが、これできちんと成立している見事なパズルでした。
- 占魚亭さん:
- 馬移動のタイミングが悩ましかったです。
- 山下誠さん:
- この追い方では23手目は1七馬でも6四馬でも詰んでおり、全く自信がありません。
71馬まで49手解。馬を64へ移動せずに19飛で折り返した解答と思いますが、前述の通り29飛のとき38玉と戻って詰みません。 惜しい。
- 隅の老人Bさん:
- 一手指しては、さてどちらに逃げようか考える。
やっと開いた箱根寄木細工の秘密箱、これが解図感です。
TETSUは箱根が近いので、よく遊びに行きます。 お店を巡ると、秘密箱や組木などパズルがたくさんあって楽しいですね。 詰将棋では「知恵の輪」が有名ですが、パズルにもいろいろなタイプがあるように、パズル的な詰将棋もまだまだいろんなタイプを開拓できる可能性があると思います。
- 池田俊哉さん:
- 馬と飛二枚で詰め上がり形を探す。なんとなくばか詰を解いているような不思議な感じ。
詰上りから逆算して解くというのは高級なテクニックですね。
- S.Kimuraさん:
- 2枚飛車が往復するパズルは苦手なので,今回も柿木将棋に任せて鑑賞しましたが,飛車だけでなく馬の動きも複雑そうで,その意味するところを理解するところまでは至りませんでした.解説を楽しみにしています.
実はTETSUも最初ロジックがよくわかりませんでした。 わかっているみたいに解説していますが、お願いして作者から教えていただいたものです。 |