菅野哲郎さんの鞍馬シリーズの第3弾。
鞍馬シリーズは京都府の馬ということで、香・と・歩+馬ノコをテーマにしています。
- 「鞍馬」 詰パラ2010年5月デパート5
持駒なしの京都府(香と歩)全駒図式から馬ノコ
- 「鞍馬II」 おもちゃ箱2015年1月 くるくる展示室No.287
1サイクルに京都府(香、と、歩)の合駒がはいる馬ノコ
そして本作「鞍馬III」は香・と・歩・馬の初形から、ちょっと変わった馬ノコが飛び出します。
金鎖手順の形なので、玉を22・32・42に何度でも動かすことができます。
13玉と逃げだすのは馬の王手で合駒なしの詰上り。
まずは42に呼んで64馬、53と。
次は 32に呼んで65馬。 ここで合駒が4通りありますが、43と引・43と寄は、同と、同と、37香で香が取れるので簡単。
54と直か54と寄かはちょっと悩みますね。 少し進めてみると正解がわかります。
1) 54と直、31と左、42玉、75馬、53と、41と右、32玉、76馬
2) 54と寄、31と右、22玉、66馬、44と寄、21と左、32玉、76馬
3) 54と寄、31と右、22玉、66馬、44と上、21と左、32玉、31と左、42玉、75馬、53と、41と右、32玉、76馬
いずれも65馬が76馬に移動しただけで、あとは全く同じ局面です。
ということで、手数が一番長い 54と寄、44と上 と合駒する3)が正解です。
これが分かれば、馬ノコで98歩を取って戻ってくるところまでは、ゆっくり楽しめますね。
「21と左、32玉、31と左、42玉、64馬、53と、
41と右、32玉、65馬、54と寄、
31と右、22玉、66馬、44と上、」
この14手が1サイクル。 これを A(64馬、65馬、66馬) と記述することにします。
A(64馬、65馬、66馬)
A(75馬、76馬、77馬)
A(86馬、87馬、88馬)
A(97馬、98馬、88馬)
A(97馬、87馬、77馬)
A(86馬、76馬、66馬)
行きは縦のギザギザだったのが、帰りは横のギザギザになっているのに気が付かれたでしょうか。
三段馬ノコでは一般に行きと帰りでこのように軌跡が変わります。
このあと、もう少し近づきますが、最後のサイクルで途中から収束に入ります。
21と左、32玉、31と左、42玉、75馬、53と、
41と右、32玉、65馬、54と上、
65馬まで近づけた目的は、47馬から37馬と香を取ること。
そのとき35への守りに44とを残しておく必要があるので、最後だけは54と寄ではなく54と上が正解です。
31と右、22玉、21と右、12玉、13歩、同玉、14と、同玉、
98歩を取ったことで13歩が可能になっています。
47馬、15玉、37馬、25玉、26馬、同と、同歩、同玉、
27歩、同玉、28香 まで113手
最後は大活躍した馬を消して香・と・歩だけのきれいな詰上り。
移動合の入る馬ノコは、1951年11月詰将棋パラダイスで発表された山田修司さんの作品が1号局で、その後いろいろと展開した作品が創作されています。
本作はと金2枚が移動合する三段馬ノコ。
この趣向自体は先行作品として河原泰之さんの「TANGO」(近代将棋1992年4月)があります。
作者は知らずに創作したのかもしれませんが、受方持駒指定ですっきりした配置で実現した本作は、そのくるくる版ともいえるでしょう。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 占魚亭さん:
- と金2枚のボディーガードから玉を引き離すタイミングがポイント。
- 山下誠さん:
- と金のコンビが絶妙の動きで手を稼ぐ愉快な馬鋸。香車が3枚並ぶ詰上がりもきれい。
- ぬさん:
- と金と馬の共演。思ったより複雑な軌道。
- 原田雄二さん:
- 10手目54と寄か54と上かで暫く迷いました。
- 加賀孝志さん:
- 98歩取りは直感題名の意味は?
京都府(香・と・歩)の馬でした。
- おかもとさん:
- 「鞍馬III」というからには「I」とか「II」があったのかな?
……なるほど、「京都府」にひっかけた趣向でしたか。
- 竹中健一さん:
- この手の馬鋸はたまに見ますね。収束が決まっているのが良いです!
- 池田俊哉さん:
- 遮蔽駒二枚の三段複式馬鋸。往復として馬を消しているので解後感は良い。
香と歩(京都府)に馬で鞍馬でしたね。
#一般的に三段鋸は往復で縦横が変わるものなのだろうか...
玉が同じように動けば縦横が変わりますね。
帰りは玉を逆順で動かせば同じ軌跡にできるかもしれません。
- 小山邦明さん:
- 98の歩を取りにいく動きがシンプルな駒で実現できているのが良い。
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