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詰将棋おもちゃ箱詰将棋研究室
研究展示室 No.2 山崎健さん 「アンフィスバエナ」
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出題時のコメント:

300手台。詰将棋研究室では裸玉、超長編などいろいろ研究


研究展示室は裸玉や300手以上の長手数など、かなり敷居が高く、本作が2作目の出題です。
題名の「アンフィスバエナ」とは、伝説の双頭の竜。 Wikipediaによるとヨーロッパの紋章に描かれていることが多いそうです。
いかにも2枚の龍が活躍しそうな題名で、楽しみですね。

さて、いきなり趣向に入りますが、まずは舞台作り。 39龍だけでなく55飛も世に出します。

  96金、87玉、97金、88玉、98金、78玉、48龍、77玉、78歩、86玉、
  97金、95玉、96金、94玉、95金、83玉、94金、73玉、43龍、74玉、54飛、85玉、

金追いで上下させる手順は、黒川一郎さんの「車井戸」(黒川一郎研究78将棋雑記)参照)にちなんで車井戸と呼ばれています。

  95金、86玉、96金、87玉、97金、88玉、98金、79玉、69と、同玉、
  49龍、78玉、48龍、79玉、39龍、78玉、28龍、58歩合、同龍、77玉、78歩、86玉、
  97金、85玉、96金、94玉、95金、83玉、94金、73玉、53飛成、74玉、54龍、85玉、

龍ノコで19金を取りに行きます。 28龍まで行くと、79玉では金を取られてしまうので、77玉とせざるをえないのですが、その前に58歩の中合が重要な一手。 48龍または28龍のときすぐに77玉とすると、53飛成のところで43龍(23龍)として簡単。

  『95金、86玉、96金、87玉、97金、88玉、98金、79玉、
  59龍、78玉、48龍、79玉、39龍、78玉、28龍、58歩合、同龍、77玉、78歩、86玉、
  97金、85玉、96金、94玉、95金、83玉、94金、73玉』、 43龍、74玉、34龍、85玉、

  『95金・・・73玉』33龍、74玉、24龍、85玉、
  『95金・・・73玉』、13龍、74玉、14龍、85玉、

14歩の奪取に成功しました。

  『95金・・・73玉』、13龍、74玉、24龍、85玉、
  『95金・・・73玉』、33龍、74玉、34龍、85玉、
  『95金・・・73玉』、43龍、74玉、54龍、85玉、
  『95金・・・73玉』、

54龍まで戻して収束に入ります。

  72銀成、同玉、52龍、81玉、82龍、同玉、93金、73玉、64金、62玉、54桂、51玉、
  52歩、同玉、53歩、43玉、21馬、33玉、34歩、同玉、45金、33玉、44金、23玉、
  28龍、27銀合、同龍、同角成、24銀、14玉、15香 まで307手

上の龍が龍ノコで一つずれるごとに、車井戸で下に来て下の龍が龍ノコする趣向。

馬ノコでは、1999年の看寿賞を受賞した伊藤正さんの「馬×馬」全詰連)があり、本作の作者の山崎さんも「馬×(馬+α)」を創作しています。 龍ノコは馬ノコに比べ作りにくく、龍×龍は本作が初めて。 本作では更に発展して、2枚の龍が上下に分かれてその間を車井戸で結ぶ、(車井戸+龍ノコ)×龍ノコの構造になっています。 構造的には志駒屋十政さんの「京の夢」((金銀知恵の輪+馬ノコ)×龍ノコ)に近いかもしれません。

作者:
車井戸プロットを使った竜ノコ×竜ノコ趣向です。
収束は余詰が消えずに苦労しました。結局、希望限定(302手目、銀/飛合どちらでも307手で詰むが飛合だと余詰あり)となってしまいましたが、ご容赦いただけますでしょうか?
作品名のアンフィスバエナは、Wikipediaによると「身体の両端に頭のついている、双頭の竜」とのことで、本作にぴったりかと思ってます。

希望限定はすぐ分かるので、あまり気になりません。

上下の龍ノコを車井戸で結んだ盤面全体を使う雄大な趣向、活躍した2枚の龍を両方とも消す重厚な収束。 「アンフィスバエナ」の題名がぴったりの傑作です。

それでは皆さんの感想を(解答到着順)。

山崎健さん(作者):
解答率を下げてしまうかもしれないので、責任とって?解答します。
本作、1年半程前に詰パラにも投稿したのですが、採用いただけなかったです。。。
でも、風みどりさんから、涎が出るほど、、と形容されたのはとてもうれしかったです。

研究展示室で出題したあとに、詰パラ大学院の新担当風みどりさんにお会いしたとき本作をお見せしたら、本当に残念そうな顔をされていました。

池田俊哉さん:
伊藤氏の命名を借りれば「龍×龍」ということになるでしょうが、その形が見えるまでが難しく、序盤で6八とと捌こうとして泥沼に入ってしまいました。趣向に入れば一気に収束に向かうが、この収束がまた難しく、上段龍の動きを制限していた駒が動きだすところなど、作者の力量が感じられます。
増田智彬さん:
車井戸の折り返し地点でそれぞれ龍鋸を行うとは!
構想は思いついても実現が困難な作であることは想像に難くなく、とても素晴らしい作品。
たくぼんさん:
上と下の両方で龍鋸、まさに"アンフィスバエナ"
玉方も精一杯の延命を図る様が美しくもある。
隅の老人Bさん:
あわやの瞬間、58歩合。上下で竜鋸、なかを取り持つ金の車井戸趣向。
主役2枚の竜も収束には消える。これは傑作ですね。
広瀬稔さん:
作品名にぴったりの趣向作。収束がややこしかった。  

研究展示室No.2 解答・感想:6名 全員正解(下記)

  池田俊哉さん  隅の老人Bさん  たくぼんさん  広瀬稔さん
  増田智彬さん  山崎健さん

当選者は、展示室で発表しています。