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 記録に挑戦! 第16回
史上初、完全玉座裸玉誕生
加 藤  徹 
詰将棋パラダイス2004年6月号より
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 第14回で紹介した岡村さんの玉座裸玉「驚愕の曠野」(改良図)、4手の逆算だけに2か月をかけたという作者の詳細な検討に漏れはありませんでした。 詰将棋史上初の夢の玉座裸玉の誕生を皆さんと共に喜びたいと思います。

岡村孝雄 裸玉

裸玉 59手 岡村孝雄 『驚愕の曠野』(改良図)

 3三角、42角合、同角成、同 玉、6四角、53角合、
 4三歩、3二玉、3三歩、2二玉、2三歩、1二玉、
 1三歩、2三玉、2四歩、同 玉、2五歩、同 玉、
 3六銀、同 玉、3七金、2五玉、2六歩、3四玉、
 4五銀、同 玉、4六金、3四玉、45金打、2四玉、
 35金上、同 角、2五金、1三玉、31角成、22歩合、
 1四歩、1二玉、1三金、同 角、同歩成、同 玉、
 1四歩、1二玉、2三角、1一玉、2二馬、同 玉、
 13歩成、同 玉、1四金、2二玉、32角成、1一玉、
 1二歩、同 玉、2三金、1一玉、2二金 まで59手
 

 膨大な変化紛れを持つ超難解作でありながら、非限定のほとんどないすっきりした手順は、奇跡的。

 百ページを超える詳細手順が「おもちゃ箱」で公開されているので参照されたい。

 http://www.ne.jp/asahi/tetsu/toybox/

驚愕の曠野」そして玉座裸玉の最終完成形  近藤真一

 近い将来に裸玉はコンピューターによって、すべて解明されるという人がいる。 その予測は正しいであろう。 しかし、現在の状況は一作の詰みの有無さえ、はっきり結論が出せないでいる。 その状況で、裸玉の純粋な完全作を得るという事は困難な作業であり、闇雲な挑戦は不完全作の山を築くだけの結果となろう。 裸玉の探索は砂中に潜む一粒の砂金を探すようなものである。 言うまでもなく、存在する事と発見する事は別物である。 岡村氏は現在まで数作の裸玉を発表しているが、発表に至るまでの労力は想像以上のモノであったに違いない。 おそらく、氏は探索の過程で裸玉に対して、極めて鋭敏な嗅覚を身につけたのであろう。 それでなければ、天性のセンスがあったのだ。 単なる執念、根性と言ったモノでは裸玉と言えども好作の発見は難しい。

 玉座裸玉(角金4銀2歩9)の作意手順を改めて鑑賞してみよう。 初形の持駒を見て驚くのが歩9枚と言う事だ。 これだけの歩を使えるのだろうかと気になる。 なぜなら、手順の展開は右、ないしは左半分で展開されると予想されるので、およそ、一筋に2〜3枚の歩を使用しなければならないからだ。 しかし、その心配は良い意味で解消される。 角合以後の4筋から1筋の歩の連打に思わず膝を打つ。 続いて2筋に歩を連打し、銀捨てで37金の拠点を打つ。 この金が46、35とせり上がっていくのも面白い。 1筋に玉を押し込み馬が出来ればほとんど終わりかと思えばそうではない。 53角が13まで移動し清算されるのも面白い。 もう仕掛けのない最後の場面で23角の好手を放つ。 後は馬を交代させ金をせり上げれば、ようやく詰みとなる。

 玉座裸玉(角金4銀2歩9)は最終完成形である。 今後どれだけの裸玉が発表されるか判らないが、本作が裸玉の中の最高傑作である事を私は強く確信している。 本作を完成させた作者に私は大いに敬意を表したい。

刹那:
これは凄まじいですね。 自分の目を疑いました。 難しくて分からないのですが、看寿賞特別賞超有力ですね。 これ以上の裸玉、存在するのでしょうか。
鳥本敦史:
42玉の裸玉「驚愕の曠野」の手順には驚嘆しました。 それが4手の逆算によって「51玉」という「完成形」に持っていったのは岡村さんの裸玉研究の蓄積があってこそ成しえたものだと思います。 裸玉は「発見」や「発掘」などと言われることがありますが、今回の51玉の「驚愕の曠野」、 そして42玉の「驚愕の曠野」は発見や発掘といった言葉は作者に対して失礼に当たり、「創作」という言葉こそ相応しいと思います。
森田進二:
裸玉史に残る名作。奇跡が起こってるんですね!
今川健一:
42王から51王への遷都発見は、まさに驚愕。 初手角打に対しての変化は、解答者を苦しめる。 この変化の総てを読みきるのは至難。 51王で出題したら、解答者は皆無とは言わないが、零に近いでしょうね。
「この素晴らしい作品に解答挑戦する人は少なく、それがダメでも、盤上に駒を並べて、その詰手順とその変化を追い鑑賞する人も少ないだろうな。 岡村さんが可哀想。」
この作品が、詰棋史上に輝き、数々の記録を残したことは、確かです。
 

 裸玉、2×2、3×3、角一色図式の4部門の記録を更新。 この超弩級の作品、是非並べて鑑賞していただきたい。

当選−おもちゃ箱スペシャルCD-ROM
 近藤真一、鳥本敦史、森田進二

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