JACKET WORKS 2005

  2005〜2006年に手掛けた装画や装丁などの仕事を、
  制作エピソードと共にご紹介しています。D=Design

  鏡の中は日曜日
  殊能将之/著 講談社刊 撮影:大滝吉春 D:北見隆
  装丁を依頼され、原稿を読まなくても、タイトルを見ただけでイメージが
  浮かぶ本があります。逆に内容に関係なく、いくら文章を読んでも、いま
  ひとつアイデアが浮かばない場合もあります。この本は前者のタイプで、
  編集者と打ち合わせしている最中に、表紙を思い付きました。文字のレイ
  アウトは、物語の舞台である螺旋状の館を意識して一回りさせてみました。
  もち論中身も全部ちゃんと読みました。面白いです。  

  子どもたちは夜と遊ぶ
   辻村深月/著 講談社刊 撮影:大滝吉春 D:北見隆
  この本もタイトルから思い浮かんだイメージで、立体を作りました。立体
  を撮影をして下さった大滝さんとは、20年来のおつきあいです。いつも
  実物以上に美しく撮影して下さって、感謝しております。編集の小泉さん
  から「何処かに物語に出てくる蝶を」というリクエストがあり、線画で2
  羽の蝶を銀の箔押しで入れました。おかげで静止がちな僕の作風に、動き
  が出たと思います。  
  セレクション歌人/全33册+1
   一ノ関忠人・他/著 邑書林/刊 D:間村俊一 2003年より刊行中
   完結すれば全34册の現在も刊行中のシリーズです。アイデアスケッチを
  描きとめたスケッチブックを、何冊かデザイナーの間村さんに預け、歌集
  ごとにふさわしい絵を使ってもらっています。どの絵が使われるか毎回ス
  リリングな気持ちと共に、楽しみにしています。時としてアイデアスケッ
  チは、本番以上に良い絵が生まれる事があります。それは無欲で白い紙に
  向っているからかもしれません。 
  CHILD OF LIGHT (CD)
   久保田恵子/唄 サイレントミュージック D:北見隆
  久保田さんのCDジャケットを担当させていただくのも2作目です。展示会用
  に作ったリトグラフ「律天使」を久保田さんの希望により、使用しました。
  サイレントミュージックは久保田さんの個人レーベルです。企業からのお誘
  いもあるようですが、久保田さんは今のところ、自主制作にこだわって、純
  度の高い音楽を創り続けています。  
  エリック・サティ覚え書
   秋山邦晴/著 青土社/刊 D:北見隆
  実はこの本は1990年に手掛けた、古い仕事なのですが、このたび新装版
  を出す事になり、いくつかデザイン上の手直しをする事になりました。製造
  中止となっている、表紙と見返しの紙を変更し、タイトル文字を豪華にも箔
  2色押しで行く事になりました。今見ると、他にも手直ししたくなる所もあ
  りますが、いろいろと思い出深い本でもあり、自分にとっては代表作の一冊
  だと思っています。

2006

  黒と茶の幻想
  恩田陸/著 講談社/刊 D:北見隆
  4年前の単行本の時は恩田さんから「絵は入れないで装丁してほしい。」と
  いう注文があり、絵描きとしては随分悩んだのを憶えています。今回の文
  庫本化にあたって、著者からの希望は「大人っぽい感じで。」との事でし
  た。また編集担当の秋元氏の発案により、各章扉にメフィスト掲載事に描
  いた挿絵を使う事になり、文庫用に若干手直しして6点使用しました。気
  に入った出来に仕上がりました。
  いつもの朝に
  今邑彩/著 集英社/刊 撮影:大滝吉春 D:北見隆
  一見一枚の絵のように見えますが、実は個々に描いた絵を切り抜いて、記
  念写真のように立てて撮影した作品です。白黒写真に見えますがモノクロ
  の絵をカラーで撮影しました。一枚絵とはまた違った空気感の作品になっ
  たのではないかと思っています。カバーを外した本文表紙では、それぞれ
  の人物の全身像を公開しています。またいつか何処かで、この技法を使っ
  てみたいと思っています。CG合成と思われたら心外だけど。
  いいかげんワールド
   眉村卓/著 出版芸術社/刊 D:北見隆
   今回は片袖と、表紙、そして背にわたって一枚の絵を描きました。ぐるっ
  と本誌を絵で全部巻いてしまう方法もあるのですが、裏表紙にはバーコード
  という障害物もあり、夜の絵だと、そこにぽっかり窓を開けなくてはなら
  ないので、変則的にこういう形にしてみました。「いいかげんワールド」
  というタイトルに助けられ、力まずに制作できた本です。9月に同社より
  もう一冊、「新・異世界分岐点」が刊行されました。
  ルームメイト
  
今邑彩/著 中央公論社/刊 D:北見隆
  1997年にC・ノベルズとして出版された本の文庫化です。ノベルズ版の時は、
  白地にキリヌキの絵が入っただけのシンプルな表紙でした。今回、その時の
  絵をそのまま再使用して,いわば本のリフォームをする事になりました。そこ
  で同じ絵を3枚連ねて構成し、物語の時間経過を表現してみました。良く見
  ると、窓の外の人物が微妙に変化しています。著者の今邑さんも気に入って
  下さったようです。  
  テルーと猫とベートーベン (CD)
  
谷山浩子/唄 ヤマハミュージックコミュニケーションズ
   D:石塚正則(half moon)
  「お昼寝宮お散歩宮」以来、17年ぶりに谷山浩子さんのCDジャケットを担当
  しました。メインの立体作品と、過去の立体作品の資料等をデザイナ−にお
  預けし、自由に構成してもらいました。デザイナーの石塚さんも大変丁寧な
  方で、気持ち良く納得行く仕事が出来ました。個人的には最後のちょっと無
  常感漂う曲が、面白かったです。  
TOP PROFILE JACKET WORKS 2007-08 EXHIBITION2007-08 2011-2012