「広上淳一が挑む運命、黒木雪音との華麗な協演」と題するオ−ケストラ・
アンサンブル金沢(OEK)第503回定期公演PH。珍しいリストのピアノ協奏曲及びベートーヴェン:交響曲第3番《運命》
に期待して、石川県立音楽堂コンサートホールへ向かった。
プレトーク、ロビー・コンサートは無し。
コンサート1曲目は、モーツァルト:交響曲第25番。OEK弦楽5部は8-6-6-5-4-3の対向配置。Hr2、Tp1。第1楽章Allegro con brioはソ
ナ形式、タターンタタターと開始。モーツァルトはタターンタと二拍目をfとするシンコペーションを取り入れた習作。中間部
のTpによる演奏は、半音ずれているような違和感。しかし、カール・ベーム盤で確認すると問題なし。この原因はTpがfで演奏
したためのようで、pで演奏すべきでなかったのか。第2楽章Andanteは対話的表現が特徴。優美な雰囲気を醸し出す。第3楽章
Menuetto - Trioは暗い情感を漂わせた音楽。Trioでは木管楽器のみによる一瞬の明るさが蘇る。第4楽章Allegroはうごめく様な
タンタンタータで始まるソナタ形式。二つの主題に終始し、さりげなく終了。
コンサート2曲目は、余り演奏会で取り上げられない、初演はリストの演奏、ベルリオ−ズの指揮で演奏されたというリスト:ピアノ協奏
曲第1番。Hr2、Tp2、Tp3。ソリストの黒木雪音さんは真紅のドレスで登場。第1楽章Allegro maestoso. Tempo ginstoは、ターン
タタッタ タタタが主題。リストと言えばテクニシャンをイメージするのだが、ヤングさんとのDuoもあり、黒木雪音さんは力強
く華麗であり、しかも繊細な表情も披露。第2楽章Quasi adagioは、カデンツアではないようだが、Pfソロが陰影に富んだメロディ
を奏でる。第3楽章Allegretto vivace - Allegro animatoは、飛び跳ねているような曲想。Tp2、Tb3によるfffも含みながらフィ
ナーレへと進行し、attaccaで第4楽章はAllegro marziale animato - Presto。タタタツタターで開始。続いて黒木雪音
さんのPfが先行、オーケストラと一体となり華麗に終了。初めて聞いたリストのピア協奏曲は秀逸であった。アンコールはカプスー
チン:8つの演奏会用エチュードOp. 40。短い下絵的習作であった。
休憩を挟んで3曲目はベートーヴェン:交響曲第5番《運命》。Hr3、Tp2、Tb3。第1楽章はAllegro con brio。イントロのテーマ
につき、プログラムではベート−ヴェンの弟子ツェルニーによれば、野鳥のキアオジの鳴き声から着想したものだという説が紹介さ
れている。このテーマについて昨日アバド盤のさりげないイントロを聞いたので、マエストロ・広上淳一はどうかと興味津々であっ
たが、正に重厚で、野鳥のキアオジの鳴き声からの着想より「運命の動機」に相応しいと感じられたの私だけではなさそうだ。
さて、Hrのファンファーレ、Obソロ、Flソロと緊張感あふれる楽想が展開され終了。第2楽章Andante con motoは、タラランタラ
ララと動きを付けた変奏曲形式。第3楽章Allegroは、プログラムにある予感に満ちた低絃に導かれ、Hrが「運命の動機」に基づく
主題を演奏。Va、Vc、Cbによるフーガ風の曲想も効果的。第4楽章Allegro - Prestoは勝利の音楽。ブラームの交響曲第1番に影
響を与えたと思われるまさしく「運命を切り開き、勝利を勝ち取った」勝利の音楽だ。何度も念を押して堂々と終了。マエストロ・
広上渾身の楽章であった。アンコ−ルは、モーツァルト:セレナーデ第7番《ハフナー》第3楽章メヌエット。1曲目のモーツァルト
の交響曲よりモーツァルト的な清楚で昔のOEKを思わせるアンコール曲。OEKの変遷を感じさせる名曲であった。
さて、セレナーデは良かったが、2曲目のフィルハーモニー級ベートヴェンは良いとしても1曲目の25番は力みすぎ。音楽堂
コンサートホールの音響の素晴らしさを考慮するならば人数を減らす等の室内楽的配慮が必要ではなかったか。しかし、OEKの進化に
は耳が離せない。
Last updated on Sep. 18, 2026.