「マルティバーシティー」
鈴木崇弘氏
鈴木 僕らは、新しい試みとして、「マルティバーシティー」というのを作ろうと思ってるんです。
すでに大学同士がいろいろと連携を始めているのですが、そういう動きの中で成功しているのは、共同利用施設を持っているところなんですね。
だから、まずサテライトではない共同利用施設をつくって、単位の互換なんかもできるという場所もあって、しかもeラーニングを使ってどこにいても勉強ができる、時空を超える大学です。そこに来てもいいし、来なくてもいい、社会人のニーズに合っている、できれば海外の大学も呼んで来たいと思っています。複数の大学と専門学校で、より専門教育にシフトした、社会人をメインターゲットにした仕組みにしようと思っています。
今までの大学というのは、早稲田に入れば早稲田定食を食べさせられて、東大に入ると東大定食を食べさせられていたわけですが、もうそういう時代ではないでしょう。学生が望めば、自分もキャリアディベロップメントに基づいたメニューが食べられる。定食屋からカフェテリアへということなんです。それを提供できる教育システムというのはおそらくまだ日本にはないでしょう。それが「マルティバーシティー」なんです。
運営者 どのくらいでできるんですか。
鈴木 建物を造り変えなければななりませんので、2、3年くらいかかるでしょう。従来大学などとは必ずしも関係のなかった情報産業の企業にも入ってもらって、そこで作ったコンテンツを利用してもらえないかなと考えています。
運営者 カフェテリアに並べる料理は、どういうものがいいと思ってるんですか。
鈴木 各大学も持っている講座だけではなくて、他の大学の講座を組み合わせて新しいコースをつくったり、最終的にはディグリーを発行できるようにして、生徒はここで勉強すれば、参加する各大学とそのマルティバーシティーの両方からディグリーがとれ、ダブルディグリーがとれるようにしたいと思っています。
運営者 おもしろいですねえ。
そういうまったく新しい形の教育機関を作るということを、もっといろんな人が言ったりやったりしてもおかしくないわけじゃないですか。本当に大学が「知」を作る場所なのであるならば、そのような動きが澎湃として全国から起こらなければおかしいのではないでしょうか。
鈴木 私は、大学にずっといた人間ではないですからね。ただ、さっきの話は、もともとのアイデアの基礎は私の所属する組織の機構長が作ったものを、僕がアレンジ、発展しているんです。
でも、大学の中では新しいことをやろうとすると、つぶそうとする圧力もかなりありますからね。
運営者 企業では、変革のマネジメントという分野は、ひと通り流行が終わった感じがするんですけどね。