■ プラズマ表示器 SPERRY SP-336 6桁デジタル時計の製作 ■


 ネットで知りあった方から、珍しいプラズマ表示器「SPERRY SP-336」を譲って頂きました。
 1980年頃に、ベックマン製の同タイプの表示器で時計を作って以来、まったく目にすることもなかったのすが、実物を見てとても懐かしく思いました。
 パッケージに記載された製造日が、1972年製となっているそうで、初期の製品が今でも動作することにも驚きです。
 ニキシー管と同じく200V近い高電圧が必要で、製作に手間はかかりますが、とても珍しいデバイスなので、時計として復活させてみたいと思います。



回路の解説
 
1.電源回路

 
 ・12VのACアダプターから電源を供給します。
 ・マイコン回路へは、3端子レギュレータで5Vを供給します。
 
 ・プラズマ表示器用の高電圧は、DC-DCコンバータIC、「NJM2360A」で発生させます。
 ・出力電圧は、1KΩの半固定抵抗器で165V〜215Vに可変できるので、180V程度に合わせます。
  (DC-DCコンバータ回路の詳細は、ATmega88+ニキシー管 デジタル時計を参照して下さい)

2.AVRとクロック
 
 ・AVRマイコンは、ATmega88-20PUを使用し、動作クロックは、1MHzの内蔵RC発振器を使用
  しています。
 ・時計用32.768kHzクリスタルをTimer2の発振回路に使用し、時刻をカウントする1Hzを得ています。
 ・20PFのトリマーコンデンサで、1日の誤差を見ながら日差を調整します。

3.プラズマ表示器のドライブ回路
 
 ・「SP-336」は、1つのデバイスに2桁の表示が入っていますが、スタティック表示用の設計なので、
  コモンのアノードが1つしかありません。
 ・よって、ダイナミック点灯をするにしても、カソード側のトランジスタが、16個も必要になります。
  (左桁のD.P(小数点)は使用しないので、15個のトランジスタにしています)
 
 ・トランジスタはオープンコレクタ制御のため、点灯しないセグメントをアノード化させないことと、
  漏れ電流により薄く発光するのを防ぐため、アノード電圧の約半分(90V)でプリバイアス回路を
  設けてあります。
 
 ・「Keep Alive Cathode」電極は、常時点灯しておくことで、ダイナミック点灯間隔を遅くすることが
  できます。(点灯しなければ3mS間隔まで、点灯時は10mS間隔)
 
 ・アノードの制御は、高耐圧フォトカプラ「TLP627」を3個使用しています。

4.表示の輝度調整(ディマー)回路
 
 ・周囲の明るさを感知するために、CDSを使用しています。
 ・CDS回路の電圧値をA/D変換し、表示ドライブ信号のパルス幅を、Timer1のPWM動作で
  調整しています。
  (PWM動作では、ブランキング制御も兼用しています)
 ・CDSに並列接続してある半固定抵抗器で、暗さに対する感度調整が行えます。
 
 ・自動輝度調整(ディマー)が不要な場合は、CDSのみを取り外すことで、半固定抵抗器が
  輝度設定に使用できるようになります。

5.操作スイッチ回路
 
 ・AVRマイコンのポートを、カソード制御用に多数使用するため、スイッチ用のポートが1つしか
  残りませんでした。 よって、A/D変換式のスイッチ回路を使用しました。
 ・3つのスイッチで、2個同時押しも含めて5通りのパターンを使用するので、抵抗を並列接続にし、
  スイッチの状態による電圧の変化を、A/Dコンバーターで検出しています。

6.SP-336のソケット
 

・SP-336の端子が、2.54mmメッシュに乗っていない上にピッチが狭く、
 片面基板ではダイナミック点灯用の並列接続ができないので、
 SP-336用の2.54mmピッチ変換基板を作りました。
 
・ソケットは、ICソケットを分解した物を使用し、変換基板にピンヘッダを
 バラしたピンを取り付けてあります。



回 路 図  GIF版 SP336ClkCir.gif (270KB)

部品配置図  GIF版 SP336ClkPcb.gif (176KB)
アートワーク  GIF版 SP336ClkAW.gif (284KB)
 
   注意! この図面を使用した、いかなる損害にも責任を負いません。

プログラム  テキスト形式 ソースファイル  SP336Clk101.TXT (36KB)
 BASCOM-AVR用 ソースファイル  SP336Clk101.bas (36KB)
 インテルHEX形式 オブジェクトファイル  SP336CLK101.HEX (10KB)
 
 注意! 著作権は放棄しておりませんので、販売目的での使用は絶対にしないで下さい。




 
ケース 上面

 
 ケース 後面

 
 表示器の取付

 
プリント基板

 
ピッチ変換基板

 
表示器 基板

 
表示器基板の組立

 
基板 部品面

 
基板 ハンダ面

 
基板 後面

 
基板 右側面


AVRマイコン ATmega88の、ヒューズ ビット書き換え
 
今回の製作では、ヒューズ ビットを工場出荷状態のまま使用しますので、変更の必要はありません。



操作方法
 
1.電源投入
 
 ・電源が投入されると、左から4桁に現在のプログラム・バージョンが、点滅表示されます。
 ・[SW1] を押すと、時刻設定がすべて0の状態で、時計動作に入ります。

 
2.表示の切り換え操作
 
 ・スイッチの操作により、下記のように表示が切り替わります。
 
スイッチ番号 表示内容 (同一スイッチで左右の動作が切り替わります)
SW1 表示ON 表示OFF (D.P.(小数点)のみが点滅します)
SW2 [時・分・秒] 8秒間 [時分秒] 表示 + 2秒間 [年月日] 表示
SW3 [年・月・日]  

 ・[SW1] と [SW2] を同時に押すことで、時間表示を12時間制と24時間制に切り換えることが
  できます。
 ・この設定は、内蔵EEPROMに記憶されます。

 
3.時刻設定モード
 
 ・[SW1] と [SW3] を同時に押すことで、時刻設定モードに入ります。
  (年は、西暦2000年から2099年までの範囲で対応しています)
 
 ・時刻設定モードに入ると、下記の順に設定できる項目が点滅表示されます。
   (下位2桁) → 月 → 日 → 時 → 分 → 終了
  
 ・[SW2] で、設定値が増加し、1秒以上押し続けると早送りになります。
 ・[SW3] で、設定値が減少し、1秒以上押し続けると早送りになります。
  
 ・[SW1] を押すと、次の項目に移ります。
 
 ・の設定が終わると、を00にして通常の時刻表示に戻りますので、秒の単位まで合わせる
  場合には、00秒になった後に [SW1] を押します。



○パーツの参考資料
 ・プリント基板  「サンハヤト」 感光基板 43K ガラスコンポジット 片面 1.0x100x150mm
 ・アクリルケース  「無印良品」 アクリルポケットティシューケース
 ・ACアダプター  「秋月電子通商」 超小型スイッチングACアダプタ 12V 1A



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