■ プリント基板によるデジタル時計の製作 ■


AVRマイコン ATmega88 + 蛍光表示管(VFD) デジタル時計

  今回の製作は、AVR「ATmega88」のプログラムに、7セグメント表示モードも搭載して
 あるので、その機能を検証するため、蛍光表示管「DG10F1」を使用したプリント基板を
 作製しました。
 
  「オリジナル デジタル時計」の製作ページで使用した電源部は、推奨回路のままなので、
 部品点数が多くなっていましたが、今回は不要な部品を省きました。

  蛍光表示管もニキシー管と同様に、管の型式でピン配置が随分違うので、基板の互換性
 を持たせるのはニキシー管以上に難しく、フィラメントとグリッドの位置が同じ管のみの対応
 となっています。

回路の概要
 
1.マイコン部

 
 ・AVRマイコンは、必要最小限のポート数と動作クロックに
  より、ATmega88-20を選定しました。
 
 ・動作クロックは、クロックをカウントして1秒を得るため、12.8MHz高精度クリスタルモジュールを
  使用してあります。
 
 ・AVRのプログラムは、「オリジナルデジタル時計」のページで作ったAT90S8535用のソースを、
  ポート等の修正をして移植しました。

2.ドライブ回路
 
 ・TD62783APは、8回路 非反転型トランジスタアレイで、入力のHレベル(5V)電圧に対して、
  出力は最大50Vまでの電圧を制御できるソース・ドライバーです。
     TD62783AP データシート


蛍光表示管(VFD) DG10F1 規格
項     目 記号 最大定格 電気的特性 単 位
最小 標準 最大
フィラメント電圧 Ef 2.0 1.35 1.50 1.65 V(AC)
グリッド電圧 Eg 40 - 24 30 V(p-p)
プレート電圧 Ep 40 - 24 30 V(DC)
グリッド消去電圧(カットオフ) Egco - - -8 - V(DC)
プレート消去電圧(カットオフ) Epco - - 0 - V(DC)
パルス巾 Tp - 10 40 800 μs
フィラメント電流
   (パルス)
Ef=1.5V(AC)
Eg=0V(p-p)
Ep=0V(DC
)
If - 22 24 26 mA(AC)
グリッド電流
   (パルス)
Ef=1.5V(AC)
Eg=24V(p-p)
Ep=24V(DC
)
Ig - - 6.5 11.0 mA(p-p)
プレート電流
   (パルス)
Ef=1.5V(AC)
Eg=24V(p-p)
Ep=24V(DC
)
Ip - - 3.0 4.5 mA(p-p)


3.電源部
 


基本回路
・蛍光表示管はマイナスアースで設計されることが
 多く、左の図が基本的な回路になります。
 
・フィラメント(ヒーター)には、1.5Vの交流電源が
 接続されます。
・直流でも動作するのですが、フィラメントの両端で
 電位差が起き、セグメントによって明るさの違い
 ができてしまう場合があります。
 
・グリッドとセグメント(プレート)電圧は、フィラメント
 のいずれか片側に対して-12V〜-30Vの電圧を
 かけます。
 
・表示管によっては、グリッド及びセグメントを制御
 するトランジスタがオフになっても、電子の流れが
 すぐには止まらない物があり、オフになったはずの
 セグメントが薄く点灯する現象が出てしまいます。
 
・これを防止するため、トランジスタがオフになった
 際に、グリッド及びセグメントから、フィラメントへ
 向けて逆電圧をかけ、電子の流れを完全に止め
 る必要があります。
・表示管によって規定されたカットオフ電圧値に
 合わせて、抵抗によりフラメント電位より約10V
 ほど低い負電圧をかけ、完全に消灯させます。



製作回路
 ・実際の製作では、トランスを使用せず、12Vの
  単電源で動作させたいので、左のような回路
  になっています。
 
 ・フィラメント電源は直流を使用し、表示管2本な
  いし3本を直列に接続して電圧をかけるため、
  桁によっては多少の輝度の違いが現れます。
 
 ・カットオフ電圧を、ツェナーダイオードで作るの
  は定番なのですが、この回路では、グリッドと
  プレート電流だけではなく、フィラメント電流も
  ツェナーダイオードに流れるので、電流容量の
  大きいダイオードを使用する必要があります。
 
 ・DC-DCコンバータ回路には、CDSにより周囲の
  明るさに合わせて表示管電圧が変化する、
  ディマー回路が組み込んであります。


回 路 図  GIF版 AM88VCir.gif (273KB)  PDF版 AM88VCir.pdf (464KB)

部品配置図  GIF版 AM88VPcb.gif (289KB)
アートワーク  GIF版 AM88VAW.gif  (241KB)
   注意! この図面を使用した、いかなる損害にも責任を負いません。 

プログラム  テキスト形式 ソースファイル  AM88C204.txt (28KB)
 BASCOM-AVR用 ソースファイル  Am88C204.bas (28KB)
 インテルHEX形式 オブジェクトファイル  AM88C204.HEX (11KB)
 
注意! 著作権は放棄しておりませんので、販売や配布目的での使用は絶対にしないで下さい。



後面

側面

プリント基板

基板 正面

基板 右側面

基板 上面

基板 後面

基板 左側面

基板 ハンダ面
↑ 画像をクリックすると、拡大します。 ↑


プリント基板
 ・プリント基板は、主基板(106.7×76.2mm)と、AM/PM用LED基板(10.1×76.2mm)の2枚になって
  おりますが、収納するケースにより、表示管部分のみを切り離して取り付けることも可能な様に
  しました。
 
 ・AM/PM用LED基板は、蛍光表示管の高さに合わせて切断し、取り付けます。
 
 ・グリッド結線6本、AM・PM結線3本とフィラメント結線2本は、パターンにより接続されていますが、
  セグメントの9本は、管のピン配置に合わせて変換表により配線が必要です。
 
 ・フィラメント電圧切換用ジャンパー線は、蛍光表示管のフィラメント電圧規格により、2本1組または
  3本1組の位置に取付ます。
 
 ・AVRのPB0端子(14Pin)は、表示デバイスが7セグメントタイプかBCDタイプかを選択する端子で、
  開放(オープン)で、7セグメントモードになると同時に、「4」の数字用のセグメント(h)端子に
  変わります。


AVRマイコン ATmega88の、ヒューズ ビット書き換え
 
AVR ATmega88のシステム クロックは、工場出荷時に内蔵RC発振器の8MHzで、1/8前置分周器がONに設定されているので、外部のクリスタル オシレータを使用するには、AVRのヒューズ ビットを書き換える必要があります。

下記ページの書き換え方法 「6.」を、以下の様に変更して、ヒューズ ビットの書き換えを行います。

    ヒューズ ビット書き換え

 6.[ FusebitC ] の右欄 [ 0:Divide Clock by 8 Enabled ] をクリックすると、右側にプルダウン
   メニューが現れますから、 [ 1:Divide Clock by 8 Disabled ] を選択します。
 
   [ FusebitKLA987 ] の右欄 [ 100010: --- [CKSEL=0010 SUT=10];default value ] を
   クリックすると、右側にプルダウンメニューが現れますから、
   [ 100000: --- [CKSEL=0000 SUT=10] ] を選択します。

「AVRWRT」 ライターの場合は、AWRTf_AM88VFD.gif



操作方法
1.電源投入
 
  ・電源が入ると、現在のプログラムバージョンが、0.2秒周期で点滅表示されます。
  ・「Time Set A」ボタンを押すと、「2000年1月1日 AM12:00:00」からカウントが始まります。
  ・表示桁数は「6桁表示」、表示モードは「通常」になります。

2.スキャンスピード
 
  ・「Time Set A」ボタンを押しながら電源を投入すると、スキャンスピード設定モードに入ります。
  ・初期状態では、「0.075.」が表示され、下位2桁が点滅します。
   (この状態で、スキャンスピードは75Hzです)
 
  ・「Time Set B」ボタンを押すと、「0.050.〜1.234.」の範囲で数値が変化しますが、増加する値は
   AVR内部タイマーの設定値から計算しているため、整数の一定値ではありません。
  ・表示と共に実際のスキャンスピードも変化するので、表示のちらつきが無く、隣接桁にゴーストが
   出ないように設定値を決めます。
 
  ・設定値が決まったら、「Time Set A」ボタンを押すと、プログラムバージョンの表示に戻ります。
  ・設定値は、AVR内部のEEPROMに記憶されますので、電源を落としても再設定は不要です。

3.表示切換
 
 
 ・「Time Set A」と「Time Set B」ボタンを押すことにより、下記の様に表示が切り替わります。
6桁モード時
通   常 時.分.秒 表示
Time Set A ボタン 月 日   表示
Time Set B ボタン 年    表示
4桁モード時
通   常 時.分 表示
Time Set A ボタン 月 日 表示
Time Set B ボタン 分.秒 表示

4.時刻設定
 
  ・「Time Set A」と「Time Set B」ボタンを同時に3秒以上押すと、時刻設定モードに入ります。
    (年は、西暦2000年から2099年までの範囲で対応しています)
  ・設定モードに入ると、下記の順に設定できる項目が点滅表示されます。
     ( 6桁/4桁選択 → 表示モード → 年 → 月 → 日 → 時 → 分 → 終了 )
  ・「Time Set B」ボタンで、設定値が増加し、1秒以上押し続けると早送りになります。
  ・「Time Set A」ボタンを押すと、次の項目に移ります。
 
  ・「6桁/4桁選択」時は、左側に「6.4.」が表示され、「Time Set B」ボタンを押すと右側の表示が
   「6」と「4」で交互に変わります。
  ・「表示モード」時は、左側に「8.2.」が表示され、「Time Set B」ボタンを押すと右側の表示が
   「00」と「82」で交互に変わります。
    「00」→ 通常表示。
    「82」→ 秒の下1桁が、0〜7の8秒間は時間を表示し、8〜9の2秒間は、月日を表示します。
   ・この二つの設定値は、AVR内部のEEPROMに記憶されますので、電源を落としても前回の設定
   が表示されます。
 
  ・分の設定が終わると、秒を00にして通常の時刻表示に戻りますので、秒の単位まで合わせる
   場合には、00秒になったと同時に「Time Set A」ボタンを押します。

5.12時間/24時間表示の切換
 
  ・スライドスイッチを切り換えることにより、いつでも選択が可能です。

6.日差の微調整
 

  ・水晶発振子(Xtal)の上面にある穴の中に、微調整用のボリュームがあり、回転させると180度を
   境に、進むまたは遅れる(位置は不確定)ので、1日の誤差を見ながら、左右どちらかに少しずつ
   回転を繰り返して日差を修正します。


○パーツの参考資料
 ・基準信号 水晶発振器  「秋月電子通商」 超高精度クリスタルモジュール(12.8MHz±1ppm)
 ・基板  「サンハヤト」 感光基板 43K ガラスコンポジット 片面 1.0x100x150mm
 ・ケース  「ダイソー」 コレクションボックス ミニ 169x85x100mm


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