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Thrilling Wonder(1954.Winter)
Thrilling Wonder


拿捕宇宙船(プライズ シップ) Prize Ship / フィリップKディック 訳:Katz-Katzのあらすじ
初出 Thrilling Wonder Stories(1954.Winter) 原稿到着1951 短編 第19作


トーマス将軍は無言で戦略ボードを見た。ガニメデを囲む鉄の輪、それが奴らの防衛網!
そこへの攻撃が始まったのだ!その成果は?

しかし、時が来ても、その線は消えなかった。攻撃は失敗だ。彼らの要求を飲まなくてはいけないのか?


宇宙クレイドルは、ガニメデ付近にある、深宇宙行き宇宙船の発射場である。
我々は、そこからプロクシマ植民地へ、物資を送っている。

プロクシマ植民地は、自立できていない。地球の支援なしでは、1ヶ月と持たない。
また深宇宙船は、地球人の技術力では、宇宙クレイドルを使わなければ、発射できない。

しかし、その重要な拠点が制圧されたのだ!

ガニメデ人は太陽系の貨物輸送で利益をあげている人種だ。
しかし数週間前、宇宙クレイドルを襲い、地球と火星の防衛隊を殺害・拘束し、宇宙クレイドルは彼らのものだと宣言した。
戦争が起きたが、鉄の輪に囲まれ、宇宙クレイドルを"人質"にした彼らには手が撃てなかった。

「もし他の人類が、宇宙クレイドルを使いたいなら、輸送荷物金額の20%がガニメデ皇帝の取り分になる」
それが彼らの主張だった。そして、ガニメデ人はH爆弾をクレイドルに配置した。宣言した。
 クレイドルを奪取しようとすると、H爆弾は起動し、プロクシマの植民地は飢え死ぬ。

ジェームズ司令官はバセット博士に聞いた。
「小型船で、深宇宙旅行はできないのか?」
「系内船の10倍のサイズの一級船でないと無理です」

「では、一級船をクレイドルなしで発射させる事は?」
「不可能です」
「月に新たなクレイドルを作る計画は?」
「最短で1ヶ月。しかしプロキシマ植民地は20日も持ちません」
妙手はなかった。


上院では、降伏するか、どうかの会議が開かれていた。
「ガニメデの要求には、他の惑星との同等の権利主張も含まれています」
「ガニメデの奴らめ、九惑星や月と同格になるつもりだ。クソ!」

「司令官、ガニメデが使っているのは、どんな船だ。我々の船とはどこが違う?」
「誰も詳しい事は知らない」
「彼らは、どうやって船を打ち上げている?」
「大地からさ。普通だよ」
「彼等の船は深宇宙にも進んでいるが、宇宙クレイドルを使っている訳ではない。その秘密さえ判れば!」
「しかし、今更、彼らにその秘密を聞く訳にもいかない」

上院議長は言った。
「では票決を始めよう。水星は?」
「水星は、敵の提案の受け入れに賛成する」
「金星は?...」

その時、カーマイケル司令官にメモが届けられた。それを読んだ司令官は、
「ちょっと待ってくれ!」上院議長に手を上げた。
「どうした?今は投票中だ」
「私は第一線からの連絡を受け取った。火星の捜査官が、ガニメデの研究所を火星と木星の
   隕石帯の中に見つけ、研究品を捕捉した。その中には、ガニメデ船もある。新品だ」
「おお!奴らの船の秘密が判れば!」

票決は、実験が終わるまで、一時中止される事になった。


「動力システムは何なのだ?」
「全く判りませんでした。ジェットエンジンはただの着陸用です。もしかすると重力ドライブ船かも」
「しかし、すぐに実験しなくては」
「とりあえず、制御盤の文字は翻訳しました。MELがスタート。liwは100、nesiは0です。
   しかし単位は判りません。それに詳しい操縦法は一切不明、航行は大変危険です!」

「我々には時間はない!すぐに実験を開始するぞ。クルーは四人は必要だ。一人は私だが...」
カーマイケル司令官は言った。

それを聞いていた。友人、部下が次々集まった。トーマス将軍、バセット博士、シラー少佐。メンバーが揃った。
「司令官!危険は覚悟の上です!行きましょう!」


「準備は良いぞ」
カーマイケル司令官は、MELと書かれたスイッチに手を伸ばした。

「さあ、行くぞ!」
彼らは宇宙へ消えて行った。


球型船は回転し、飛んだ。
外には広大な荒れた海。見渡せる限り、無限に広がる青い水。凄まじく転がり揺れる。

ようやく、安定した。
「司令官、我々はどこにいるんでしょう?」
「どこかの惑星だ」
トーマス将軍は停止ロケットを点けた。球は水平になった。大地を見つけ、着陸した。


「ここはどこだ?」
「火星大送信機の電波が受信できません。ですから太陽系内では、ないはずです」
「それに水平線から見ると、地球より小さな惑星と思われるな」
「大気に毒は含まれていません」
「よし、着陸だ!調べるぞ!」

「平原には小さな草が生えている」
四人は進み、低い丘へ上った。安全そうな惑星だった。

「ちょっと、待ってくれ」バセット博士は呼んだ。彼はまだ丘の下にいた。「何か靴に入った」
「すぐに追いつけ」
三人は進んだ。博士を一人残し。博士は濡れた大地に座った。文句を言いながら。靴の紐を緩めた。

周りの空気は暖かかった。博士は息をついた。ゆったりした。すると。
15cmもない小さい人が茂みから出てきた。そして、矢を撃った。

バセット博士は見下ろした。矢、小さな木片は宇宙服の袖に刺さった。博士は口をパクパクさせ、驚いた。
二番目の矢は、ヘルメットの透明シールドをかすめた。そして、3本、4本。
小人は仲間を集めた。一人は小さい馬に乗っていた。

「助けてくれえ!」
「どうした」トーマス将軍の声がイアフォンから聞こえた「博士、大丈夫か?」
「小人が私を矢で撃って来ました!」
「本当か!」
「た、沢山います!」
「博士、意識は大丈夫だろうな?」
「将軍!助けて下さい!」

トーマス将軍とシラー少佐が尾根の頂点に現われた。「バセット博士!どこだ?」
彼らは止まり、立ちすくんだ。シラー少佐はボリス銃を構えた。トーマス将軍は口を押さえた。
「ありえない!」彼は平地を見下ろした。

「小人だ。弓、矢!」
突然、小人は振り向き、逃げ出した。走り去った。歩いて、馬に乗って、茂みを抜け、反対側へ。
「逃げるぞ!」シラー少佐が言った。四人は小人を追った。
「彼らの服装を見たか?」バセットは言った。「まるで絵本で読んだ、ロビンフッドだ。小さい帽子に靴」
「おとぎ話じゃないか?」トーマス将軍は顎を撫でた。


小さな影が逃げ込んだのは、長い傾斜の下の小さな模型の町だった。
跳ね橋を通り。橋は上がった。殆ど見えない程細い紐で、閉まった。
「何て事だ!」

都市は壁で覆われ、灰色の石で。堀で囲まれていた。
沢山の尖塔が立ち並ぶ、建物の上は、とんがり屋根や切妻屋根の集合。

やがて、歓声が上がり、都市の壁に鎧を着た兵士が現れた。そして堀を渡り、突撃して来た。

「見ろ!」トーマス将軍は叫んだ。「来るぞ!」
シラー少佐は銃を上げた。「おお!見ろ!」

馬に乗った鎧兵の大群が吊橋を渡ってきた。地面にあふれた。宇宙服の4人にまっすぐ向かって来た。
「彼らは真剣だ。足元に気をつける」彼はヘルメットをしっかり閉めた。
初めの騎士軍が、先頭にいたトーマス将軍に襲い掛かった。

シラー少佐はにやにや笑った。「これを使いましょうよ。ボリス銃で一発でしょ?」
「駄目だ、これは命令だ」

槍を下げた馬の大群が押し寄せ、トーマス将軍は逆に逃げた。
「奴等はタフだぞ。銃が使えないなら、逃げるしかない!」

大量の矢が降り注ぐ。
「信じられん。俺達は催眠状態にされている。心を操られている。真実じゃないんだ」
「言いたい事はわかるが。そうじゃない。どこかに合理的な説明はある。きっと」
バセット博士は呟く。「おとぎ話の世界にいる!」

「船に戻るぞ!」


四人が船に戻ると、小人達は跡を追ってきた。そして船の横に対峙した。
足場を作ると、小人は塔を建て始めた。

数百人が働いていた。騎士、弓手、女子供も。馬や牛が年から車で資材を引いていた。

「もう充分だ。地球へ戻ろう」
「いや、もう一ついくべき場所がある。行かなくてはならない」 バセット博士が言った。
「どこへ?」
「これは、まるで、御伽噺だ。小人の国が、ここにあるなら...巨人の国もあるはずだ」
「どう言う意味だ?」 「私の仮説理論を証明して欲しい」

トーマス将軍は中央の大きなメーターを触った。
「目盛りはliw=百まである。初めは幾つだか覚えているか?」
「もちろん。nesi=ゼロだ、そこが地球。」

「nesiが初期状態だな。じゃあ、ゼロで止めずに、反対側の−100まで行くか?」
「よし。行こう!」


船は飛んだ。
船は激しく揺れ、ぼんやりしたあいまいな形の海に消えた。

やがて、巨大な暗い影が彼らの周りを囲う。

船はどんどん落下して行く。すべてが拡散し、形を失った。
すべての形は流れる影になり、巨大で輪郭がぼやけた。

「し、司令官!急いで見て下さい!」シラー少佐がつぶやいた。
カーマイケル司令官は窓を見た。
そこは巨大な世界だった。
そびえたつ形は彼らを追い越し、胴体は巨大すぎて、彼らには一部しか見えない。
他の影もある。しかし巨大過ぎて、ぼんやりし、認識できない。

球船の周りはうなり、深い空気の流れが音となる、まるで奇怪な海の様だった。
「思った通りだった!仮説は認められた!」バセット博士が言った。
「確かめられたら、早く帰るぞ!ここは危険だ!」

その時、何か巨大なものが近づいた。おそらく、何者かの手だ!
彼らの方に伸びた。その手は大き過ぎ、光を遮り、暗くなった。そして見えた!
指、肌、その毛穴、爪、何本もの毛。

船は振るえ、手が閉じられ、つかまれそうになる。
「早くしろ!出発だ!」
船は潰されそうになった!
「早く!!」

突然、消えた。圧力も消えた。


窓の向こうには何も無い。
ダイヤルが動き、ゼロ=nesiまで上がった。元の状態へ、元の地球へ。
バセット博士は安堵のため息を上げた。ヘルメットを脱ぎ、額を拭った。
「手が...」シラー少佐は言った。「伸びて来た。我々の方に。あれはどこだ?教えてくれ」

カーマイケル司令官はうなった。
「こんな話は、誰にも言えないな。言っても誰も信じないだろう」
「しかしこれは、存在していたんだ。ワンダーランド、オズの国、ペルシダー、ファンタジーの国だ!」
「ファンタジーの国へ運ぶ船か...」

トーマス将軍は手を、司令官の手に乗せた。

「大丈夫だよ。我々は、ただ船は動かなかったと言えば良いんだ」
「判った」
ヴィドスクリーンはパチパチと音を立て始めた。画面が戻って来た。
「わかった。我々は何も言わないぞ。ただ4人だけが知っていれば良い」

「カーマイケル司令官、聞こえるか?大丈夫か?どこかに着いたか?火星からは報告がなかった。乗組員は無事か?」

バセットは窓から外を見た。
「我々は都市の1マイル上空です。残念ながら、地球の都市です。現在、降下中です」

バセットが言った。
「いつか、戦争が終わったら、ガニメデ人に聞いてみたいこの船の事を。そして全ての話を知りたい」

トーマス将軍は言った。
「そのチャンスは来るだろう。しかし、戦争に勝てる見込みは消えたな」


戻った彼らは、航行の失敗を説明した。その所に、連絡が来た。
「ガニメデ人が、研究所と備品は彼らのものだと主張しています」
「わかった。この船は不要だ。彼らに返そう」


ガニメデ人が、やって来た。回収用の巨大船を連れて。
カーマイケルはガニメデ人に言った。
「君達の宇宙船だ。持って行ってくれ」


「では、"時間船"を返してもらおう」
トーマス将軍とカーマイケルは、びくっとなった。 「何だって?」

ガニメデ人は言った。
「これは我々の時間船だ」
彼らは、船を輸送船に乗せる所だった。

バセット博士が、ガニメデ人に聞いた。
「これは、時間船なのか?そんな馬鹿な?」
「そうです。それが最も相応しい答えです」
「この球が、時間を渡る?空間ではなく?タイムマシン?過去や未来へ?」
「その通りです」

「ではダイヤルのnesiは現在、大きくなると過去、小さくなると未来」
「はい」

「しかし、ひとつ質問が、ひとつだけです。人が過去に戻ると、世界は広がっている」

ガニメデ人は反応した。
「では船を試してみたのですか?」
トーマス将軍はうなづいた。

「貴方が過去にいったら、すべては小さくなっていませんでしたか?」
「そうです。宇宙が広がっているのです。そして未来。すべてが拡大していた」

「はい」ガニメデ人の微笑が広がった。
「驚いたでしょ。違いますか?あなたの世界が小さくなって、住んでいる人を見て。
   しかし、大きさとは相対的なものです。未来に行った時も同じです」

ガニメデ人は残念そうに言った。
「まだ時間旅行は、成功していません。過去は小さく過ぎ、未来は大き過ぎる。この船は失敗です」
ガニメデ人は触覚器で球船に触れた。
「貴方がたが何故欲しがったかは判りませんが、深宇宙の植民地に行きたかったのなら、大変面白いです」


「では、あれは地球の時代だったのか、あの人々、昔の人」
「たぶん15世紀、中世だ」

突然カーマイケルは笑った。「そして我々は」
バセットは言った。「ただの子供の話だと思った」
「昔話だと」トーマス将軍は訂正した。


巨大な貨物船が飛び立つのを、彼らは見ていた。


..............

なんか、誰かプロの方が既に訳されていて、その原稿が、出版社のディック担当者の机の中で眠っている気もしますが、
また、やって見ました。たぶん、発表されるのは、次の短編集の後でしょうから...って言う事は、ディズニーの
「小人の王」の公開時点に合わせてかな?ま、ともかく、ご愛嬌です。

しかし、ジョンカーター、大コケだそうですが、大丈夫か、ディックの映画化??

記:2012.08.04


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三分 小説 備忘録

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