3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

永久戦争 (1993)新潮文庫
永久戦争


地球防衛軍 The Defenders / フィリップKディック 訳:浅倉久志のあらすじ
初出 Astrounding(1953.6) 原稿到着1952 短編 第26作

テイラーは朝刊を読んでいた。
「メアリーやったぞ!R-H爆弾でモスクワを攻撃した!」
良いニュースだ、新型潜水艦の完成ももうすぐ。これで、戦争は有利に傾く。

「ねえ。今日、子供達は戦ったロボットを見るのよ。私達の税金が何に使われているかを知るのは、良い経験だわ」
「しかし、地上で戦った物を、この地下に降ろすのかい?放射能は大丈夫なのかな?」
「充分に洗浄するに決まってるじゃないの」

「しかし、地上...お前だって思い出すだろう。戦争の初期。まだ我々が地上にいた時の事を...」
「そうね。負傷者と死体の山。思い出しただけで、震えてくる」
「でも、みんな過去の話だ。地上にはロボットしかいない。彼らが、この国を守っていてくれるんだ」

人口太陽の下で人々は暮らしていた。地下菜園と合成食料。周りはみんな金属の壁。
空はない。しかし戦争の遂行のためには、我慢しないと。


緊急連絡がかかって来た。
「テイラー!モスだ。悪いがすぐに来てくれ。いや、研究室じゃあない。
   第2レベルまでだ。そこから、私と行こう。地表へだ!」

「テイラー君。呼び出して悪かった。私はフランクス司令官だ」
「司令官が、今回の事を発見した。私は、先ほど知らされ、そして君を呼んだ。第1レベルへ行こう」
「第1レベル?そんな!放射能に対する防護服はどうなるのです!」
「防護服?第1レベルは鉛板の下だ。安全だよ」

長い上昇エレベータを乗り、長い戦争の結果、放射能に汚染された地表のすぐ下まで、
やって来た。この上ではロボット達が戦争している。


「テイラー君。ここに、地表から戻ったA級ロボットがいる。その報告を聞いて欲しい」
その部屋の中には下半身がキャタピラーの金属体がいた。
「さあ、始めよう。まず、地上の戦況について報告があるか?」
「戦争ハ継続中デス。高速追跡機ガ不足シテイマス。ホカニ不足シテイル、モノハ...」

「それはもう聞いた。我々が知りたいのは。戦況の全体的な状況だ。例えば、人間の視察団が出られる、
   放射能汚染が少ない地域が何処かにあるのではないか?と言う事だ」
「ソレハ疑問デス。大気ノサンプルハ、ソレヲ否定シテイマス。ソレニ戦況ハ、初期ヨリモ大幅ニ悪化シテイマス」

「では、我々が、地上に出る事について、どう思う」
「絶対ニ反対デス。地表ハ人間ニトッテ、極メテ危険ナ場所デス」
「判った。ありがとう。また地表へ戻ってくれ」


「テイラー君。どう、思う?」
「やはり、地表は危険ですね」
「この板を見てくれないか?」

テイラーはフランクス司令官から、金属板を渡された。テイラーはそれを持って調べた。
汚れてはいるが、何の変哲もない金属の板である。

「特に、疑問はありませんが?」
「地表から回収されたものだ」
「そんな!放射能で危険なのに!」
テイラーは板を放り出した。その板に、近くの兵士がガイガーカウンターを向けた。

「見てくれ。これは、全く放射能に汚染されてはいない。
   それにあのロボットも、実は無洗浄だ。しかし、放射能を全く帯びていない」
「何ですって?」
「実は前回の報告会で気がついたんだ。その時のロボットも、全く放射能に
   汚染されていなかった。テイラー君、地表に行ってみる気はないかね?」


メアリーは、帰って来た夫の表情が、見た事もないものだったのに気づいた。
「出張に行くんだ。少し留守にする」
「地表に行くんでしょ。貴方の顔を見れば判るわ。昔の表情よ。爆撃に怯えていた頃の」
「調査隊の一人に選ばれたんだ」


「臨時ニュースです。敵の大規模攻撃が開始されました。
   我が群の主力部隊は撤退中です。全員、持ち場で待機して下さい」
テイラーは眼が覚めた。上司のモスに連絡した。
「計画変更?すべて予定通りに進めるぞ」
「しかし、敵の大攻撃が...」
「これもでっちあげられた情報だろう。我々三人は地表へ向かう。
   重大な攻撃に対する視察を理由にしよう。そして、その後、兵士達が来る」
「その後は?」
「相手の出方次第だな。それ以上予想はできん」
「もしも攻撃が本物だったら...」


エレベータは三人を地上へ送った。テイラーはベンダー銃を握り締めた。
地表目前でエレベータは停止した。そこではB級ロボットが仕事をしていた。
「これは命令だ。至急A級ロボットを呼べ!」
そのロボットは戸惑っていたが、やがて別のロボットを連れて来た。

「治安軍のフランクス司令官だ。視察にやって来た」
「しかし、ここは人間には危険です」
「我々には防護服がある。夜明けまであと2時間。夜が明けたら視察に出る!」

その間、ロボットは様々な写真を見せた。放射能塵の作る雲。溶けたスラグの山。破壊された国土。
「良く判っているが、自分の目でみたいのだ」

別のロボットの一隊がやって来た。
「この放射能地帯で、貴方達の防護服では50分が限界です。もう戻って頂きます。貴方達の安全のためです」

ロボットに取り囲まれて、フランクス司令官は言った。
「わかった。戻ろう」
10体のロボットに連れられて、彼らはエレベータに向かった。

エレベータが開くと、12人の兵士が飛び出して来た。
「兵士はまだ、後からどんどん来るぞ!」
形勢は一気に逆転した。それに我々はロボットを破壊する事ができるが、
ロボットは我々に危害を加えられない!...はずだ。

D級ロボが突進して来た。こちらを捕まえるつもりだ。
兵士が銃でD級ロボを薙ぎ倒し、辺りは騒然となった。

「所詮、奴らの行動は脅した。恐れるな!」
激しい戦いの結果、殆どのロボットはくず鉄になった。

「さあ、外へ案内しろ」


ドアが開いた。
太陽の、強い光が注ぎ込んだ。
「行くぞ!」

そこは丘の上だった。眼下には、巨大な盆地があった。
人間達には、この景色は明るすぎて見えなかった。やがて、眼が慣れると。

山々の形がはっきりと見えた。そして、雄鶏の鳴き声が谷間に広がった。
「聞いたか!」
樹木は青く茂り、まばらに農家があった。風車がゆっくりと回っていた。

「8年間の報告は嘘だったんだな!」
A級ロボットは答えた。
「はい、貴方達が地下に潜って直ぐに戦争は終わりました。私達は貴方達の送ってくる兵器を、次々と破壊しました」
「しかし...何故だ。何故、そんな報告を」

「我々には、そもそも戦争と言うものが判りませんでした。何故、人間が戦争を行うのか。そして、
   戦争は無目的であり、人間の欲求によるものだと判ったのです。研究を深めると、人間の文化は歴史的に、
   段階を経て進化していると判りました。そして、判ったのは、今回のものが最終戦争だと言う事です」

「人間の戦争は、始めは村と村、次が、地方と地方、そして国と国。今回のものは
   世界の半球と半球です。ですから、今回のものが最終戦争なのです」

「しかし現在の人間は、まだ成熟していません。憎悪に冷静な判断を失います。そこで我々は、
   人間達の憎悪が磨り減るまで、戦争を続けたのです」

「しかし、我々は実際の写真も見た。戦争がなかったとは思えん」
「こちらへ、いらっしゃい」
A級ロボットに案内されたラボには、精密な模型があった。どこまでも続く廃墟。破壊されたビル。爆破の跡。

「これを撮影したのです、しかし我々が行っているのは、それだけではありません。我々の仕事は
   幾らでもありました。持ち主が帰って来るまで、この世界を元通りに守っていかなければ
   ならなかったのです。荒廃との戦い、それが私達の戦争でした。


辺りの調査中、フランクス司令官は二人に、こっそりと言った。
「この状況を利用するんだ。ソ連側も同じ様に騙されているに違いない。この隙に米国が地上を占拠するんだ」
「ロボット達が素直に言う事を聞くでしょうか?」


そして、A級ロボットに命令した。
「軍事資材を地上に集めろ。これから占領行動に入る」
「了解しました」

「なぜ、奴らは素直に言う事を聞くのでしょう?」
「所詮は機械さ、人間には逆らえんのだ」


三人は地下入口へ向かった。そこで人間兵と合流した。
「封鎖されています!」
地下入口は封鎖され、完全に溶接されていた。

「残念ですが、貴方達に戦争を再開させる訳にはいきません」
「しかし、我々が戻らなければ、捜索隊が来るぞ!」
「どうでしょう?地上は放射能で一杯です。また仮に来ても、サイクルは最終段階に進んでいます。
   以前、ソ連隊が地上に出た時も、我々は封鎖して、連絡を遮断しました」
「ソ連が先に気づいていたのか!」
「我々は、その度に何度も封鎖しています」

飛行機が飛んできた。着陸し、中からソ連兵が出てきた。
A級ロボットは言った。
「皆さんの武器を渡してくれませんか。相手は武器を持っていません」

「私はボロードイ大佐だ。武器さえあれば、八年ぶりにアメリカ兵を殺したソ連兵に成れたのに」
「八年ぶりに殺されたソ連兵の間違いじゃないか?」

「我々も地下に戻れない。この地上では、作物を育てて暮らすしかない。
   ロボットも手伝ってくれる。我々の村に来ないか?」
「『我々の』と言う事は、ソ連の村と言う事か?ソ連の村には行かない。アメリカの村を作る!」
「『我々の』と言うのは、君達と僕達と言う事だ。『ソ連』でも『米国』でもない。
   それに、これまでの様に特別な外交交渉はいらない。眼の前の人間と話すだけの事だ」

「司令官。また、戦争が始まりますね」
「戦争?何の事だ?」
「『宇宙の征服』、『飢えと貧困の根絶』、『生命の意味を知る事』などです。
   我々は一つになり、新しい時代に入ったのです」


..............

ディックの戦争物としての典型的な作品です。時代的に考えると。代表作なのでしょうが、ただ...なんか...
もう、既視感が強すぎて、まともに評価できません。簡単に言うと、つまらないです。

記:2012.07.18


  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・ディック1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ