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ウォーゲーム (1992)ちくま文庫
ウォーゲーム


自動砲 The Gun / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Planet Stories(1952.9) 原稿到着1951 短編 第10作

キャプテンは地上の様子を望遠鏡で眺めた。
核爆発の跡だった。
予想した通りだった。
海は蒸発し、大地は溶けた溶岩が固まっていた。おそらく、大気は有毒だろう。
宇宙の果てでさえ、こんな景色を見たらぞっとするだろうに...
その後、望遠鏡を覗いたネイシャが叫んだ。
「何かある!町?それとも...」
宇宙艇はコースを変えた。それに近寄った。
しかし、それは桟橋だった。石を積み上げて出来ていた。
「生きている者はいない」

その時、爆発が宇宙艇を襲った。
外壁が一部破れた。

「攻撃だ!こんな所で、誰が?ともかく着陸だ!緊急着陸!」
しかし、キャプテンは重症を負った。

夜になった。無事に着陸は出来たが、修理はままならなかった。敗れた外壁からは、
有毒な大気が流れ込んでいた。

「直ぐに修理をしろ。それから、攻撃先を見極める必要もある。危険だが、探検隊を組織しよう」
「...ああ、そうしてくれ」
ベッドに横たわるキャプテンの声は小さかった。

こんな星でも太陽は昇った。
ネイシャ、タンス、ドールが探検に出た。

進むと、廃墟があった。かつて風車塔らしきものがあった。

宇宙艇から見えた桟橋は、建物の一部だった。彼らはそこに行った。
『フランクリン アパートメント』ここは、かつて集合住宅だったのだ。

そして、その近くに大きな塔を見た。
それは、塔ではなかった。長距離砲だった。これだ。我々を撃ち落したのは。

砲は風になびかれていた。この死に絶えた町で、唯一、活動するものだ。

「あれは生きているのよ。私達を見ている。観察しているわ」
「誰が撃っているんだろう」
「誰もいないさ。自動砲だよ。近づく物を撃ち落すのさ」
「誰のために?」
「誰でもない。そいつらはもういないんだ。よく見ろ」

ドールは小石を拾い、自動砲の前に投げた。
自動砲は、その軌跡を検知し、砲身を行く先に向けた。
石が落ち、動きを止めると、自動砲の動きも止まった。

「ほらな」
「戦争は終わった。とうの昔だ。でもこいつらはまだ殺す準備を止めない。
   完全に消耗するまで、ねばり強く止めないんだ」
「離陸したら、的になるわ」

「複雑な構造だ」
「かつては、これが人々の生活を守っていた。生活の一部。
   これに従事する人々は名誉でさえあった。?タンスはどこだ?タンス?」

タンスは砲のすぐそばにいた。
「おい、こっちへ来いよ。良い物をみつけた!」
「あ!タンス!危ないぞ!」
タンスが動いたので、砲は、向きを変えた。
タンスは硬直した。砲はやがて、向きを戻した。

「こいつは何かを守っている。今もそうさ。そいつを見つけたんだ」
そこには地下室があった。彼らは入った。

入り口を焼き切った。階段を降りて行った。

木箱、コンテナ、タンス。彼らはそれらを調べ始めた。

破壊された彫刻があった。腕の折れた生物。
ほこりに塗れた彫像。
フィルムがあった。彼らはそれを覗き込んだ。
青いガウンを着た異星の少年だった。
少年は笑っていた。

かつて、ここには文明があった。幸せがあった。
しかし、今、その大地は溶け、大気は有毒になり、生物は死に絶えた。

「この砲が守っているもの、それはこれね。文明の記憶」
「しかし、この砲も空にいる物には効果を発揮するが、我々地上の敵には無力だ。
   まるで、ドラゴンの柔らかい腹だ。これを分解しよう!」

彼らは、宇宙艇へ、戻った。キャプテンは亡くなっていた。工具を持ち、破壊隊が結成された。
ドールが新しいキャプテンになった。

砲は、端から解体された。部品の山が、後に残った。彼らは宇宙艇に戻り、修理を急いだ。
五日後、ようやく修理は終わった。

ネイシャは操縦席に座った。
「もう撃ち落される心配はなくなったわ。ここの彼らの文明には素晴らしいものもあったわ。
   我々は、ここを教訓の地とする事ができる」
「ああ、戦いは、文明を滅亡させる。それを思い起こさせるには良い星だ」

宇宙船は飛び立った。
自動砲は、それに気がついた。しかし、既に砲身をそちらに向ける事はできなかった。

そこから数百マイル離れた地の、地下深く。アラームが鳴った。
地面から小さなカートが現われた。

それには、配線機器が乗っていた。次のカートにはリレーが、次には制御ユニットが。
次々と現われるカートは列を成して進んで行った。


..............

リレー(継電器)って言うのは、一般的にはどうなんでしょうか?電機屋さん、じゃなくてもイメージが持てる部品
なんでしょうか?しかしディックはリレーが好きですね。だいたい自動機が壊れると、リレーが吹っ飛びます
初期作ですが、自動で動く機械に対する恐怖のイメージは、この辺から始まっています。

記:2012.05.25


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三分 小説 備忘録

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