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シビュラの目(2000)早川文庫
シビュラの目


カンタータ百四十番 Cantata 140 / フィリップKディック 訳:冬川 亘のあらすじ
初出 Fantasy and Science Fiction(1964.7) 原稿到着1955 短編 第87作

福祉省の冬眠局のカウンターに、有色人種の若いカップルがやって来た。
「俺達を『眠らせて』下さい」
「しかし、良く考えたのかね?周りの人間にも相談したかい?一度『眠り』に入ったら数百年間、
   意識が戻らない事もある。雇用状況が改善するまでだよ。何時になる事やら」

「判っていますが、俺達、職もないし、それに子供も出来たんだ」
連れの少女のお腹は膨れていた。

「お前達に必要なのは『堕胎コンサルタント』だ。さあ、ここに書かれた部屋に行け!字くらい読めるんだろ?」
「ええ、13歳まで学校に通っていましたから」
(そりゃ高学歴だ。そんな奴まで、仕事にあぶれるとは...
   いやな世の中だ。長生きはするもんじゃない。俺はまだ95歳だが...)


『私が大統領になったら、初めに手を付けるのは、数千万人に及ぶ眠れる人々を起こし、仕事を与える事だ』
転送機スカットラーの修理会社社長のペセルが手に持った『ワードタブ』のニュースは、初めての黒人大統領
ブリスキンの演説を流していた。
(こりゃ、我が国の労働市場は破滅するぞ...)

後のニュースは臓器移植のエキスパート サンズ博士の泥沼の離婚訴訟に政治スキャンダル、取るに足りないもの
ばかりだった。サンズ博士の妻は妊娠中絶の権威ミセス マイラ。そしてサンズには愛人がいたそうである。

馬鹿な!今時、愛人?オルトの人工衛星は毎日、俺達の頭上を通っている。治外法権、天の楽園だ。
   (ちなみにミス オルト、女性です。この衛星の支配者はウォルトと言う頭が一つ、体が二つの双生児で、
   後で出てきます。オルトとウォルト、紛らわしいので、ご注意を)。

あそこに行けば5000人の美女が、お前を待っている。金持ちにとっては愛人など、過去の遺物だ。

もっともペセル自身はオルトの人工衛星に行った事はなかった。しかし、治外法権になるオルト衛星の許可法案に
賛成した議員も、反対した議員も、奴ら、おしなべて、あそこに日参している。
人口増加問題に関する根本的な解決作だと言って。


初の有色人種大統領を目指すジム ブリスキンは、ブレーンと演説の内容を練っていた。
「オルトの人工衛星『ゴールデンドア』は閉鎖すべきだ。あれは不健全だ」
「しかし、閉鎖すれば、君の支持者は喜ぶが、人口抑制問題の解決策を、
   二十年前に失敗した、惑星植民地化計画に頼ると言うのも...」

「でもジムの支持者は若者だ。だから若く素人っぽいイメージが大事だ。大きな夢を語る方のが良い」
「それに君が若い頃にガールフレンドを妊娠させて、堕胎させたエピソードなんてのも良いぜ。
   現在の流行の先取りだったんだ」
「よし、演説は、惑星植民地化推進で行こう!」

ジムは民主共和党、相手は白人主義者のCLEAN連合だ。

ジムには自分の政策を後押しする人材が必要だった。
目を付けたのは、惑星改造技術者のジム、我々には移住先が必要だ。そして臓器移植のサンズ博士だった。


スカットラー転送機修理士のリックは、修理した転送機についてサンズ博士のクレームを受けていた。

このスカットラーと言う転送機の初号機には、ある"欠陥"があった。転送の最中に、別の時間の光景を見る事ができるのだ。

その"欠陥"に気づいた伝説の技術士エリスは、その光景を元に、彼の"聖書"を記述した。
そして、そのスカットラーの"欠陥"を直して、姿を消した。

「スカットラーが突然、あなたをオレゴン州のポートランドに飛ばしたんですか?」
「スカットラーには、色んな事がありましたからね。まだ"バグ"が潜んでいるのかも知れません。
   新型と交換しますか?」
「いや、それもしたくない...ともかく、もう一度、修理してくれ」
リックはスカットラーの機能を調べた。どこにも問題はなかった。しかし博士は、この交換を拒んだ。
それには、何か理由があるはずだ...調べてやろう...リックには、好奇心があった。


ジムの選挙対策長のハイムは、ジムの潔癖さにうんざりしていた。ジムの政策もパッとせず、人気も下降を辿っている。
白人は全員選挙に行きビルに投票するが、有色人種は半分しか選挙にいかないからだ。

ハイムはオルトの人工衛星に行く。お気に入りの娘スパーキーもいる。こで彼は、一緒に手を組もうという相談を受ける。
大衆に人気のある、オルトの人工衛星にジムを呼び、その良さを伝えれば、支持率も上がると言うアイデアだ。

「ジムは、ここの閉鎖を考えている。来る訳がない。彼はピューリタンさ。20世紀の遺物なんだ」
「19世紀でしょ?ここに来れば、"恋愛"と言う行為が、時間を節約して可能になるのよ。忙しい人にはうってつけ
   の場所なのに!じゃあ私達は、CLEAN連合のビルを支持し、CMを流す事にしますわ」

「話は済んだかい?じゃあ、俺のお気に入りの女を呼んでくれ。スパーキーを」
結局、彼はまだジム側にいる事にした。


妊娠中絶の権威ミセス マイラは、探偵のティトに、過去一年間の臓器移植について調べさせいた。
元夫の臓器移植家 サンズ博士への離婚訴訟のために、有利な情報を必要としていたのだ。

そして博士が非合法な臓器を入手しているかも知れない情報を得て、
博士の愛人キャリーに追跡装置を付け、監視を始める。

しかし数日後、キャリーからの通信が途絶えた。考えられるのは冬眠に入った事。それとも衛星に飛んで娼婦になったか?


修理士リックには確信があった。サンズ博士はこのスカットラーに何かを隠しているに違いない。
たとえば愛人キャリーだ。キャリーをこの中に隠し、修理に出してしまえば、キャリーは絶対に見つかる事はない!
キャリーを見つけて、ミセス マイラに高く買って貰おう!
(注:なんだ?そりゃ?って?...そうですけど、でも、そう言う話なんですよ)

そして、チューブの裂け目に空間を見つけた。これだ!ここにキャリーを隠したんだ!(注:まあ、ディックですから)

リックは裂け目に頭を突っ込んだ。

中は広大だった。牧草地である。見渡す限りの広大な土地。サンズめ、この土地にキャリーを隠したな。リックは
辺りを歩き回った。空気も日光も問題ない。ここは地球か?少なくとも人類が住んで問題ない、広大な空間だ。

その時、遠くで人影が動いた。未来人か?原人か?いやキャリーだ。手にレーザー銃を持ち、こっちに撃って来た。
リックは慌てて、逃げる。スカットラーのチューブへ。そして、そこに手をかけた。


リックがなかなか帰って来ないのを心配していた仲間達は、チューブからリックの手が出てきたので、引き上げた。
しかし彼は死んでいた。背中をレーザー銃で焼かれて。

「スカットラーを止めろ。あっちにはキャリーが居たんだ!しかし、これは大発見だ!地球開発公団に連絡しろ!」


大統領ジムの所に探偵ティトがやって来た。
彼は重大な情報と引き換えに、自分の法務大臣就任を要求していた。

その重大な情報とは、地球開発公団が隠している広大な新天地の情報。これを流せば、冬眠者問題は一気に
解決できる。奴らが独占する前に先制するのだ。
ティトは博士の周辺を漁っていて、この情報を得たのだ。

ジムの判断は早かった。彼は直ぐに演説を始めた。

ジムは語った。不健全なオルトの人工衛星を禁止にする事。
冬眠者を全員起こす事。
もう中絶しなくて良い事。
そして、膨れ上がる人口を吸収する新天地を地球開発公団が発見した事。

「素晴らしい演説だったよ。これで君の再選は決定的だ。開発公団も利権の独占は出来なくなった」

しかし、オルトの人工衛星にとっては大打撃だ。他にも福祉省のラックモアや堕胎コンサルタントの
ミセス マイラにも大打撃だった。しかし、もっと切迫している者がいた。ジムに復讐しようと暗殺を目論む者。
それは何故か臓器移植のエキスパート サンズ博士だった。

衛星の支配者ウォルトから(注:出てきましたよ。ウォルトです。ミス オルトじゃなく、単頭の双生児、
ミュータント)、貴重な脳波殺人器を貰ったサンズ博士は、それをジムの脳波に合わせ暗殺を狙った。
この方法では、10マイルの遠隔地から、ターゲットを暗殺できる。防ぎようはない

探偵ティトはそれに気づく。しかし、脳波殺人器を阻止する事はできない。必殺の武器なのだ。今ジムに死なれては、
自分の法務大臣もパーだ。彼は意を決して、単身、オルトの衛星に乗り込む、ウォルトと直接対決するのだ。

ティトは衛星で警察のガサ入れがあったと思わせ、ウォルトを誘い出す。そして、ウォルトに銃を突きつける。

「俺は、お前達の片方を殺す。両方は殺さない。そうすると、お前達のどちらかは、これから、
   ずっと死んだ兄弟の体と生きるんだ。さぞかし、楽しいだろうな!」
そして、脅しの一発を片方にくれる。片方は負傷する。

ティトの脅しは効き、ジムの暗殺は回避された。後は、この衛星から逃げ出すだけだ。

ジムはティトからの連絡を聞き、ティトの回収部隊を衛星に送る。ジムと選挙対策長ハイムも共に。


二人は衛星に着き、ティトの部屋へ行く。そこにはウォルトがいたが、様子がおかしい。既に死んでしまった様に
見える。脅しの一発の当たり所が悪かったのか。

ハイムはウォルトの4本の手の一本を引っぱる。しかし、それは抜けてしまう!

驚くハイム。三本腕のウォルトは逃げ出した。
???...あれは、人造人間だ!

彼らはウォルトを追う。ウォルトは、あちこちにぶつかりながら逃げる。その度に、脚が、腰が吹っ飛んで行く。
気がつくと、走って逃げているのは、普通の人間だった。(注:二度目ですが...なんだ?そりゃ?)。

「奴らは以前は同頭の双生児だった。しかし、どこかで片方が死に、そして、そこを人工物で埋めたのだ。
   きっと、片方では生きられなかったのだ。脳の関係で...」(注:あれ?でも、さっき走っていったんじゃないの?
   充分。片方だけで生きられそうだけど??)

彼らはサンズ博士がジムを暗殺しようとした理由を知った。
博士が臓器移植のために不正に入手した臓器の多くは冬眠者からのものだった。だから、彼らの一部は、
けっして眼を覚まさないのだ。冬眠の失敗からではなく、既に死んでいるのだ。全ての冬眠者が覚醒すれば、
その事実はバレる。博士はそれを恐れたのだ。


ジムとハイムは地上へ戻った。

ジムはオルトの衛星の廃止は中止する。あれには、あれで効用があるのだ。それに、サンズ博士の臓器移植は、
もう為される事はないだろうが、ウォルトの使っていた人工臓器、あれは、人工臓器でも我々はきちんと
生きる事ができると言う証明だ。ウォルトから、あれの入手元を聞こう。答えなければ、衛星は廃止だと脅して。
たぶん、それは、あの衛星に住む多くの技術者達からだろう。彼らは使い物になる。

ジムの大統領選勝利はもうすぐだった。

..............

う〜ん。長いな。カンタール(唄う)の140番は、エスクリビール(書く)の140頁でした。

なるべく、シンプルなストーリーっぽくしようとしたのですが、いかんせん、登場人物が多くて、『大統領ジム』も、『ジムの選挙対策長 ハイム』
も、『オルトの衛星』も『探偵ティト』も『スカットラー修理師 リック』も『臓器移植サンズ博士』も、『堕胎コンサルタント マイラ』も、
ストーリー上必要なんですよ。

冒頭の『福祉省のラックモア』は、関係ないので無名にしました。しかし、冒頭に出てくる人物の名前がストーリーに関係ないなんて...
お前は、『サイコ』かあああ〜

『スカットラー修理会社社長 ペセル』くらいはカットできたんですが、それでも、社会状況の説明として、必要なのでね...


結局、『待機員』の、いけすかねえ野郎ジム(ジム ブリスキン)はオバマ大統領だった訳ですね(前の作品では赤髪かつらを被って、
まるで、黄髪の、自称天草シロウの生まれ変わりな、キモカマなジジイでしたが...オカマ大統領って言った方が良かったか?)

つまり、オバマ=ジム=ものみんた=自称天草=そのまんま=ハシシタ、こう言う人たちが、相互に置き換え可能な訳ですね。、
パラレル ワールド恐るべし!エンタメ政治はもっと恐ろしいけどね

記:2012.04.15


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