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シビュラの目(2000)早川文庫
シビュラの目


宇宙の死者 What the dead men say / フィリップKディック 訳:浅倉久志のあらすじ
初出 Worlds of Tommorow(1964.6) 原稿到着1963 短編 第99作

強化プラスチック箱に入ったルイの遺体には、多くの弔問客が訪れていた。
ジョニーも弔問客の一人だった。しかし彼の目的はルイの復活だった。

ルイ。惑星間貿易を独占していた巨大企業の創業者。
しかし今のルイは半死半生状態、この状態の寿命は合わせて1年ほど。毎年1回、半年くらいづつ生き返り、
彼の会社に指示を与える。
結局、彼が完全に活動を止めるのは。22世紀になってからだ。

ジョニーはこの企業に入った時に、素晴らしいアイデアをルイに伝えた。
それは、宇宙港で頻発するストライキへの対抗策だった。
「つまり三海里離れた領海外からロケットを打ち上げるのか?」
「ええ、それが彼ら労働組合の権限を受けない方法です」
「しかし、大量の労働者が必要だぞ」
「ビルマ、インド、マレーシア。人材は豊富です。そして前金を渡して、長期間の年季奉公に雇うのです」
人権を制限された人々による、現代の奴隷労働!
「お前、頭が良いな。俺の所で働け!」

ジョニーが今、食える様になったのもルイのおかげだ。俺はここに集まる弔問者、多くはルイの無料給食施設に
並ぶ民の群れ、の一人だったんだから...それが無学の俺dが、今、この大企業の広報部長。

ルイは皆に慕われていた。生活保護法案を議会が受理したのもルイの圧力のおかげ。不況期にも新規雇用を
維持したのもルイのグループだけ。学歴による差別も少ない。俺が良い例だ。


穴蔵(半死者保存所)は準備に急がしかった。そろそろ復活祭、半死者を湛える日が来るからだ。
社会の成功者は、野蛮な埋葬を好まない。死亡すると、半死者となり、穴蔵に入る、そして、残された復活可能日、
約1年を時々復活しながら過ごすのだ。中には、1世紀に1日づつ、遙か彼方の未来まで、復活時期を延長する
契約をする者もいる。しかし、長期間の保存には、脳細胞の機能低下は免れないのだが...

「お父様の脳機能は随分低下されています。超低音での電流計測は電気抵抗によるノイズもなく測定できるのですが...」
蘇生担当者のヘルベルトは困っていた。大統領候補の黒幕者の復活に支障が生じたからだ。
「ともかく、努力を続けろ!君達の手違いと言う事になるぞ!」
(しかし、どこが悪いのだろう?)

月面の電波望遠鏡はプロクシマからの微弱な電波を受信した。それは、人の音声の様に聞こえたのだ。
この"神"からの言葉に、科学者達は頭を抱えていた。


閑話休題
−ここで、話はルイの事業の話になり、登場人物も増え拡がって行きます。中篇と言える文庫本百数十頁の量
なのですが、ディックの長編によくある感じ、と言えば判っていただけるでしょうか?
この話は複数の筋が展開し収束するので、なかなか要約が難しいのです。そこで、このHPの趣旨とは異なりますが、
以下は箇条書きにさせて頂きます。文庫本約100頁の部分は、次の様な感じです。

ルイの遺産相続人キャシーは、ルイの指示に従ってジョニーの助けの元、事業を継続していた。
彼女は、宇宙からの声は、ルイのものだと確信していた。もっとも彼女はヤク中毒だったが...

かつてルイの援助で大統領候補となり敗れたガムの所へ、差出人不明のファックスが届いた。再出馬を要望する手紙。
ガムはこれをルイからのメッセージと受け取り、巻き返しを狙っていた。

ルイからのメッセージは、様々な所から聞こえて来た。。ジョニーも電話から流れるルイからのメッセージを聞いた。

ルイのメッセージは、どんどん広がって行った。今では、ジョニーの見るテレビからも流れ出した。
しかしメッセージは拡散し。どんどん不明瞭になって行った。それはルイが衰弱している証拠だ。今では
ルイの姿は深夜のテレビの砂嵐の中に垣間見えるに過ぎない。

新聞の電送システムが原因不明で故障した。一見、脈絡のない文章で紙面は埋まっていたが、ジョニーは、
その中にルイからのメッセージを見出した。
ガムは大統領選に立候補した。

ルイのメッセージはガムを応援していた。
ガムが嫌いな、ルイの弁護士だったクロードは、ルイの遺体を穴蔵から出し焼却する。ガムを支援している
ルイからのメッセージを止めるたためだ。しかし、焼却してもメッセージは止まらなかった。
メッセージは、ルイの本体からではなかったのだ!とすると、このメッセージは一体、何処から?

ルイ(と思われていたもの)メッセージは錯乱していた。このメッセージの発信者として、最もありそうなのは、
薬物依存の相続人キャシーだ。

ジョニーはキャシーを探す。そして辺鄙な精神病院にいるキャシーを見つける。

そこでジョニーは真のキャシーの姿を見る。死の間際の力の弱ったルイを"食い"、その力を得て、ガムの味方をする。
キャシーはガムが大統領になったら、彼と結婚するつもりだ。巨大な発信機を宇宙に置いたのも彼女。

今では、電話、テレビ、新聞。全てのメディアは「ガム、ガム、ガム!」の連呼だ。彼らが大統領になるのも時間の問題。
そして、その先にあるのは、我々の"死"だ。

ジョニーはサンシールとクジを引く。引いた者が、暗殺を実行する。まずキャシー、必要ならガムも。
"当り"を引いたのはジョニーだった。ジョニーは銃を持って、部屋を出て行った。


..............


う〜ん、このスタイルでは、何か、ストーリーを味わった気がしませんね。ま、しかし、本来"あらすじ"とは、こう言うものか...

しかし、出ました半死半生。ディックの得意技ですね。リンボと言う概念がありますが、そのイメージに近いんだと思います
(私自身はリンボの明確なイメージがないので、間違いなら失礼!)。
半死半生は名作の幾つかに使われています。ネタばれになるので、邦題は書きませんが、Eye in the ... とか、Ubi... とかの...
おい判るぞ! そして、加えるに、ここでは"死者"に現実支配と言うディストピアが描かれている訳ですが(人が、なかなか死なない
ユートピア→支配者が、なかなか死んでくれないディストピア)、ディックはそこを進んで、その、"怪しげなる"遺言の
欺瞞性についても、含みを残しています。 つまりは、"捏造された"死者の言葉ですが、我々、日本人が、今ディストピアに住んでいると思わせられるのは、オオカワ
なる人物が(ウソのつき方は?"こう吹く"のさ!って奴ですね)正にこの、欺瞞に満ちた死者の言葉を語っているからです。

記:2012.03.27


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三分 小説 備忘録

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