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マイノリティ レポート (1999)早川文庫
マイノリティ レポート


水蜘蛛計画 Water Spider / フィリップKディック 訳:浅倉久志のあらすじ
初出 If(1964.1) 原稿到着1963 短編 第98作

朝起きたアーロンは、"彼ら"の事を考えていた。何とか救う方法はないものか?
ナクバレン収容所の囚人15人の乗ったロケットが光速に近いスピードで永遠に飛び続けている。彼らの身長は、
今や3cm!宇宙船もゴム風船くらいに縮んでいる。彼らを救う方法は?あ、そうだ!

「おいトッティ!良いアイデアを思いついた!再突入の方法を知るために、プレコグ(予知者)を使うと言うアイデアだ!」
「はあ?何を馬鹿な事を言ってるんですか?プレコグなんて、何処にいるんですかあ?気は確かですか。
   プレコグは大統領命令で全員処刑されましたよ」
「いやだからな。過去の有名なプレコグを集めて、そこからヒントを得ようと言う事だよ」
「20世紀のプレコグ機関誌の中に、今回の我々の"再突入"問題を扱ったものはないかなあ?
   あの短い栄光の時代なら何処かに...」


「これですよ」
「ほお『夜の飛行』か我々の移住計画を『水蜘蛛計画』としているな」

「移住局を民間企業と勘違いしていますが、ほぼ我々の状況に近いのです。しかし、問題は、この論文の中では、
   『質量復元の難問に、トレリのチームは成功した』とあるだけで、具体的な内容には触れていないのです」
「しかし、彼、ポール アンダーソンが未来の見たのには間違いない。彼をここに呼ぼう!」

「しかし、今までに失敗した事もあります、時間移送は危険が付き物ですので、彼を安心に呼べるか?」
「ああ、タイム ドレッジ(時間浚渫機)が対象物を捕捉したが、体を半分出したままだった。
   そのため、体の半分だけが、移送され...確かに時間移送は危険だ!」

「今回は、安全のために、1954年にチームを送り、彼の体が、完全にタイム ドレッドに収まってから
   移送する...どうだ?これなら安全だろ」
「か、完璧です!素晴らしいアイデアです!」

その時、ポールアンダーソンは、サンフランシスコで行われていたプレコグ大会に出席していた。
「時代考証は正確に行え。まず、彼らは飲酒している」
「薬物摂取ですね」

「彼の妻のカレンは、金星の美女に扮している。ピカピカの胸カップとヘルメットを装備だ。そのうち、
   彼らは薬物の過剰摂取で倒れる。"へべれけ"と言う状態だ。ここで、彼を捕獲し、移送する。そして、
   尋問の後、拉致から3時間の間の未来に送り返す、と言う訳だ」

そして、彼らは20世紀に人気のあった。カイゼル髭を付け、旅立った。
雑誌で見た人が着けていた、真っ赤なかつらも一緒に。


「あれ、モノレールはないぞ?この時代は、地上の乗り物は、全てモノレールとあったのだが?」
「第一、この扮装は変じゃないですか?こんな格好、誰もしてませんよ!
「仕方ない髭とかつらは取ろう。気に入っていたのだが...しかし、丸坊主の人も少ないが??」


プレコグ大会に入り、彼らは長身のハンサムな男に会った。AEヴァンヴォウトだ。
「ちょうど良かった!『非Aの世界』の結末がどう言う事か説明して貰えますか?」
「それはだね。ある物語を書いていると行き詰る時がある。そんな時は別の物語の結末を持ってくるのさ」
「なるほど!やはり貴方は素晴らしい作家です!」
「ん?あの男は私のズボンを履いているぞ!」
ヴァンヴォウトは行ってしまった。

「そうだ!アジモフ先生はどこに?」
尋ねた相手は逞しい体つきの男性。ジャックヴァンスだ。
こんな猛獣狩りハンターみたいなのを、相手にしていたら身が持たない。
じゃあ、マレイラインスターは?平行時間論の権威の!

「ねえ!あそこにいるのはブラッドベリですよ!ちょっと話に行きましょう!」
「ダメだ!今回の我々の目的は、プレコグとの接触だ。お!ジャック ウィリアムソン!『航時軍団』!
   あっ!ロバートブロックが!」
「いましたよおお!ポール アンダーソンが!」

ポール アンダーソンはもう一人のプレコグ、アンソニー バウチャーと話をしていた。
「アンダーソンさん。私達はミシガン州のバトルクリークのアマチュア プレコグ団体です。私達が作った
   タイムドレッドの傍に立って頂けませんか。写真を撮りたいんですう!」
「え?何?それ、どこにあるの?」
「すぐそこです」

「す、すごいねええ?これ、君達が作ったの?本物みたいだ!え?中に入るの?...」


「ようこそアンダーソンさん。お目にかかれて光栄です」
アンダーソンは、始めは驚いていたが、持ち前の好奇心で、外の景色に夢中だった。
特に興味を引いたらしいのがモノレール。
「モノレールはまだ、あなたの時代には無かったんでしたっけ?」
「ええ、個人用はありません」

「さてアンダーソンさん。貴方が発表した論文の中の、星間宇宙船での質量復元方法の内容について知りたいのですが」
「おお、質量復元!確かにそれが正確な言い方だね」
「貴方は我々の状況を正確に予知し、それを小説にされたのです。
   あなたの見た解決策を教えて頂ければ、宇宙船は助かります」
「我々は予知能力者なのか!」
「はい、そうです。ジョンキャンベルの描いた、人間対ロボットの地上の戦争は終わっているのに、まだ続いていると
   宣伝されて、人々は地下に暮らしているなんて話は、そのままです」
「あれを書いたのはキャンベルじゃないよ。ディックだ。結末がつまらん小説だ」

「ま、とにかくタイプライターをご用意しますんで、カチャカチャっとお願いします」
「その前に妻にお土産を買いたいんだが」
「良いですよ」
しかし、そのままポールアンダーソンは、ギフトショップから帰って来なかった。


さて、そのころ宇宙船の中では。
「なんと!計算すると今の私の身長はたった3cm!これは人権犯罪だ!しかしプロクシマに着けば...」
彼らも彼らで、自分達の置かれた状況を改善しようと努力していた。そして、膨大なマイクロフィルム資料の中から、
1962年"イフ誌"の重要論文を見つけた。


「お客様、最近『ナズル』をされた事はありますか?」
「え?何、その『ナズル』って?」
「春の新型が出ました...しかし、その風変わりな、お召し物は、随分と...いやあ、とてもイントローブです。素晴らしい!」
「ああ、お気に入りのスーツだよ」
「わっはっはあ!いやあ、そのジョークは最高です。ところで、ご家族は何人ですか?」
「3人だよ。妻と3ケ月の赤ん坊だ」
「!!!で、出て行ってくれ!ここはあんたの様な犯罪者が来て良い場所じゃないんだ!おい、すぐ警察を呼べ!」
アンダーソンは逃げ出した。

「あなたは外国の方?」
アンダーソンは、若い女性に声をかけられた。しかし、驚いた。ノースリーブとかノーブラと言うのは聞いた事があるが、
ノー...こりゃやりすぎだ。

それに、乗っているのはベッドにモーターと車輪が付いた物。この格好とはぴったりの組み合わせだけれど...
「ええと、と、図書館を探しているんですが」

「ここから1バイトね」
「1バイトって、どのくらいですか」
「何?あなたは私をワングしてるの?」
「怒らせたならすいません。どうですか、私とコーヒーでも飲みませんか?」
「一緒に行くのは良いけれど、その"コーヒー"って何ですの?」
「あ、図書館より学校の方が基本書は見つけやすいかな。学校はありますか?」
「学校って何?」
「子供達が通う場所ですよ」
「あなた、本物のヘンタイなのね」


「ともかく、頭を剃らなくちゃ。お!」
アンダーソンは巨大な粘菌生物と出会った。それは瞬時にアンダーソンの状況を理解し、テレパシーで思考を送って来た。
そして、それから、この時代の状況を教えてもらう。ポルポル派の支配した全体主義国家。
産児制限、敗北した勢力ガットマン、それを支持する反体制派イントローヴ...
結局アンダーソンは宇宙港で捕まった。

「さあさあ、早く!タイプライターをスミソニアン博物館から持って来ましたよ」
「コーヒーがないとダメだな。用意しといて。さてと...」
アンダーソンは文字を打ち始めた。『夜の飛行』

「あいつ始めから書くつもりだぞ。どれだけ時間がかかる事やら...」

『...宇宙船はプロクシマの恒星からヒルのように太陽エネルギーを吸い、
   質量に還元すれば良いのである。そして、公式は...』

「なるほど、答えは意外に身近だったんだね」
「じゃあ、これで帰れるね」
「その前に、記憶を消さないといけません。こちらへどうぞ」
「なんだ...残念だなあ...」

無痛の電気ショックで、ポール アンダーソンの極最近の記憶細胞が消された。
そして1954年へと戻った。

「よし、全てうまく行った!じゃあ、さっきの公式は...あれ、ない?」
「彼の記憶が消されたために、歴史が改変されたのでは?」

あわててイフ誌を見ると、そこにはポールアンダーソンの『夜の飛行』ではなく、
代わりに、ディックと言う作家の『ヤンシーにならえ』が掲載されていた。

「やっぱり、歴史は改変されたんだ!」
「何が改変されたんだって?」
「だから歴史ですよ!歴史...あれ、何だっけ?アンダーソン...あれ、誰だろう?」

「コーヒーをお届けに上がりましたあ」
「だれが、そんなもの注文したんだ?」

「ともかく、我々は『水蜘蛛計画』にかからなくちゃならん!ぼやぼや、してられんぞ!」


ポールアンダーソンが気が付くと、1時間が経過していた(あれ、何をしていたっけ?)

彼がポケットを探ると、メモ書きが見つかった。
そこには、ガットマンと言う名の政治家と、タイムマシンを使った誘拐、そして知能のある粘菌生物...

「これ要らないから、オークションにでも出してくれ」


..............


この話は、つまんない話だと思ってたのですが、まとめて見ると意外に面白いですね。ちょっと冗長な部分がなければ、良かったようです。


記:2012.02.23


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三分 小説 備忘録

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