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パーキーパットの日々 (1991)早川文庫
パーキーパットの日々


ルーグ Roog / フィリップKディック 訳:大森望のあらすじ
初出 Fantasy and Science Fiction(1953.2) 原稿到着1951 短編 第1作

「ルゥゥ!」
と、犬は吠えた。
早朝の庭を覗き込んでいる奴がいる。ルゥゥだ!

「ルゥゥ!」
犬はまた吠えた。最近、何度も、この家を脅かす奴ら!
走った。柵まで、目にも止まらぬ速さで駆けた。そして、柵に体当たりした。
その音に、ルゥゥは驚いて逃げた。しかし、まだだ。また戻ってくるかも知れない。
いや、奴は戻ってくるのだ。また、きっと。

犬は柵の前で、見張り続けた。


「新聞は取ってきたかい?」
「まだよ。庭にあるわ。アルフ、取ってきてちょうだい」

カードッシ夫人はキッチンから返事をした。アルフは庭に出た。
新聞を取り、庭を見張っているボリスの頭を撫でた。ボリスは、はあはあ、と興奮していた。

「舌をひっこめろ。ボリス。誰が来たんだ?新聞配達だろ?」
「ルゥゥ!」

「最近、お前、おかしいぞ。いつも朝、吠える。もうお前も落ち着く年だ。子犬じゃあるまいし」


昼になった。ボリスは庭で昼寝をしていた。その姿を、柵に上に座った二人が見ていた。

「でかいな」
「はい、この辺りじゃ、最大の<見張り>です」

「奉納壺の様子はどうだ」
「準備完了です」

ルゥゥはボリスに向かって行った。
「おい<見張り>。俺達は奉納を受け入れる事にした。だから、これからは仲良くやろうぜ。わかったかい?」

ルゥゥは去って行った。ボリスは、柵まで行って、奴らの臭いを嗅いだ。ボリスの背中の毛が逆立った。
そして、吠えた。何度も、何度も。


夜になり、アルフが帰って来た。
「ただいま。ボリス。良い子にしてたかい?」
「でも、最近、吠えるのよ。気が狂った様に。止まらないの。このままだと、飼っていられないわ」
「ああ、えも、昔はそうじゃなかったし。すぐに直るさ」


太陽が顔を出した。冷たく不吉な太陽だった。
ボリスは耳を、そばだてていた。視線は庭の向こうに、注がれていた。

道からガタンガタンと何かがやって来た。
ボリスは、庭を駆けた。近づいて来る!

「ルゥゥ!」
ボリスは叫んだ!
「ルゥゥ!」
目を光らせ、それが近づくのを待った。

ルゥゥ達のトラックが止まった。
ルゥゥが降り、作業を始めた。不愉快な匂いが辺りに満ちた。

「もう、一杯だな」
奉納袋を一人のルゥゥが抱えた。袋には穴が開いていて、そこから卵の殻が、道に転がり出た。

そのルゥゥは殻を拾い、口に放り込んだ。殻を歯で噛み砕きながら、ルゥゥは袋をトラックに投げ込んだ。

「ルゥゥ!ルゥゥ!」
ボリスは、叫んだ。庭を駆け回った。もう、誰かに聞いて貰おうと言う事は諦めた。ボリスは絶望の声を上げた。
「ルゥゥ!」

「ばか犬め。何を吠えてやがるんだ?」
アルフはベッドの中だった。

ボリスは舌を出し、はあはあと息をする。
ルゥゥ達は仕事を終えた。トラックに乗り込んだ。

「あの<見張り>は邪魔だな。いなくなったら、せいせいする」
「まあ、あせる事はない。既にトラックは一杯だ。また来週がある」


..............

roog は何と発音するのでしょうか?
ここでは、ルーグではなく、ルゥゥとしました。犬が「ルーグ!」と吠えるのも変なので。

で、この作品は、なかなか気に入っておりますが、いかがでしょう?
SFですが、クトゥルー神話の様でもあります。


記:2012.01.15


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三分 小説 備忘録

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