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まだ人間じゃない (1992)早川文庫
まだ人間じゃない


フヌールとの戦い The War with the Fnools / フィリップKディック 訳:友枝康子訳のあらすじ
初出 Galactic Outpost(1964.Spring) 原稿到着1964 短編 第102作


ライトフットCIA警部は言った。
「フヌールの奴らが、ユタ州プローヴォを占拠しました。今度は、チビの不動産セールスマンに化けています」

フヌールはマヌケだ。

どうマヌケかと言うと、一人がある地球人に化けると、全員が同じ姿になってしまう。
   おまけに身長は60cm。
   だから、簡単に見分けられるのだ。どんな姿になっても...

しかし、ホーク警視にとっては、うんざりさせられる相手だった。もう20年。
こんなマヌケで、しつこい奴らを相手にしていては、こっちまでマヌケになっちまう...


「奴らとの妥協点はないものかね。ユタ州のプローヴォだったら、少しくらいくれて
   やっても良いんじゃないか?なんなら、ソルトレイクの馬鹿煉瓦道を付けたって構わん」
「無理ですね。彼らの目的は、太陽系征服ですからね。絶対あきらめませんよ」

ホーク警視の机に、バストが100cmを超える秘書のミス スミスがやって来た。
「フヌールに関する新しい情報です」
「フヌールにも驚かされるが、君のスタイルにも驚かされるね。これからは、
   もっと露出の少ないものを着るか、体を包帯でぐるぐる巻きにしてくれないかね?」

資料は、スミソニアン博物館に飾られたフヌール人形。
ボタンを押すと、ソーラー銃を撃って来て、地球人を皆殺しにするそうだ。
子供は驚き、大人はニコニコ...馬鹿やろう共め!フヌールの侵略は遊びじゃないんだ!


「ライトフット!今度フヌールを捕まえたら、私が奴らを直接尋問する」
「しかし、1対1で顔をつき合わせている時に、貴方そっくりに化けたら、
   我々としても安全のために、両方を焼却する事になりますけど」

「では、合言葉を決めよう。『咀嚼』だ。私はこんな風に言う。
   『このデータを完全に咀嚼しなくてはならない』。どうだ?」
「了解致しました」

そして、二人はユタ州プローヴォへ向かった。


へりは町外れの峡谷に着陸した。
降りると、グレーのスーツを着た。身長60cmの男が、揉み手をしながら、近づいて来た。

「おはよう、ございます。お客様。見晴らしの良い別荘地に、ご興味はありませんか?」
「興味あるねえ」

ライトフットは男に銃を付き付けた。
「まあ、まあ、お客様。ともかく事務所でゆっくりと、お互いの種族に付いて話し合いませんか?」


フヌールに連れられ、二人は「アーリーバード不動産」に入った。
「ええ、『早起きは三文の得』と言う格言から、この名前を付けさせて頂きました」

そこに、二人の、これまたそっくりな身長60cmのセールスマンがやって来た。
「チャーリーが、地球人を二人捕まえたぞ!」
「いや、正確に言うなら、二人の地球人がチャーリーを捕まえたんだ。地球人よ。まあ話し合おう!」
そう言いながら、そいつはソーラー銃をぶっぱなして来た。

「反射神経はなかなかのもんだ」
「ああ、地球人も、あなどれんぞ」

「さあ、お前ら!ヘリに乗るんだ!」


ここはベルリン。
ホッホフリゲール将軍の所に電話が来た。
「将軍!フヌールがまたやって来ました」
「今度は何に化けているんだ?」

「フォルクス ワーゲンの車体検査員です。強い度の眼鏡をかけ、身長は60cm」
「前回の奴らの、破壊活動は強力だった。記念切手の裏に塗られたウィルス。わが国はあやうく全滅する所だった」

「われわれの『ドックフード作戦』を完成させなくては!」
身長60cmの亜種人間による、フヌールへのスパイ活動。
「奇襲隊を準備せよ!」


こちらはワルシャワ。
防衛局支部長セルジュニコフは考えていた。
(今度のフヌールはチェス棋士に化けた。そして彼らの第一手はいつもポーン。しかし、彼らを捕まえても、
   またやって来る。それなら、いっそ、奴らに強制労働をさせて、追い返したらどうだ。小さい彼らは、
   ツンドラ地帯での農作業に向いている。1年間の強制労働。これで、奴らも侵略をためらうに違いない。
   もうレニングラードの真ん中で、バラライカ型銃を乱射などさせんのだ!)


さて、ヘリでワシントンまで移送されたフヌールは、ライトフットに聞いた。
「何故、君達は、我々が何に扮装しても、瞬時に見破るのかなあ?」

「君達の身長だよ」
「身長?何が違うんだい?」

「君達はたった60cmしか、ないじゃないか」
「しかし、身長など相対的なものじゃないか。君達だって生まれた時は60cmだし」

「しかし、目立つんだよ。その小ささは」
「ほおお、そうなのかあ。知らなかったなああ。どうにしかして、大きくなる方法はないものかなあ」

「良い事を教えてやろう。これ、地球人の大人が吸ってる煙草だ。我々は子供の頃、
   これをこっそり吸う。すると、身長が伸びるんだ」
「じゃあ、それを吸えば、もう目立たなくなるね」

「ああ」
「吸って良いかなあ」
「ほれよ」

一人のフヌールが煙草を、深く吸い込んだ。
その瞬間、そのフヌールは倍の1m20cmくらいに伸びた。
他の二人も、一緒に伸びたのは、言うまでも無い。

「サンキュー!」
「そ、そ、その煙草を返してくれ!」


その頃、ホーク警視はミス スミスと一緒に、事務所のシェルターの灯の不具合を調べていた。
暗闇の中を探っていると、ミス スミスの体に何度も触れた。

「おお、ぶつかった!すまん!大丈夫か。暗いから気をつけないと」
「ホーク警視って優しい方ですよね。私、警視の様な方に、あこがれているんです」
「何を言っとるんだ。ああ、こらこら、そんなに近づくな。こっちまで倒れる!」

「でも、暗くて判らないんですう」
「うわあ、と、ともかく、離れてくれ。ちょ、ちょっと待っててくれ。一度、事務所に戻る」


大目玉をくらう覚悟で、ライトフットはフヌーク達を連れ、ホーク警視の部屋を訪れた。
しかし、ホーク警視は不在で、変わりにスコッチ ウィスキーが置いてあった。


「おお、この飲み物は何だ?地球人が良く飲んでる奴だ」
「いや、いや、それは置きなさい。それは君達には毒なんだ」

「飲んでみなきゃ、わからんさ」
一口で、フヌールは身長180cmになっていた。

「おお、地球人が小さくなった。これで、我々の太陽系征服も進むぞ」
「いや、正確には、我々が大きくなったのだ」

そこに、ホーク警視がやって来た。
「一体、どうしたんだフヌールが大きくなっているぞ?」
「私の責任です。始めは煙草、次はスコッチ...もう彼らは、人間と変わらない大きさです!」


「待て、待て。フヌールをシェルターに連れて行け」
「どうしたんですか?」

「シェルターにはミス スミスがいるんだ」
「それが、どうしたんです?あ!そう言う訳ですか」
フヌールは地下室への階段を降りて行った

やがて、シェルターから現れたフヌールは、身長2m20cmになっていた。


..............

ディックの描く侵略者には、ちょっと風変わりなモノが多いのですが、これなんか、完全に
”すっとこどっこい”な感じです。

ただ、よくよく、考えてみると怖いんですよね。

同じ顔が、数百、数千、数万...と増える。
うじゃうじゃとした顔が変わる。"Upon a dull Earth:この卑しい地上に", "Second Variety:変種第二号" などなど。
これはディックの根源的なイメージのようです。


記:2011.11.27


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三分 小説 備忘録

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