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ウォー ヴェテラン (1992)現代教養文庫
ウォー ヴェテラン


火星人襲来 Martians Come In Clouds / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Fantastic Universe(1954.6-7) 原稿到着1951 短編 第14作

「また、やって来たぞ。大群だ!ジョンスンの家の屋根にも、一匹、落ちてきた!
   長い棒で、転げ落とされ、群衆に追い回されていた」
「怖いわ。本当にあいつらには、ぞっとする」

「でも、もう大丈夫さ。ところで、夕食は何だい?おっ!好物のスパムじゃないかあ。うまそうだあ!」


ジョンスン家の屋根に引っかかった、灰色のカサカサしたもの。それが火星人だ。

奴らは、2〜3年置きに、地球に襲来する。漂ってくるのだ。まるで、枯葉のように、
吹きすさび、地球に舞い降りる。屋根に落ち、カサカサと音を立てる。地球への侵略!


翌朝、ジョンスンの家には、昨日の件で、警察官が庭を調べていた。
火星人は棒で叩かれ、引きちぎられて死んでしまったのだ。

ジミーはマイクと学校から帰って来る途中だった。
「テレビでは奴らは、殆ど退治されたと言っていたよ」
「しかし、どこかに、眼を逃れた奴がいるに違いないよ」

「僕は火星人を捕まえたいなあ」
「捕まえたら、電話してくれよな。じゃああな、バイバイ」


マイクと別れたジミーは、靴紐がほどけているのに気がついた。
屈んで、紐を結び直すと...もう冬の寒風が、周囲の常緑樹を揺らしているのに、気づいた。

そして、見上げた木の枝、その中に...
(いた!火星人だ!)

樹間に潜んで、こっちを伺っている!老いぼれだ!

そいつは、ゆっくり、ゆっくり降りてくる。
ジミーは見つめていた。動けなかった。

手探りで、木を手繰って降りる火星人。目が見えているんだろうか?

その時、突然、ジミーの心の中で音がした。光が広がった。
別世界だ。それは...火星の風景。火星人が彼に、語りかけているのだ。

平原...乾燥し、ひび割れ、塩の浮いた、灰の体積地。不毛の地...

「あっちに行け!」
ジミーの心のイメージはどんどん強くなる。
死んだ空。埃。蜘蛛の巣。死んだ火星蜘蛛。大地には人口のパイプが突き出ている。
地下居住区への通機口。

大地、大地は水を失い、ひび割れ、萎縮している。
地下タンクの中、火星人は歩き回る。奇妙な機械。植物群。

閉鎖された空間。錆付いたパイプ、ダイヤル、もう動かないものも...

光景は変わる。
青い空、緑の大地。豊富な水。そこに浮かぶディスク型の人口浮遊物。
上にいるのは火星人だ。

彼らは豊かな海から、栄養やミネラルを吸収している。


ジミーは気がついた。
これは、火星人が、彼に訴えているのだ。
彼が棲みたいのは、海の上。使用したいのは海水だった。

それを求め、この地まで漂い、そして今、彼に許可を求めているのだ。


ふと、イメージが消えた。
ジミーは慌てて走った。

バス停に男がいた。
「火星人だよ!火星人!あの木に!」

「火星人だ!銃を持て!」
警官がやって来た。

「奴らに銃は効かん。松明だ。燃やしてしまえ!」

警官がライトを当てると、火星人は大枝にしっかりと、しがみ付いていた。

火星人の捕まった木に松明がかざされた。
火は枝から枝へ移った。火星人は、上の枝へと逃げる。

「逃げるぞ!ガソリンをかけろ!」
木にガソリンが掛けられた。

火はあっと言う間に木全体を包み、上から、何かが落ちてきた。

「踏み潰せ!殺せ!」
「やっつけろ!」

集まった群衆は、落ちた火星人を、踏み潰した。
ぶつかり合う男達も、そのうち殴り合いを始めた。

大騒ぎになった。ジミーはそれをずっと見ていた。

やがて人々は笑いながら去って行った。
立ち尽くすジミーの肩を、警官が叩いた。

「君が発見者だね。ありがとう。見つけた時の事を聞かせてくれないか?」
その時、野次馬達の、新たな乱闘が始まった。警官は、その仲裁へ向かった。

ジミーは、一人、とぼとぼと、家へ帰った。


..............

この後、この話を聞いた父親の描写があるのですが...すいません、上手く、まとめられません。
ディック、何が言いたいんだろう?? ま、少なくとも、ジミー少年の気持ちは、書かれていませんので、
ここで止めた方が、ストーリー的には良い気がします。
(あまりに、不自然なので、この部分に修正が入った気すら、します ???)


しかし、この侵略者のイメージどうですか?
風に吹かれ、カサカサになった侵略者。弱く、無防備で、人々は、それを、退治して喜ぶ。

民族的マイノリティそのものですが、
それが..宇宙を漂ってくるとは???..

そう言えばビルトゥング生物も、地球に漂って来たとされていますが、
こいつらは、バルンガの仲間かい!

ともかく、ブラッドベリの火星年代記が前年の1950年出版だそうなので、すでに、火星人=滅びる民族
と言うイメージはあったのでしょう。

しかし、ジミー少年は、『追憶売ります』(トータルリコールの原作)クゥエールさんと同じく、
妄想系の地球の守護神である可能性もあります。

記:2011.11.14


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三分 小説 備忘録

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