3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

ウォー ヴェテラン (1992)現代教養文庫
ウォー ヴェテラン


生活必需品 Some Kinds of Life / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Fantastic Universe(1953.10-11) 原稿到着1951 短編 第23作

「ジョアン!制服を出してくれ!」
「まだ、使い方がわからないの?」
ジョアンが自動分類機を操作すると、すぐに、壁から軍服が出て来た。

「火星の状況が悪くなっている。帰って来たばかりだが、緊急招集なんだ。うまく行けば2日間で帰って来る」
「パパ!僕も行きたいな」
「トミー!遊びじゃないんだ!戦争だぞ!さあ、学校に行って来い!」
トミーは壁をスクリーンに変え、生物学の授業を開始した。


ジョアンが軍まで車を運転してくれた。自動操縦ボタンを押すだけだが...

「ねえ、前から聞きたかったんだけど、どうして火星と戦争になっているの?」
「おいおい、そんな事も知らんのか?この車が何で動いているか知らないのか?レクセロイドだよ。
   あれがなければ、自動操縦メカニズムは出来ない。そのレクセロイドの、太陽系で唯一の産地は火星だ。
   だから我々は、そこを押さえる必要がある」

「車って、手でも運転できるんでしょ?」
「手で運転なんかしたら、最高速度は100kmが限界だ。通勤に1時間もかかっていたら、
   我々の生活は崩壊してしまうさ」

「判ったわ。そう言えば、去年の金星。あれは何のためだったの?」
「金星と言えば、クライオンだ、我々の社会の根本を支える物質!それ自体で温度を一定に保つ、素晴らしい物質。
   あれが、なかったら、俺達はまた、床暖房に、逆戻りだ。100年前の原始生活にね」

「それから、冥王星はロノライトでしょ?」
「そうだ、ロノライトがなければ、我々の生活は、有史以前の状態になる。ロノライトなしでは光コンピュータが
   作れない。光コンピュータが存在しないなんて、まるで古代ローマだ」

「でも、あなたが戦争に行く必要はないわ」
「いや、責任は、社会全体で持つのさ。ニューヨークだけじゃない。ベルリンやオスロ部隊、
   そして全世界の仲間と、俺達は共に戦うんだ!」


結局、ボブは戻って来なかった。
トミーが世帯主となり、政府のリサーチ プロジェクト研究員になった。
トミーは優秀で、若いながら家族を支えていた。

地区担当のエリクソンは、そんな彼らの面倒を良く見てくれていた。

「トミー、調子はどうだい?お!最新式の自動調理器を買ったのか!うらやましいなあ!」
「エリクソンさん、この装置は本当に素晴らしいです。これで母にも美味しい料理を食べさせる事ができます」

「そうか。お前は本当に親孝行だ。それから、まだ君は白紙カードだったよね?」
「ええ、そうですけど、色カードを持つのは18歳からじゃないんですか?」

「いや、戦況が変わったんだ。我々の社会を守る人間を増やす必要がある。そのため、志願制で、18歳以下の者も、
   色カードを持つ事が出来る様になった。色カードを持てば、ダブルジェット小型戦闘機訓練も出来る様になる」

「本当ですか!一度、乗りたかったんです。親父の様に」
「じゃあ、ここに記入してくれ。早速、申請するから」


「よ〜し。これで、お前も一人前だ。それで、グレコ戦争の事は知っているな?」
「グレコ戦争?」

「今、カリストの原住民との間でトラブルになっている。グレコが取れる動物の帰属に関する問題だ。奴らの主張は
   デタラメだ。我々は正義を遂行せにゃいかん...じゃあ、次の訓練集会で会おう!」

「...い、いいけど...」
「じゃあ、おやすみ!」


「トミ−!貴方の軍服は、とっても似合うわ。昔のパパみたい!」
「じゃあ、ママ。行ってくるよ。二日間だけの、お別れさ!」


トミーは、カリストから、無事に帰って来た。
しかし、その次のエウロパ戦では、そう行かなかった。彼の乗った、ダブルジェットは故障し、
部隊は彼を救出、出来なかったのだ。


「...だから、トレクトーンは非常に重要な物だ。ヴィデオ スクリーンの基本部材なんだ!」
「それは、判ったわ。他の戦争の様子はどうなの?」

「海王星も危ない。あそこにはイデリウムがある。イデリウムがなければ、新聞社は存続できない。社会の基本だ!」
「それは大変ね」

「水星もだ。アンブロリンだ。自動調理器が作れない。我々の食が、脅かされているんだ」
「...ねえ、ブライアン...あなた、何故、そんな話をしに来たの?他に用事があるんじゃないの?」

「さすがに、君の察しの良さには敬服するね。実は、この書類だ...これは、私の考えではない。しかし政府が
   決めた事だ。我々の社会を守るために...トレクトーン戦争では、我々も大きな被害を被った。
   それで、女性が軍に編入できる事になったんだ。特に男性がいない家庭では」

「そうなの、でも、もう町には、あまり人が残っていないわ。始めは男、次は子供、そして、女。一体、誰を守っているの」
「社会だよ。社会を守るために、前線の維持が必要なんだ...期限は一週間だ。考えておいてくれ」


テレビが、土星でのトラブルを報じていた。ナイムファイトと言う聞きなれない名前。それが、適性検査装置に必要な事。
そして、身長50フィートもある、土星人の姿....しかしジョアンの家の、そのテレビを見ている者はいなかった。


オリオン星からの、宇宙船が、轟音を上げて、着陸をした。
大気検査もOK。素晴らしい建物。植物に囲まれた快適な環境。自動化の進んだ文明...どれも素晴らしいものだった。

「伝説の地球の生物は見つかったか?」
「いえ、何処に行ったのでしょう?」

「まあ、やがて、戻ってくるさ。それまで待とう」

..............

あれれ?みんな行っちゃうんですね。
ちょっと、楽観的で、ほっと、しました ( どこが、楽観的じゃあ! )。

ベトナム戦争を経験したから、こうなるんでしょうかね。日本だったら、徴兵逃れをしたズルい人達だけの、”ズル社会”に
なっている、って言う落ちに、なる気がするんですが...どうなんでしょう??それも、それで見てみたいと思うんですが...

ここでの考えも、ディックは、プリミティブと言うか、ピューリタンですね

記:2011.11.06


  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・ディック1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ