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地図にない町 ディック幻想短編集(1976)-早川文庫
地図にない町


薄明の朝食 Breakfast at Twilight / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Amazing(1954.7) 原稿到着1953 短編 第28作

「パパ、学校まで車で送ってくれない?雨が降ってるんだ」
「アール、雨なんか降っていないぞ。霧が濃いだけだ。さあ、学校に行け!」

「あなた、でも不思議な天気ね。遠くが見えないわ。それにラジオも全然聞こえないし」
「確かにおかしいな。このラジオは修理が必要だ」

アールが帰って来た。
「どうした?気分でも悪くなったのか?」

「ううん。兵隊さんが、通してくれないんだ。危ないから帰れって言うんだ」
「兵隊?何があったんだ?」

「回り中、兵隊さんだらけだよ。大砲も沢山あった」

そこに兵隊が入っって来た。
毒ガスマスク、チューブ、ガイガーカウンタ、火器、無線機...

「お前らは何だ、ここで何をしている?」
マスクを外した男の顔は、薄汚れ、切り傷だらけ、歯は折れたまま。

「ブルーカード番号を答えろ!」
兵士は、私に掴みかかって来た。

そこにキッチンからメアリーがやって来た。
「お、女だ?お、女が、何故、ここにいる???」

メアリーは連行されそうになった。
抵抗した私は、兵士の銃で殴り倒された。

「この子も一緒に連行します」
「ま、待ってくれ」
私は、キャプテンらしい男にすがり付いた。

「しかし、何故、この家は無傷なんだ。昨晩のあの爆風を、どうやって避けたんだ?」
「それは..わかりません」


「キャプテン!食料があります。これはコーヒーです!ミルク、卵、肉、なんでもある!」
「全部スネークに積み込め!お前達は一体、何者だ。説明しろ!」
「この食料は、どこから盗んだんだ?言ってみろ!」


メアリーがやって来た。
「ねえ、あなた、このふざけた人達に帰って貰って!
   帰らないと、その内に、近所の人や、郵便配達が来るんだから!」

「郵便配達?何を言ってるんだ、この女は?お前のイエロータグを見せろ」
「何??そのイエローなんとかって?」

「隊長、こいつらは変です。頭が変か、または怪しげな奴等かも知れません」
「焼き殺した方が良さそうだ。いや、ポリックを呼ぼう」

「おいポリックが来るぞ!急げ」
「ああ、軍管区か?奇妙な者に出くわした。五人組みのグループだ。男女と子供が3人。
   マスクもカードもない。家は無傷。...いや本当だよ。ポリックを回してくれ」
兵士達は慌しく動き始めた。私たち家族は、固まっていた。

やがて、近くで雷鳴の様な音がし出した。
「お出ましだ、行くぞ!」

私は外を見た。この家の周りは、廃墟だった。
崩れた建物、瓦礫の山、爆裂の跡。溶けた鉄が固まり、生命の跡はない。

振り向くと男が立っていた。
「私はダグラス。政治管制官だ」
「ポリックですか?」
「そう言う言い方もする」

「手短に答えて欲しい。なぜ、この家は無傷なんだ」
「わかりません。朝起きたら、とつぜんこんな状態に」
「あのね、ラジオが入らなかったのが、始まりなんだよ!」

「ラジオ?そんなものとっくに禁止になっているぞ」
「お前らがジープだ、と言う話があるが」

「ジープ?」
「とぼけているのかも知れないが、ソヴィエトの特殊部隊の事だ」

「じゃあ、戦争が始まったんですか?」
「1978年だよ。ちなみに、それは2年前だがね」

「わ、私たちの時代は、これです...」
私は、手元にあった、図書館の返却票を見せた。そこには、1972年の日付がある。

ポリックは、
「なるほど、君たちはタイムトラベラーだ、と言いたい訳だ」

「荷物は、すべて積み終わりました」
「よし、撤収しろ、後は私が処理する」


「この7年間に何があったんです」
「戦争だよ。世界のいたる所で戦った。中国、ユーゴ、イラン...しかし、君たちも、とんだ場所に
   たどり着いたもんだな。それから忠告しておく。この世界で生きるんだったら、こんな本は捨てろ。
   カラマーゾフの兄弟!あと、標準テストを受けるんだ。うまく行けば、政治部門に配属される。
   ダメなら軍が待っている。息子はカナダ行きだ。奥さんは地下工場で、働く事になるだろう」
「なんて、ことだ」

「今晩、攻撃があるぞ。お前らをここに、呼び寄せた奴より、デカイのが」
「それに乗れば、元に戻れるかもしれない」

「可能性はないとは言えんが、危険だ。だが、好きなようにしろ。逃げたければ、
   この先の空き地に来い。元小学校と言えば判るか?」

「あなた、どうするの?」
「ここに居ても、俺は兵隊。アールはカナダ。お前は軍事工場だ。
   俺は賭けてみたい、今夜の爆撃に」

「でも、爆撃よ。戻れるチャンスは少ない」
「しかし、たとえ生き延びられても、俺はこんな世界でアールを育てたくない」

「でも死ぬよりましよ」
「でも、そんな世界では、呼吸をしたって、生きているとは言えないと、俺は思う」

「わかったわ。賭けましょう」
わずかに残ったコーヒーで最後の晩餐をした。

爆撃が始まった。
ロム=ロボット ミサイル システム。震動で家のガラスが吹っ飛んだ。壁はきしみ
床は波を打った。震動は更に激しくなる。

「地下室だ。地下室に逃げよう!」
激しい、着弾の音が、震動が、耳をつん裂き、家は破壊された。この地下室が
壊れるのも、時間の問題だ!


そして、最後の大音響が響き。突然、静寂が訪れた。

よく聞くと、車の音がする。戻ったんだ!

地下室の扉を開けると、そこには警官がいた。

「マクリーンさん、怪我はないですか?」
「ああ、全員無事です。地下室にいたので」

「しかし、これはどんな爆弾で壊れたんですか。粉々ですよ」
「ああ、いや。これは古いガス給湯器のせいです。前からガス漏れの恐れがあったんです」

警官は釈然としない顔をしていた。

「いや、起きてしまってからでは、遅いんです。おかしくなる前に
   きちんと、元栓を締める事、それが大事なんです」


..............


ま、あの、よく、ある、パターンって言うか...
教科書なんかに、載ってても、おかしくない...教育評論家の皆様が、
SFの名作みたいに扱いそうな...ま、そう言う、クソ話です。

記:2011.09.19


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三分 小説 備忘録

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