3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

時間飛行士へのささやかな贈物(ディック傑作集2)-早川文庫
時間飛行士へのささやかな贈物


時間飛行士へのささやかな贈り物 A little something for us tempunauts(1974) / フィリップKディック 訳:浅倉久志 のあらすじ
初出 Final Stage(1974) 原稿到着1971 短編 第114作

アディスンは、道をとぼとぼと歩いていた。その姿は疲れきっていた。メリーは彼の姿を見かけた。
テレビのニュースに出ている人だ。名前はアディスンだったか?

どうして、ここに?それに、この地を良く知っているような歩き方。こんな所を何故知っているのかしら。
「アディスン飛行士でしょ?ここに何か用があるの?テレビでは全員死亡と言っていたけど?」

「テレビで言ってる事が、すべて本当じゃないさ。それにベンズとクレインも追って、やって来る」
「じゃあ、全員無事なのね。テレビでは、機体が内破したって言ってたけど」
「そりゃ大変だ。じゃあ死ぬ前にワインでも一緒に飲まないかい?連れて行ってもらいたい所があるんだ」

カーラジオでは、テレビニュースが流れていた。
「...初のタイムマシン計画が悲惨な結果に終わった事に哀悼の意を申し上げます...」

「貴方がここにいるんだから、失敗のはずがないわ。このニュースはソ連を騙すためなのね。
   私達がソ連より一歩早く、時間旅行に成功したんだわ」
「いや、違う。ソ連のテストパイロットもやがてここにやって来る」

目的の家はなかなか探せなかった。ここに来たのは一度切りだ。
ベンズとクレインとアディスンは、出会った。

「彼女に俺達の状態を説明してあるのか?」
「判った。こう言う事なんだメリー。我々は、自分達の時代に戻る再突入に際に、失敗して死んだのさ。
   それをこの未来に来て知ったんだ。それでその事故を回避するために失敗しない帰還方法を考えているのさ」

「しかし、これが一度目だと言う保証がどこにある。俺には感じるんだ。俺達は時間に囚われていると言う、
   既知感のようなものが。既に何度も挑戦して、何度も失敗しているのかもしれない。この疲労感が...」

「原因ならテレビが、貴方達は、何かにぶつかったって言っていたわ」
「しかし、転送先に物体があれば再突入には入れない、どこを調べても装置に故障は見られない」

「それに我々は、本来のこの時間に生きている訳じゃない。船外活動時間、通常の時間の流れとは別の領域で、
   この時間と共にいるんだ。この世界から見れば影のような時間の流れ。そしてその時間はもう半分を過ぎている。
   戻らなくちゃいかん。事故の時間へ」

「これから葬式がある。英雄である我々のための。時間局の奴らは、俺達にパレードに出ろと言う」
「観客に手を振って、笑ってやろうか。凍った時間の笑顔を」

「君達が笑う必要はない。厳粛にしていてくれたまえ」
時間局のトード将軍は言った。


競争をしていたソ連の時間飛行士ガウキは言った。
「みなさんは、時間の渦の中に取り込まれてしまったのかもしれません。みなさんが感じている途方も無い
   疲労感、絶望の予兆。それらは、閉じた時間の環が完成した事を示すものかも知れません」

三人を襲う。とてつもない疲労感。俺達は本当に時間の環に閉じ込められて、、
出来もしない解決策を考えているのか。何回も、何万回も、何百万回も。

調査の結果、内破を起こすだけに必要の質量は50kgとわかった。それがどこから
混入したのか?

トード将軍は言う。
「アディスン、再突入は完全に計画通りに行え。間違っても、この閉じた環を終わらせようと、50kgの
   質量を、時航機に持ち込もうとするなよ。その、終わらせようとする試みが、この物語を始めている可能性がある」

(しかし、百万に一回の可能性で、その行為が、この環を閉じる可能性がある。そうすれば、俺達はやっと大人しく死ねるのだ)

アディスンは自動車修理工場から車の廃材を持ってくる。
それを乗せ、メリーに再突入の場所に車で連れて行ってもらう。

途中で、時空局の博士から電話がかかって来た。
「アディスン良く聞け。君達が余分な質量を持って再突入する。それが、この原因だ。その行為が、
   閉じた環を揺るがないものに完成させているんだ。いいか、余分な質量を持ち込むな。絶対だ」
「ああ、しかし、俺はもう疲れたよ。とにかく終らせたいんだ」

もうひとうつの電話がかかって来た。トード将軍からだった。
「今回の君達の貢献に対し、時空局として君達に特別な勲章を贈る事が決まった」

この疲れ果てた心を、その勲章は慰めてくれるのだろうか。

この閉じた時間の環を終わらせようと、とほうも無い質量を持ち込む。
25kgの自動車部品のスクラップ。

時空局からの名誉勲章。この永遠の時間にの流れに耐えるための褒章。

永遠の生。それは、特別で、貴重で、退屈な奇跡だ。


..............


ループ。

音楽であれば、ワンコードだったり、ブルーズのように、半終始で終わる(と言うか、終わらない)
終りがあらかじめ決められていない、形式はあります。
音楽の場合、それは自然でさりげなく、聴いている、ましてや、演奏している人間は、 ループしている事すら、気づかない。

映像や現実では、なかなかループが自然と言う事はない。
ですが、時々、あれ?ちょっと前に、やんなかったっけ?と思う時、ありません?

私は、たまにあります。

この話は、無限ループの一手目の話ですが、それが、無限である以上、

一手目で最終手である、という、まあ、何と言うか、この、観念的なお話なのですが、

記:2011.06.30


  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・ディック1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ