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時間飛行士へのささやかな贈物(ディック傑作集2)-早川文庫
時間飛行士へのささやかな贈物


おお、ブロ−べルとなりて Oh To Be a Brobel / フィリップKディック 訳:浅倉久志 のあらすじ
初出 Galaxy(1964.2) 原稿到着1963 短編 第93作

ジョージは精神科医に、かかっていた。
「では、貴方の経歴を教えて下さい」
「私は復員軍人。対ブローベル戦争で、3年間兵役につきました。諜報員です。勲章も、2つ貰いました」

ブローベルは、プロキシマからやって来た、知性を持つアメーバだ。どろどろした不定形の体を持ち、
二分裂で増殖する。あまり気持ちの良くない、宇宙人だ。

それが、人類との戦争になったのは、人類が火星の大気を、ちょっと変えたからだ。
既に、勝手に火星に住み着いていたブローベルは、その環境は苦手だったようで、紛争が始まった。

ブローベル星から来た大艦隊は、仕返しとして、地球の軌道上に大気改変用の衛星を、大量配備した。
それを、地球側が破壊し...


「ジョージ。貴方は結婚していますか」
「いえ、まだ。それが、悩みなんです。私はスパイになるために、改造手術を受けたんです...」
ブローベルの中で、スパイとして生活するためには、人間の姿をしていてはダメだ。

そこで、スパイ達は、一時的にブローベルの姿に、体を改造していた。
「たしかに、人間の姿に、元の形に戻りました...しかし時々、戻ってしまうんです。
   あのおそろしいブローベルの姿に!もう戦争は終わったって言うのに」

ジョージの収入は、わずかばかりの恩給だけだった。働こうとすると、緊張し、仕事場で、

あのブローベルの姿に、なってしまうのだ。

仕事を頼むと緊張して、軟体動物になってしまう部下。だれがそんな者を雇いたがるか!

家に帰ってテレビを見ていると、眠くなって来た。そろそろ体が溶け出しそうだ。その時、電話が鳴る。
「めんどくさいな。こっちの状況も、考えて欲しいのに」
やっとの事で偽足を伸ばして、受話器を取る。声帯も軟体化して、満足に話はできないが、精神科医からだった。

「実は、あなたの状況を改善する、お話がありまして」
「じゃあ、再手術できるんですか。それは無理だと言われていたんです」

「いえ、私は精神科医ですので、その方面での解決法です。あなたの様な状況の方が、
   他にもいらっしゃる事をご存知ですか。その方と会えば、問題が解決するかと」

ジョージはうんざりした。
「ああ、復員会にも入っていますよ。スパイ仲間もいます。みんなで酒を飲むと、最低ですよ。
   あっちこっちで、軟体動物に変身するんだから」

「いや、違います。元人間の人じゃありませんよ。元ブローベルの患者です」


待合室に行くと、素晴らしく美しい女性が、待っていた。ジョージが見惚れていると、
精神科医が出てきて、二人を呼んだ。
(この彼女が、ブローベル?)

「ヴィヴィアンは現在、ご本人には極めて不都合な、状態にあります。戦争中は、この姿でスパイと
   して御活躍なさっており、戦後、ブローベル星に戻り、本来の姿に戻られたのですが、
   残念ながら、元の姿に戻れるのは、一日の中で1/4ほど、後の3/4はこの状態です」

「はい、それで、私はブローベル星に、いる事も出来なくなって、地球にやって来たのです」

「どうでしょう。お二人が、一緒に暮らすと言うのは。これは確立の問題ですが、共に人間の時は
   うまく行き、共にブローベルの時も、うまく行きます。また別の姿の時も、同じ境遇から、互いへの理解は、
   他の者より深いと思われます。お付き合いされては、どうでしょう。私には、なかなかお似合いに見えますよ」

それから数年が経った。


精神科医のところに、法務省から電話が来た。
「先生!彼らに結婚を勧めたのは、あなたですか。問題が発生しています。彼らは離婚協議に
   入ったのですが、その子供達をめぐって、問題が起きています。彼らには4人の子供がいますが、
   メンデルの法則の通り、一人は完全な人間、一人は完全なブローベル。残りの二人は半人間半ブローベル。
   この半々の子供達の帰属権をめぐって、地球とブローベルで、大問題になってるんですよ」

二人の結婚後、とりあえず一日の内3/4の人間化が確定しているヴィヴィアンにはすんなりと
スチュワーデスの仕事が見つかった。不安定なジョージには、仕事は見つからず、復員会で酒をあおる毎日だった。

おまけに、初めに出来た子は、完全なブローベルだった。
ヴィヴィアンは喜んで、仕事にも張りが出たが、ジョージには、働き場所も見つからない。

やっと、ジョージが個人で始めた、減量ベルト商売がうまく行き、生活が安定して来た。

(これで、俺達は幸せだ、この福祉国家の税金さえなけりゃ!)
(待てよ、ブローベル星じゃあ、税金はどうなっているんだ?)

調べたら、ブローベル星には、税金なんてアホなものはない!
これこそ、俺の求めていた星だ!

ジョージはブローベル星への移住を、ヴィヴィアンに申し出た。しかしヴィヴィアンは断った。
彼女にはもう、地球上で幸せな暮らしがあるのだ...そして、彼らは離婚協議に入ったのだった。

「ヴィヴィアン、本当に別れるつもり?」
「いえ、私も手術したのよ。最新の手術なら体を固定できるの。それで私、完全な人間になったの。
   そうすれば、彼ももうブローベルに行こう、なんて言わなくなると思うの。人間として生きるわ。
   彼も同じ手術を受ければ良いのよ。でも彼が見つからないの。どこへ行ったのかしら」

ジョージは、会社の法律顧問と話していた。
「ジョージ、困った事に気がついた。ブローベルで会社の登記が出きるのは、ブローベル人だけで
   あると言う法律がある。だから君は、ブローベルで、会社を始める事はできんよ」
「何とかならんのか...良い手を考えてくれ」

しばらくして。

ジョージは、偽足をじわじわと伸ばすと、やっと、ショベルを掴み、土に入れた。
やんやの喝采が起こった。ブローベル達が出す、熱狂的な放射波。

ジョージの会社の法律顧問が、ブローベル星の役人に説明していた。
「ジョージは恒久固定化手術を受けました。もう人間の姿に戻る事はありません。
   ブローベルなんですよ、彼は」

「みなさん、ありがとう。私は、ブローベルのために尽くします」
ジョージは放射波を、全開にして、聴衆に思念を送った。


..............


ブローベル...なんとなく、可愛い感じがするんですが、そんな児童書社があったせいでしょうか?

で、どこかの訳で、このタイトルを"ブローベルになろう"って訳している奴がありました。
To be a Brobel が "ブローベルになろう" じゃない事は、私にも判ります。

でも、まあ、ドンマイ! って事で

記:2011.06.26


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三分 小説 備忘録

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