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時間飛行士へのささやかな贈物(ディック傑作集2)-早川文庫
時間飛行士へのささやかな贈物


アフター サーヴィス Service Call / フィリップKディック 訳:大瀧啓裕 のあらすじ
初出 Science Fiction Stories(1955.7) 原稿到着1954 短編 第77作

ドアチャイムが鳴った。明日までに仕事を片付けなきゃならんのに。
夜の9時半。いったい誰だ?

「こんばんわ。ご迷惑をおかけしております。こちらはレヴァレンス街の1846番地で
   よろしいでしょうか?すいません。迷ったせいで遅れてしまいました」
「ああ確かに1846番地だよ。で、君は?」
「ご依頼ありました修理に、参りました。ご不便おかけして、申し訳ありません」

「で?」
「ですから、お客様のスウィブルの調整に参りました」

コートランドはうんざりした。そして、ユーモアを返す事が、できなかった。
それで彼は、大失敗をしてしまった。こう言ってしまったのだ。

「スウィブルって何だ?」

「???何をおっしゃっているのか判りませんが、私どもはスウィブル修理のトップメーカでありまして、
   お客様が心配されるような会社ではございません。かのRJライトがA型実験モデルを発表した時からの
   修理実績のある、信頼にたる会社でございます。これが名刺でございます」

「ま、とにかく、君は住所を間違えたんだよ。うちにはスウィブルはない」
「ご冗談を。いや、今のは今年一番のジョークです。しかし、申し訳ありませんでした。
   私の間違いだったようです、失礼します」

修理員は帰った。コートランドは、仕事に戻ろうとした。...しかし戻れなかった。

何なんだ、スウィブルって言うのは?私は、電器メーカの市場調査員、世にある新製品で、知らないものなどない。
それが、専門の修理会社まである程、普及しているとは、それにさっきの奴。あれは本物だ。テレビに出てくる
三流役者のやる、まがいもんじゃない、修理員を10年やらなきゃ身につかない、あの態度。

コートランドは、男の名刺を見た。支店はこの近所だ。そして、本社の創立日の記述を見て驚いた。10年後!

コートランドは驚いた。あの男。未来から来たのか?それとも悪戯か。
しかし、あの男の言葉を信じるならば、各家庭にスウィブルとやらは、一台ずつあるらしい。
あいつ、もう一度来るかも?コートランドは社長に連絡し、会社から有能な社員を、かき集めた。

「スウィブルって何だと思う」
「個人用一輪自動車では?」

「プラスチックのブラジャーでは?」
「ま、とにかく、それが国中に普及する訳さ」

ドアチャイムが鳴った。
「あ、あの、申し訳ありませんが、書類を何度確認しても、こちらの番地が、ご依頼先のようなのですが..」

(よかった!修理員は戻って来た!)
「やあ、良く来たねえ。待ってたんだよ」

部屋の中には、笑顔の男達が沢山。ビデオカメラに照明。

「???、ま、とにかくスウィブルは、どこですか?」
「まあまあ、そう急ぐな。君、名前は何と言うんだね?」

「名前?私はまだグループ4レベルの修理員です。ですから、まだ名前はありません」
「?名前はないのか...じゃ、じゃあ、君は修理員だ。スウィブルの図面を持っているだろう。
   ちょっと見せてくれないかなあ。スウィブルの仕組みには、とっても興味があるんだよ」

「図面?何をおっしゃっているのですか?意味が判りません。
   ともかくスウィブルはどこですか。早く仕事をしたいのです」

「ああ、実はだね。スウィブルを持っていないんだ。以前住んでいた
   所では、スウィブルは使われていなかったんだ」

「不思議な話ですね。それは一体、どこですか?」
「いやいや、え〜と、ま、私たちが変わっていただけさ。気にするな。しかしここにスウィブルが
   ないのは事実だ。カタログをくれないか。すぐに注文したいんだ」
「あいにく手持ちがありません。オフィスに戻って送らせます」

「だから、悪いが、君がどうやってスウィブルを直すのか、教えてくれないかなあ」
「はあ、ご興味があるのであれば。お教えしましょう。まずdXを注入します」

「dXとは何だね。私は専門用語はわからんのだ」
「dXをご存知ないとは思えませんが、スウィブルに与える高たんぱく液です。
   ああ、お客様は、ごく初期のスウィブルをご存知なのですか?」
(たんぱく?餌か?生きているのか?)

「ああ、最新型は、どんな感じなのかなあ」
「最新型は、戦争でかなり変わったのです」
「戦争って、ロシアと...ア、アメリカかな。歴史には詳しくないんだが」

「あはは、ご冗談を。全面戦争ですよ。あの数ヶ月で終結した。そして、
   始まったのですスウィブル戦争が。これはもちろん、ご存知でしょう?」
「ああ、ああ、知ってはいるが...一応、確認したいんだが...」

「人類の最大の戦争は、スウィブルをめぐる戦争だったのです。そして、我々は勝ったのです」
修理員はウィンクした。

「それで、負けた方はどうなったんだ?」
「一般の方が、これほど歴史をご存知ないとは驚きました。
   負けた方がスウィブルに食べられたんですよ」

「スウィブルは、元々何のために出来たんだっけ」
「もちろん敵のスパイを、見つけるためですよ。誰もスウィブルの前でニセの忠誠心で
   ごまかす事はできません。敵のスパイは、すべてスウィブルに食われました。
   社会の思想は統一し、やがて、世界のイデオロギーは本質的な2つになりました。
   つまりは、スウィブルに賛成するか、反対するかです」

「そして...」
「スウィブルは我々の世界の内にいる敵を狩り出しました。かつては敵を倒すためには、
   飛行機や戦車が必要でした。しかし今は、スウィブルを持つだけで良いのです。
  
   貴方や貴方の家族の仲に、誤った思想を持った敵が生まれると、それをスウィブルが
   自動的に消してくれるのです。これで世界の平和が保たれるのです。スウィブルは世界に
   平和と安定をもたらす、究極の生物です。人間は彼らなしに、平和な社会は築けません」

「...」
「あ!話が長くなってしまいました。ではスウィブルを取り寄せる手配をしましょうか」

「いや、君は間違えたんだ。場所じゃない、時間だ。君がやって来たこの
   時代にはまだ、スウィブルは生まれていないんだ。君は間違えたんだ」

「そ、そうか、それで、この不思議な町は。どう考えても、戦争以前だ!」

修理員は部屋から逃げ出した。その姿はやがて消え、見えなくなった。

「スウィブル!あんな生物を、我々はやがて持つのでしょうか?」
「ああ、そうだろ。しかし俺は認めん。そんなものを」

またドアのチャイムが鳴った。
開けると、修理員がいた。

「何だ。お前の時代に、消えたんじゃないのか?」
「いえ、新製品をお持ちしました」


..............


ま、この落ち。"トタン落ち"かな?

しかし、この一文どう思いますか?

「スウィブルって何だと思う」
「個人用一輪自動車では?」

セ、セグウェイ?

記:2011.06.24


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三分 小説 備忘録

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