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時間飛行士へのささやかな贈物(ディック傑作集2)-早川文庫
時間飛行士へのささやかな贈物


父さんに似たもの The father-thing / フィリップKディック 訳:大森望 のあらすじ
初出 Fantasy & Science Fiction(1954.12) 原稿到着1953 短編 第34作

ウォルトン婦人は、8歳の息子チャールズに言った。
「ご飯ができたから、お父さんを呼んできて」

「でも、お父さん、今、用があって忙しいみたい」
「何なの、その用って?」

「お父さん。自分と話してるんだ」
「独り言を言ってるの?まあ、あの人らしくない」

「ちがうんだよ。だから、どっちを呼んだら、良いのかなあ」
「何、ふざけてるの!」

その時、お父さんがリビングに入って来た。
「刃物の手入れを、していたのさ。植木ばさみは、ピカピカになった。何でもスッパリだ」

お父さんの日焼けした顔。厚い胸板。黒いひげ。でも何か違う!
チャールズは、ブルブル震え出した。

「もう一人の方だ!」
チャールズは、お父さんに、ものを投げつけた。

「あっち行け!この家から出て行け!」
チャールズは、2階の部屋に逃げ込んだ。

「あら?あの子、一体どうしたのかしら?」
「いや、大した事はないよ。ちょっと、あいつとゆっくり話し合う、必要があるようだ」
お父さんは、チャールズの部屋へと、上がって行った。

チャールズは窓を開けて、飛び降りた。
(こんな事は朝飯前さ)

そして、納屋へ行った。お父さんと、お父さんのようなものが、話していた納屋へ。

そこで見つけた。がらくたの山の後ろに。

しわしわになった皮。良く見ると、お父さんの面影が僅かに残っている、カサカサの抜け殻。

中身は???
あいつが食ったんだ。そして、体を作った!

「おいチャールズ!そこにいるんだろ。判ってるぞ」
お父さんのようなものの、大声が聞こえた。

「あなた、チャールズに乱暴しないで!」
「ああわかってるさ、話せばわかる。すぐに大人しい良い子にさせるよ」

チャールズは逃げた。小屋の壁の穴、裏通りの家と家の隙間。
大人が知らない、大人には通れない隙間を通って。

そして、ベレッティの所に行った。14歳。ベレッティは頼りになる。

全て話した。ベレッティは半信半疑だった。でも空気銃を掴むと、納屋まで行ってくれた。
そこで証拠を見せた。カサカサの父さんの抜け殻。

「お、お前、こりゃ大変だ!」
こっそり、窓から家の中を覗いた。部屋の中では、父さんのようなものと、母さんが口論していた。
母さんがいなくなって、しばらくすると、
父さんのようなものの姿が、ドロリとした何か軟体動物のようなものになった。

「...あれが正体だ」
「あいつ、まるで突然電源が切れたみたいになった」

「どこかに操っている奴がいるんだ。探そう」
「なら、ボビーが良い。あいつは、落し物拾いの名人だ」

やって来たボビーは眠そうだった。だってボビーはまだ9歳の黒人の子。
しかし、さすがにボビー。あっと言う間に、怪しい穴を見つけた。
中を探ると、30cmのムカデのような多脚の生物が。

「早く!空気銃で打て」
ベレッティが銃で撃つと、虫は激しくもがいた。

「うわあ!」
虫は精神波で攻撃して来た。頭が痛い!割れるようだ!

「は、早く、仕留めろ!そうだ、ホルマリン液があるぞ」

その時。
「チャールズ!もう悪戯は終わりだ。さあ、お前ら、お仕置きの時間だ」

お父さんのようなものが、チャールズ、ベレッティとボビーを押さえつけた。
「お前達、市街地では、空気銃は禁止なのを知らんのか!」

「うるさい!」
ベレッティは父さんのようなものの、目をめがけ、銃を打った。そして、みんな逃げ出した。
チャールズは草むらに隠れた。

「チャールズ!その辺りにいるのは判ってるぞ」
父さんのようなものが近づいて来た。その時、チャールズは、不思議な繭のようなものを見つけた。
それは、母さんのようなもの。まだ白くて柔らかいが、殆ど完成している。

いつか母さんが傍を通ると、母さんのようなものが出てきて、母さんを食べてしまう。

そして母さんの振りをする。
その母さんのようなものの、隣には、小さな繭があった。
それは、チャールズのようなもの!

「ここか!チャールズ」
チャールズは、父さんのようなものに捕まった。父さんのようなものは、
チャールズのようなものに、向かって言った。

「さあ腹が減ってただろう。こいつを食わせてやる。すぐに元気になるぞ」
父さんのようなものは、チャールズを抑えて、チャールズのようなものに食わせようとした。
「やめろお!」
必死に抵抗するチャールズ。食われる!

その時突然、お父さんのようなものが、暴れ出した。そして、苦しんで倒れた。

ボビーとベレッティが顔を出した。
「ガソリンを見つけたんだ。それをあの穴に入れて火をつけた」
「ガソリンか。よく思いついたな」

いまはもう、お父さんのようなものは、ドロドロに溶けていた。


..............


よくありそうな、話ですが、
リアルさと言うか、虫や繭の描写の冷え冷えとしたところが、何とも言えません。

記:2011.06.22


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三分 小説 備忘録

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