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顔のない博物館-北宋社
顔のない博物館


よいカモ Fair Game / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 If(1959.9) 原稿到着1953 短編 第33作

アンソニー教授は家で、くつろいでいた。

原子物理学の権威。もう引退すべき年ではあるが、彼に匹敵する後継者はまだいない。

安楽椅子に座り、外を眺めていたアンソニー教授。
突然、口をパクパクさせながら、恐怖の表情で外を見つめた。

窓の外には”巨大な眼”があったのだ。

眼は突然消えた。まるで、覗いていた顕微鏡から眼を離した様に。

「いったい、どうしたの?」
妻のローラが、声をかけた。
「誰か、外にいたの?」


アンソニー教授は、友人のウィリアム教授に、相談に行った。
「なあビル。私は、その眼をはっきりと、見たんだ。信じてくれるかな?」
アンソニーの話をメモしていたウィリアム教授は、ペンを置いた。

「ああ。で、その眼をローラは見たのかい?」
「いや、私だけだ」

「他の可能性を考えよう。大きな動物、大きな目。例えば巨大なナマケモノとか」
「いや、その眼の大きさは窓一杯、ピアノくらいの大きさだ」

「それが、見下ろしていたのか。君の事を」
「ああ、何と言うか...神...かも知れん」

「まあ、待て。神とは無意識の力の心理的な象徴だ」
「ローラに神の事を言ったら、私の頭がおかしくなったと思っている様だ」

「しかたがない彼女は、科学的な考察になれていないから」
「何か、合理的な説明はないものか」

「観察されていたのだろう。地球上の生物で、該当するものがないとすれば、別の世界の生物に」
「たとえば、火星とか..?」

「まあ。とにかく、今日は、睡眠薬を飲んで寝るんだね」
「たしかに、そうだ」

帰り道、アンソニー教授は考える。
(学生のいたずら、って事はないか?最近、急進派学生も増えているし...)

アンソニー教授は、ヘッドライトの灯の中、道路脇に、輝くものを見つけた。
窓を開けて見ると、それは、金の延棒だった。

(何故、こんな所に、金の延棒が?どうせ、いたずらに決まっている。鉛の塊に金メッキ。よくある奴だ)
アンソニー教授は、車を出す。

しかし、運転中に考える。
(あれが、偽物でないとしたら?確率的に少ない、めったにない幸運だったとしたら?
褒章。それ以上に、市民として届出の義務がある)
彼は車をバックさせ、金が落ちていた所に、車を止めた。ダッシュボードの懐中電灯を探す。

そこで、気がついた。

暗闇。辺りには誰もいない。
こんな所に引きずり出された事を。罠だ!

奴らが隠れているのは何処だ?
森だ。森! 逃げなくては!

アンソニー教授は車に乗った。
窓から見ると、金の延棒は、既に薄く、消えかかっていた。

その時、何かの気配に気づいた。 上だ!

アンソニー教授が、窓から空を覗くと。

そこには星がなかった。月も。
代わりに、空一杯に顔が、浮かんでいた。何かの生物の、"顔"だった。

アンソニー教授は、車を発進させた。

な、何かが、俺を狙っている。俺を。


「今度は、特大の顔か。君は完全に狙われているな」
「理由は何だろう。考えてくれ」

「ともかく、君のような経験は、古い書物に残っている。モーゼ、チベット僧侶、などなど。君は選ばれたんだ」
「何故だ?」

「それは、君の才能じゃないかな。世界一の原子物理学者。もしも、彼らが、人類を作った神で、
   何かを収穫しようとしたら、それが君の知識や才能であると言う可能性はある」
「人類は、培養されていた、と言うのか?」

「培養菌の中の特別に繁殖力が旺盛な奴を、別の容器に移す。それは、俺達が良くやる事だ。
   君の知識を活用したいのさ。文化寄生体とでも言えば良いのか」

その時、アンソニー教授は、窓の外からの若い女性の声を聞いた。
「アンソニー教授!アンソニー教授!」
彼は、外へ出て行った。

仲間達は、アンソニー教授が突然、外へ出て行ったので、驚いた。
「アンソニー教授!いったい、どうしたのです。どうして、外へ?」

仲間の声は、アンソニー教授には聞こえなかった。
アンソニー教授は、女の声を追った。女のところには、なかなか近づかない。

突然、雷がなり、女の姿が消えた。
(しまった!これも罠だ)

アンソニー教授は、家に戻り、そのまま車を出して逃げた。

そしてハイウェイを走っていると、突然のパンク。
(しまった、完全に罠にかかって、しまった)

タイヤを調べていると、空から、何かが降って来た。
ついにやって来た。

巨大な、宇宙ネット。

アンソニー教授は、すくい上げられた。
しかし、アンソニー教授の心は、意外に落ち着いていた。

(もう、仲間達と会う事もないかも知れない。しかし、これからは別の世界の者達と
   意思を疎通させていくのか。いったい、どんな生物なのか?)

新しい世界が見えてきた。巨大な世界。巨大な生物。

彼らの気持ちも感じ取れた。

『スゴイゾ、掘リ出シモノダ!』
『24ヴァゲットノ、価値ハアルゾ』

そして教授は、網から落ちていった。
下を見ると、教授には、それは、まるで、フライパンのように見えた。



..............


なるほど、邦題は、落ちの暗示だったんですね。
たぶん、どこかが肥大化してるんでしょう。頭かな?

と、考えると、この邦題は実に深いですね。脱帽です!

記:2011.07.06

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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