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顔のない博物館-北宋社
顔のない博物館


ドアの向こうで Beyound the door / フィリップKディック 訳:仁賀克雄 のあらすじ
初出 Fantastic Universe (1954.1) 原稿到着1952 短編 第3作

ラリーは、可愛い妻のドリスが、前から欲しがっていた。
アンティークのインテリアを買って来た。

カッコウ時計。

手作りで、カッコウが出てきて時を告げる。
ちょっと、不調の中古品だけど。
それを壁に取り付けた。

「まあ!」
ドリスは笑顔だった。気に入ったらしい。

「実は、値段が貼ったんで、友達に頼んで卸値で売ってもらったんだ」

たちまち、ドリスの顔が曇った。
(やっぱり、気に入らなかったのかな?)

ラリーは、ねじを巻いて、時間が来て、カッコウが飛び出すのを待った。
まだ、鳴る時間は、随分先だ。

二人は沈黙する。

装飾のない、カッコウ時計。
カチカチと音がする。

ドリスは思っている。
(何よ。この人。卸値で買ったなんて!嫌な言い方!それなら買ってこなければ良いのに。台無しだわ)

そして思う。
(きっと、ボブなら、こんな酷い言い方はしない。それに、あの人なら、これの本当の価値もわかるわ)

カッコウは、時報と時報の間は、何をしているのだろう。

そして、待ちに待ったカッコウが、顔を出した。

カッコウは扉を開け、まん丸の目で、初めての部屋を見た。そして、羽ばたくと、くるっと振り返り
中へと帰って行った。

ドリスは大喜びだった。
カッコウ!カッコウ!あなたは、世界で一番素敵なカッコウだわ!

それから、ドリスはカッコウに夢中だった。
カッコウも本来の1時間置きではなく、15分置きに出てきて、ドリスを喜ばせた。

カッコウが出てくるたびに、巻いたネジを緩めるので、
ラリーは、しょっちゅうネジを巻かなくては、ならなかった。

ドリスとカッコウの相性は、ぴったりだった。
しかし、ラリーとカッコウの相性は、悪かった。

ドリスが見ていればカッコウは、15分置きに出るのに、
ラリーが見ている時は、1時間置きにしか出なかった。

「あなた、どうしてカッコウの扉を押さえるの?出て欲しくないの?」

ネジを巻く時に、ラリーはカッコウの扉を押さえて巻く。
それがマズイのだと言う。


日曜日、ラリーは仕事だった。
その留守中に、ボブがやって来た。

「どうぞボブ。貴方が気に入る人がいるわ。きっと彼を気に入るわよ」
「彼って誰だ。別の男がいるのか?」

そして、二人は、彼=カッコウが出てくるのを待った。

そこに、ラリーが帰って来た。
「ボブ!何してる?とっとと帰れ。二度と顔を見せるな!」


ドリスは出て行った。きっとボブと一緒だ。

ラリーはカッコウと、家に取り残された。
今では、カッコウは1時簡に1回どころか、日に数回しか出てこなくなっていた。

ラリーは、椅子に乗り、カッコウ時計に向かって言う。

「おい、お前が小屋の中で俺の話を聞いているのは判っている。
   奴らは今頃、何をしてると思う?
   骨董だあ、芸術だあ、あんなものは女のやるもんだ。それを、あのボブの奴め!
   おい、聴いているのか? 何で、最近、出てこないんだ。
   お前を買ってやったのは、俺だぞ! 11時まで、待ってやる。絶対出て来いよ!」

しかし、11時になっても、カッコウは出て来なかった。

「お前も、あの二人と同じ奴だ。なら、俺には、しなくちゃならん事がある」
ラリーはハンマーを持ち出した。そして、椅子に乗って、ハンマーをカッコウ時計に合わせた。

「さあ、言いたい事があるなら、出て来い!時間になったら出てくる。それがお前の仕事だろう!」
ラリーは、時計の硬く閉ざされた扉に向かって、声を荒げた。この中に奴はいるのだ。

その時、突然、カッコウが出てきた。クチバシはラリーの目を襲った。慌てたラリーは、椅子から転げ落ちた。


「ドクター、どう思います?こんな低い椅子から、落ちて死ぬもんでしょうか?」
刑事は、不思議な形に体をひねった状態で、頭部強打跡を残した死体を前に、検視医に聞いていた。」

「事故ですかね。それとも自殺?いや、そんな馬鹿な」
「何か他の原因は、思いつきませんか?」

死因は、見つからなかった。


..............



ドリスがいなくなった後の、ラリーの行動=妄想は、最高です。さすがディック。
ここは"本物さん"にしか、書けませんね。しびれます。

この話、間に合わせのオチが付いていますが、明らかに蛇足ですね。
(たぶん、わかり易くするために、妥協したんでしょうが、それとも書き直し?)

ともかく、このカッコウとラリーには、末長く、いがみあって欲しかったもんです。

あとタイトルですけれども、ドアじゃなくて、扉ですよね

記:2011.06.21

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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