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模造記憶-新潮文庫
模造記憶


追憶売ります We can remenber it for you wholesale / フィリップKディック 訳:深町真理子 のあらすじ
初出 Fanrasy and Science Fiction(1966.4) 原稿到着1965 短編 第106作

クウェールは今日もまた、火星の夢から目が覚めた。
火星!あこがれの場所。政府の高官やスパイでもない彼には
手が届かない場所だ。しかし、いつかは行ってやるぞ!

しかし安月給の俺には、何時になる事やら...

「何をニヤニヤしてるの!あなた、また火星の夢みたのね。ちょっと異常よ。
   どこかゆっくり出きるリゾートにでも、行きましょうよ。火星なんか忘れなさい」
「リゾートは、また今度にしよう..」

クウェールはリコール社に入った。ここは旅行の記憶を与えてくれる会社。
実際に旅行したとしか思えない、完全な記憶。幾つかのお土産。写真などを、与えてくれる会社だ。

しかし、たかが記憶である。忘れてしまっては元も子もないし、
第一、それが嘘だと言う事を、自分自身が知っているのだ。

しかし、説明者マクレーンが言うには、リコール社が与えてくれるのは、完全な記憶。
つまり本人も、行ったと思い込むほどの記憶だと言う。そんなものを与える事ができるのだろうか?

そして彼は幾つかのコースの中から、スパイとして火星に乗り込む、という設定を気に入り頼むことにした。
何故か、不思議な不安感を持ちながら...


「困りました。どうしたものでしょう?」
記憶定着オペレータからの緊急連絡に、マクレーンは困惑していた。
クウェール氏への作業中、記憶定着作業に問題が生じたのだ。

「記憶が入らないだと?何時ものように、どこか2週間ほどの記憶を消せば良いだろう?」
「いえ、今回の問題は、そう言う種類ではありません。実は、既に火星の記憶があるんです。
   とりあえず、昏睡状態のクウェール氏と話してみて下さい」

「クウェールさん。貴方は火星に行った事があるんですか?」
「ああ、インタープランの諜報員としてね」
先ほどとは、うって変わって、ドスの効いた声で話すクウェール氏。その様子はまるで、
スパイそのものだ。今は昏睡中であり、彼が嘘をついている事はありえない。

「どうも、彼は諜報員だったのに、記憶を消されたようです。その失っていた記憶が
   彼を火星旅行に魅き付けたのでしょう。また目が覚めたら、元のおとなしい男に戻るでしょうが」

「しかし、本当の記憶を消された男に、また記憶を与えて大丈夫なのか?
   それに、彼は何故記憶を消されたのか?そんな事に関わって大丈夫なのか?」

「記憶定着は途中までにして、代わりに金額を半分にして、お帰り願おう」

クウェールは、火星旅行からの帰りだった。楽しかった火星旅行を思い出していた。
ふと財布を見ると、大金が!

どうして?火星旅行で殆ど使ったはずなのに...待てよ!リコール社!そうだ、あそこだ!奴等め!

クウェール氏はリコール社に文句をつけに言った。
「俺は覚えている。ここにやって来て、完全な記憶を植えつけてもらった事を。しかし、どうだ。
   俺は今、すべてを思い出している。君達の処置は不完全だ。意味がなかった。さあ、全額を返して貰おう」

そしてクウェールは家に帰り、火星土産を見る。机の中の、貴重な火星生物の標本。
これを採取した時は、本当に興奮した。行ってもいないのに?

 しかし、この土産はリコール社が用意したのか?
こんな貴重なものをくれるなんて、初めの契約に入っていただろうか?

彼は妻に尋ねた。
「なあ、俺は火星に行った事があったっけ?」

「行ってる訳がないでしょう?いつも行きたいって言ってるだけじゃないの」
「ああ、でも、行った事がある気がするんだ。でも行ったはずがないなんて、
   俺は分裂症になってしまったのかもしれない」

「じゃあね。もう貴方は終わりよ。私は行くから」
クウェールの妄想にあきれた妻は、出て行ってしまった。

そして、入れ替わりに入って来た男が、
「クウェール手を上げろ。お前、記憶を取り戻したらしいな。

今日、テレパシー送信機が、教えてくれたよ。ちょっと、付き合って貰おう」
テレパシー送信機!火星で見つかった土着の原形質か作られた、おぞましい有機機械!
俺の頭の中に、そんなものが仕込まれていたのか!どうして?

「何の事なのか、良くわからん。俺はちゃんと、思いだした訳ではないんだ」

「いや、かなり思い出しているさ。我々が、お前の机の中に忍ばせていた火星生物の標本。
   昨日までは、あれを見ても、何の反応もなかった。それが今日は違う。
   お前は、そのうち全てを思い出す」

銃を突きつけられたまま、彼は連行されていた。
一体、何処に連れていかれるのか?

そして、彼は思い出した。自分が火星で諜報員だった事。殺人のための厳しい訓練を受けていた事。
その力を使えば、今、目の前に居る奴等を倒す事など、朝飯前の事を。

クウェールは飛んだ。男は銃の引き金を引いたが、すでにクウェールの体は相手の横に移動し、
銃を叩き落し、腹部に強烈な鉄拳を入れた。たちまち男は崩れ落ち、意識を喪った。

もう後戻りは出来ない。俺は火星の諜報員だった。そして記憶を消された。
それは思い出した。しかし何故だ?

その時、頭の中で声がした。
「クウェール君。どうも記憶を戻したらしいね。それは良かった。また、我々に強力してくれないか」
「お前は誰だ?」
「我々は、君が記憶を失うまで、共に戦っていたのだ。ともかく、我々のニューヨーク支部まで来てくれ」
クウェールインタープランのニューヨーク支部、つまりはリコール社へと戻ってきた。

インターポールの精神科医が、クウェール氏の精神状態を、調べていた。
そして、クウェール氏の記憶の根源にある妄想を発見する。とびきりの「誇大妄想」を。

「こんなやつです。彼が子供の頃、地球を訪れた異星人のUFOと出会う。そこで彼は異星人と話をする。
   実は異星人は、地球人と言うものが、どんなものか判っていない。
   凶暴であれば、全滅させてしまおうと思っていた。
   しかし、異星人はクウェール少年と話し、彼の素晴らしい性格=人格に感銘を受け、彼が生きている間は、
   決して地球を侵略する事はない!と約束する。
  
つまり、彼はただ生きているだけで、地球に対して最高の貢献をしている!と言う訳だ」

「そんな、幼稚な妄想を持っているんですか。この人は?」
「彼みたいな人間には、相応しいんだろ」

「そこで、異星人との契約の証拠である異星の言葉で書かれた感謝状を作って、
   彼の部屋に、置いて、彼の記憶の補強をしようと言う訳です」

その時、彼の部屋に、証拠の感謝状を隠しにいった者から連絡が来た。
彼の部屋には、既に同じような、古びた感謝状があったそうである。

「マクレーンさん、クウェールさんは大事にした方が良さそうです。
   もしかすると、彼は、地球で一番大切な人なのかも知れません」



..............


このオチ、大好きなんですが、映画では、この切れが、全く表現されていませんでしたね。
シュワちゃんで、ヒーロー映画にしちゃったからね。このオチが似合う人いないかな?

ニコラス ケイジ? 意外と、キアヌ リーブスでも、怖くて、良いかも

いや、やっぱりシュワちゃんで、このオチがベスト マッチですね!

記:2011.04.24


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三分 小説 備忘録

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