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模造記憶-新潮文庫
模造記憶


逃避シンドローム Retreat Syndrome / フィリップKディック 訳:友枝康子 のあらすじ
初出 Worlds of Tommorow(1965.1) 原稿到着1963 短編 第96作

治安官はスピード違反の車を発見する。それもとんでもないスピードで走っていた。
捕まえてみると、その男ジョン クパチーノは言った。
「以前住んでいたガニメデでは、速度制限などないんですよ」

しかし速度制限機まで外しているとは!手の込んだ奴だ。
「クパチーノさん、貴方は今、自分がガニメデの家のベッドの上で、ドラッグを
   やりながら、地球で車を走らせてるとでも、思っているんですか?ここは地球ですよ。
   貴方の行為は、極めて危険です」

「いや、そんな事は思っていない。私は地球にいる。しかし、これを見てくれ。この世界は、何か少し変だ。
   かかりつけの精神科医を呼んでくれないか」

そう言うクパチーノが、ダッシュボードに手を伸ばすと、ダッシュボードは変形し、彼の手はめり込んだ。
彼の周囲は、彼の意思のままに変形するのだ!

治安官は思った。こいつはもしかすると、現実改変能力を発揮させる、ヤバいドラッグの中毒者じゃないのか?
だったら、早い所、その精神科医とやらに引き渡した方が良い。

クパチーノはハゴビアン医師の治療院へ運ばれた。
「クパチーノさん、また、ご自分の記憶を語って頂けますか?」
クパチーノは、記憶を語り出した。妻を殺害し、今、地球で治療を受けている事を。

「どうして貴方は、自分の奥さんキャロルを殺したと思っているのですか?彼女は死んでいませんよ」
「キャロルは、ガニメデ解放運動の事を、マスコミに漏らそうとしたのです。それで私がレーザー銃で...」

「しかし、そんな記録はどこにもありませんよ。一度キャロルさんと会ったらどうです?」
(どうして、この男は自分の妻を殺した、という記憶を持ったのだろう?)

そして、クパチーノはキャロルの家に行った。
キャロルは、彼を出迎えコーヒーを入れてくれた。

「ところで、貴方はまだ、私を殺したっていう、固定観念を持っているの?」
「ああ、残念ながら、その記憶は捨てきれない。君がガニメデ解放運動を、マスコミにリークしようとした時...」

「貴方は、私にレーザー銃を撃ったわ」
「それで、どうなった?」
「外れたのよ」

「そうか...しかし記憶が...」
「貴方は、泣いていたわ。私は、すぐさま、離婚訴訟を進め、警察に訴えた。貴方は捕まって、でも弁護士が
   貴方の精神の不安定を主張し、罪を逃れた代わりに、精神科の治療を受けるよになったの」

そして、彼女が言うには、妻殺しの記憶を植えつけたのは、ガニメデ解放運動団体らしい。
「貴方に自殺して貰いたかったのよ。そして貴方は自殺した。未遂だったけど」

(自殺未遂?そんな馬鹿な!そんな記憶は全くない。だいたい、この妻は、何かおかしい)
「変な記憶を持っているのは、僕だけじゃないのかもしれない」

この世界は一体何だ?
「少しわかってきたぞ。キャロル!君は実在しているようだ。そして、ハゴビアン医師。彼も実在するのだろう。
   しかし、この場所。これは変だ。ここは本当は、ガニメデの牢獄か精神病棟だろう」

(それに、この女は実在しているが、これがキャロル本人だとは、限らない。誰か別の人間がキャロルの
   振りをしているのかもしれない)

彼は自分の家に戻った。
そうだ、ハゴビアン医師にテレビ電話をかけてみよう。

「もしもし先生。あんたは今ガニメデにいるんだろう。俺もそこにいる」
「何を言ってるんだ。君はロス。私はサンノゼだよ」

「あんたの治療を止めようと思う。そうすれば、この精神の牢獄から出られる気がする。
   俺は囚人じゃなくて、自由市民なんだから、治療を止める事は、当然出来るよね?
  
それに、"キャロル"が、俺を監視しているらしい事もわかった。解放運動の手先らしい」
「クパチーノさん?反乱は成功したんですよ。そんな事は子供でも知っている事です。もう終わったんです」

「じゃあ、反乱が失敗したと言う記憶も、俺に植え付けられた記憶なのか?」
クパチーノがテレビ電話のモニターに手を伸ばすと、手はモニターの中に消えた。
(やっぱり、これも幻覚だ!しかし完璧ではない。どこかでボロが出る)

例えば血液検査をしたらどうだろう。血液中にドラッグの成分が出れば、幻覚中と判断できる。
しかし、血液検査そのものが幻覚だったら...
そうだ。良い事を思いついた!

「先生、良い事を思いついたよ。ロスに行って、もう一度キャロルを殺すんだ。三年前に死んだ女を
   殺す事は不可能だ。だから、俺は彼女を殺せないし、俺の記憶を証明できる!」

「落ち着いてくれ。クパチーノさん。わかったよ。貴方の話は、ある程度正しい。証明の必要はない。
   君は今、ガニメデにいる。しかし、牢獄にいるのはキャロルの方だ。彼女は反乱軍に捕まった。
   君は、妻に話してしまった責任を感じて自殺しようとしたが、失敗したのだ」

(それが、本当だと言う証拠がどこにある!)
クパチーノは計画通り、キャロルにまた会いに行き、殺した。

「こんちわ先生、新聞見せてくれないか」
クパチーノがハゴビアン医師の元を訪れた。
(ない?何故、殺害事件が新聞に載っていないんだ?)

「どうしたんだ?自分が殺したキャロルの事件を探しているのか?そんな事件は起きていない。
   これで君は、妻を2回殺した偽記憶を持った男になった訳だ」

「いや、私は絶対に彼女を殺した。彼女の勤める6階のオフィスにエレベータで上がり、
   逃げる彼女の額にレーザー銃の照準を合わせ...」
「いや彼女は生きているよ。なんならテレビ電話をかけてみようか?」

(今度こそ!2度失敗したからと言って、3回目も失敗するとは限らない)
クパチーノは急いでいた。地球の車は遅いので、速度制限機を外して、高速道路をひた走った。
そして自動運転に切り替え、眠りに着くのだった。



..............


しかし、この元々、とても複雑な話を、うまく、まとめる事ができませんでしたので、
全体のストーリーを追えなくいのですが、それは、原文をどうぞ...

ディック定番の、記憶の偽造の話なんですが、夢の中で、夢とわかる瞬間の感じが
なかなか、好きなんですが...どうでしょう?

記:2011.04.21


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三分 小説 備忘録

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