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模造記憶-新潮文庫
模造記憶


囚われのマーケット Captive Market / フィリップKディック 訳:山田和子 のあらすじ
初出 If(1955.4) 原稿到着1955 短編 第82作

バーセルソン婦人は、田舎の小さな店で商売をしている。今日は土曜日、いつもの販売旅行に出かけるのだ。
孫がこっそりと、彼女のおんぼろトラックに乗り込んだのも知らず、車を出した。

孫のジャッキーは、今日こそは、おばあちゃんの行く、別の街に行ってみようと思っっていた。
いつも、連れて行ってくれと、頼むのだが、いつも答えはNO。

ガタガタとおんぼろトラックは進む。
その途中、孫は、自分の体が消えかかっているのに、気が付く。

自分の体がトラックにめり込んでいるのだ。

何だこれは!いや、消えかかっていたのは、彼ではない。
トラックの方だった。やがて、彼の体は地面に転がり出た。

その先には、もう殆ど消えかかったトラックが、がたがたと進み。やがて消滅した。


テルマンは、脱出ロケットの最後の調整に、やっきだった。

あのババアがやって来て、俺達の足元をみた高い金額で、最後の物資を手に入れれば、俺達は金星に脱出できる。
核戦争で荒れ果てた、放射能だらけの地球とはおさらばだ。

しかし、俺がこんなに一生懸命なのに、仲間達は、なんだ。
ただの積荷工員がデカイ顔をしているし、野獣同然の堕落した生活をしている生き残り者もいる。
もう一度、秩序を正すのだ。

しかし、それも、まずは金星へ脱出してから。
ここにいては、やがて全員が、放射能の餌食になってしまう。

「金星か、楽しみだなあ。あっちへ行ったら、もう放射能の心配はない。
   俺は一日中ハンモックで寝て、歌を唄って暮らすのさ」

(何もできない堕落者達め、貴様らに金星に行く資格はない。この低脳な奴らが...)

そこにバーセルソン婦人のトラックが、やって来た。

婦人はみんなを集めて、前回の注文品を順番に渡す。明らかに馬鹿高い金額を代償として。

核戦争が起き、世界は破滅した。両国が放ったミサイルは、世界全土を焦土か放射能地帯にした。

水は干上がり、動物は死に絶え、植物すら絶滅の危機にあるこの時代、この、どこからかやってくる、
ばあさんの持って来る品物は極めて貴重だ。しかし、我々は、この強付くばばあ、が大嫌いでもある。

このばあさんは、明らかに、戦争が起きていない、地球のどこからかやって来る。
何度か、ばあさんのトラックに乗り込んで、向こうの世界に逃げ出そうとした者がいたが、みな途中で、
トラックが消えて、置いてきぼりをくらっていた。

ばあさんは"特別"なのだ。

「さあ、それから、この品物だけど、これは特別注文だから、値がはるよ。仕方ないね」
「ばあさん、もう俺達は行かなくちゃいけないんだ。だから、残りの注文品は、キャンセルだ」

「キャンセル?そんな事はできないよ。返品なんて、できないものばっかりだ。それじゃあ、私が干上がっちまう」
「今まで、散々儲けて来ただろうに。ともかく、俺達は行くんだ。キャンセルだよ」

ばあさんに敵意を込めた男達の様子は、慌てて入った仲裁がいなければ、ばあさんを殺しかねないようだった。
しかし、ばあさんの方も怒っていた。キャンセルだと?

せっかくの、良いマーケット、自分だけの良客がいたのに、それが行ってしまうとは、
我ながら迂闊だった。あいつ等の言われるままに、品物を持って来たのが、この結果だ。

ばあさんは帰り道で、どうしてやろうか!と考えていた。

「でも、私達は、あのおばあさんが居なくては、生きていけなかったし、金星に脱出する事など、
   夢の夢だったのよ。あの人は、何と言ったら良いのかしら、いわゆる"魔女"ね。
   別の時間から、この時間に渡ってこられるんだから」

「魔女だろうが、何だろうが、ただの強つく張りの、どんよくな女さ。ま、幸いこっちには、
   もう金なんて、大した意味がないから、良いんだけど」

ばあさんは、必死に打開策を考えていた。
ありうべき未来を透視する。
彼らのロケットが金星に辿り着く、正しい未来。しかし、そんな事はさせない。

別の可能性。彼らのロケットが爆発して、全員が粉々になり死んでしまう。これもダメだ。
あいつらが生きようと死のうと、かまわないが、私に得が一つもない。

あれや、これや、見ている内に、"最善"のルートが見えた。
「これだ!これなら完璧だ!」


金星ロケットは、発射後、姿勢を崩し、地面に叩きつけられた。
破壊された機体から這い出る人々。血だらけで、手足が折れている者も多数。

「一体、何が起きたの?」
「わからない。完全だったはずなのに、何故?」

「とにかく、薬が必要だ。しかし、あのばあさんは、もう来てくれない」

「いや、あいつは、きっと来るよ。知っているんだ。俺達が失敗した事を、絶対にあいつは戻ってくる」

「まさか?あいつが、こんな事をしたって言うのか?信じられん」

「とにかく、あいつは戻ってくるさ、きっと」




..............


超人が、一人だけ出てきたときのリアルなリアクション

例えば、この話は、そんな考察から出来た話だと思います。なかなか含蓄ある話です。

記:2011.04.15


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三分 小説 備忘録

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