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模造記憶-新潮文庫
模造記憶


想起装置 Recall Mechanism / フィリップKディック 訳:友枝康子 のあらすじ
初出 If(1959.7) 原稿到着1959 短編 第86作

精神分析医ハンフリーズは、戦災復興担当員シャープ氏の精神分析をしていた。

そのシャープは、今、落下恐怖症で、治療を受けているのである。階段を上る事にすら
激しい拒絶感を覚える。不可思議な症状に、ハンフリーズ医師も困っていた。

恐ろしいほどの落下恐怖。

実は、このハンフリーズ医師のところに相談に来たのも、
この医院が、2階ではなく、1階にあったためなのだ。

ハンフリーズ医師は、思う。
(この手の病気は、結局のところセックスの、暗喩なのだ)

シャープ氏は、治療のために、睡眠状態に入った。

シャープの周りに男達の黒い影が近寄ってきた。そしてシャープの顔を腹を叩きのめし、
崩れ落ちたシャープ氏のあばら骨を蹴り折る。

「どうだ、死んだか?」
「まだだ」

シャープは意識を失いつつ、男達の最後の言葉を聞いた。
「さあ、こいつを放り出せ」
そして、シャープは、暗い穴淵まで引きずられ、中へ蹴り落とされた。

ランプが付いた。
「シャープ氏!起きなさい!」

悪夢から醒めたシャープは、あまりの恐ろしさに、がたがた震えていた。

「や、奴らは、私を殺そうとした!しかし、こんな事は本当に起きたはずがない。
   奴らは私に偽の記憶を植え付けたのだ」
「奴らとは誰ですか?」
「...」

「それを知るために、もう一度、あの夢を見る必要があります」
「今日はもう無理です」

そして、別の日。

ペタルマ出身の彼は、農業復興を主張する同郷のジラーに付きまとわれていた。
国家の立場を考えれば、同郷であると言う理由で、ペタルマの農業復興を優先するなど、
真面目な彼にはできない事であった。

(今、わが国として必要なものは、戦災によって壊滅した工業の復興である)

ジラーはシャープにペタルマへの視察を依頼した。飛行機でペタルマに行くのだ。
その視察の日を、シャープは口にした。
その様子を観察していたハンフリーズは、シャープに外傷を与えた、その日の日付を知った。
それは、未来の日付だった。

シャープはこの先、未来に起きる殺人事件を予知し、それに恐怖しているのだ。

彼の故郷ペタルマは、爆心地で、予知能力のあるミュータントの多いところでもある。

ハンフリーズはシャープに、ジラーの要求を受け容れるつもりは無いか?と聞いた。
しかしシャープの答えは、NOだった。

決行の日は近づき、シャープ氏の恐怖心は絶頂になった。
しかし、この未来は変える事はできないのだろう。

精神科医バムバーグは、今日、最後の患者と話をしていた。その患者ジラーの言うには、
自分は、高いところが好きで、階段を見ればあがりたくなる。
飛行機も大好きで、先日は自家用飛行機を買った。

加えて最近は、何故か人を押したくて、たまらなくなる。

昨日は、エスカレータで前に居た女性を、無性に押したくなり、つい押してしまい、
怪我をさせてしまったそうだ。

それを聞いたバムバーグは思った。
(しかし、この手の奴は、結局のところセックスの暗喩なのだ)



..............


なかなか、良いですね。1行目から始まるサスペンス感。そして、最後の1行。その落差、ただのユーモアに終わらない恐怖

記:2011.04.04


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三分 小説 備忘録

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