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ロマンティック ストーリーズ  - ポプラ社(2001)
ロマンティック ストーリーズ

お気に召すことうけあい Satisfaction Guranteed アイザックアシモフ Isaac Asimov
ロマンティック ストーリーズ ポプラ社(2001) 訳:小尾美佐 のあらすじ

クレアは夫のラリイに言った。
「いやよ!あんなモノと一緒に暮らすなんて!」
隣の部屋に居たのは、ハンサムで長身の男性…のロボットだった。最新式だ。

「しかし、この実験は、僕の昇進の条件の一つなんだ。ロボットの事が良く判っていない、
   一般の人々の反応もみないといけないんだ」
「だけど、一緒に暮らすなんて…」
「危険は、ないさ。人間と同じだと、思えば良い」
「だから、嫌なのよ。他人が家にいるなんて!それも若い男よ!」
「いやいや、人間じゃあないんだ。機械だと思えば、気にならないだろ?」
「一体、機械なの?人間なの?」
「だから、人間並みに危害のない機械さ。心配はないよ。さあ、彼を紹介しよう」

「こんにちわ…」
「やあ、トニイ君。これが僕の妻のクレアだ。よろしく頼むよ!」
「はじめまして、ミセス ベルモント」
トニイの声は、低く滑らかに部屋に響いた。まるで人間だ。

「あら?話す事が出来るのね」
「おや、話さないとお思いでしたか?」

トニイの肌は磨き上げたプラスチックの様に曇りなく輝き、髪も一本一本、本物の様だった。
肌は、その服と、どこかで繋がっているのだろうか?


「トニイは型式TN3。最新式なんだ。これまでの鉱山掘削や水中作業用のロボットとは違う。
   その作業領域は家庭だ。だから一般の人々の反応を知りたいのさ」

クレアはラリイに耳打ちした。
(もしも、彼を怒らせたら、どうなるの?)
「そんな事は、こっそり言わなくても大丈夫だよ。彼は君に対して、
   『怒り』の感情を持つ事はできないんだ。そうプログラムされている」
「で、トニイは一体、何をするの?」
「君の代わりに家事全般をするのさ。そのためのロボットだもの。じゃあ、会社に行くから」

「…こ、こんにちわ」
トニイと二人きりになったクレアは、おそるおそるロボットに微笑んだ。
その、"人間とは思えないほどの"、美しい顔に。


ラリイは、前を歩く魅力的な女性に気づいた。華やかな服装、優雅な身のこなし。
グラディスだ。
家で待っている誰かさんに、見習って欲しい女性だ。こんな妻だったら、どんなに良いか。


「朝ごはんの準備が出来ましたが…」
「そこに置いておいて」
「お好みに合わせたつもりですが、トーストとコーヒーでよろしかったでしょうか?
   ミルクは、まだ入れずにお持ちしました」
「ええ、良いわ」
「よろしければ、お着替えを手伝いますが…」
「とんでもない!」


クレアが台所に向かった。さあ、今日も家事が始まる。一仕事だ!
しかし、そこは既にピカピカになっていた。

「奥様、昨日の状態が保てるように、昨晩、行なっておきました」
「一晩中、電気を点けていたって言うの?」
「いえ、私は暗闇でも見えますので、無駄な電気は消して行ないました。それに私には睡眠は不要です」

この機械は、私の褒め言葉を待っているのだな、とクレアは思った。しかし、彼女は別の言葉を口にした。
「あなた達は、家庭の主婦を失業させるために、作られたの?」
「いえ、残念ながら、私達には、奥様の様な創造性を持つ事は出来ません」
その言葉には賞賛が多く含まれ、全くの嫌味もないのだ。クレアには、頬を赤らめる事しかできなかった。

「主人は私には脳があるなんて、思っていないのよ。私だって、確信はないもの。
   私には大物の奥さんは向かないのよね…そう、あの…グラディスみたには…」
「家の事は、私がお手伝いさせて頂きます」
「でもセンスの問題なのよ。家の内装を素晴らしくする事もできないし」
「そう、なさりたいなら、理想の本を集めて頂けませんか。私が学習します」


翌日から、トニイは家事の合間に、クレアの借りて来た沢山のホーム アートの本をめくっては、調べていた。
その姿。ページをめくる手。指、爪。どれも本物そっくり。いや、本物以上だ。
そして、夜中も暗闇の中で、ページをめくるトニイの姿があった。

本の種類は増えて行った。
色彩学、化粧品に関する書籍。ファッション、服装史、それから大工仕事も。


ある日、トニイはクレアに対し、"実験"を始めた。
髪の形、眉の整え、お白粉と口紅。


鏡を見て、クレアは驚いた。
そして、トニイに言った。
「…ま、まあまあね。初めとしてはね…」


商品テストの条項で、家の外には出られないトニイは、クレアに詳細なリストを渡した。
織物生地、壁紙、塗料、服地…

「こんなに買うなんて、お金が足りないわ」
「これは、商品テストの一部です。会社の上司に説明して下さい。理解してくれるはずです」
「私に、そんな説得が出来るかしら?」

だが、化粧をして、新しい帽子を被ったクレアは、USロボット社の無制限クレジット カードを
持って帰って来たのである。


カ−ドを持って、クレアは高級服地店に行った。フランス語なまりの尊大な店主は、
そのクレジットカードを見ると態度を変えた。

しかし、その時、店には運悪く、"彼女"がいた。グラディスだ。

「あら、あら?こんな所で、お会いするとは?ミセス ベルモント?おめずらしいわね」
「いえ、初めて参りました」
「髪の形が、とっても"斬新"だわ。あはは…」


「なるほど…では、そのグラディス様を、この家にご招待なさったら、どうでしょう?」
「そんな事をしたら…」
「人間とは、その人、本人だけでなく、その人が属している社会的地位や環境でも、その人を見るのです。
   ですから、私が、学んだホームアートの知識を生かしてご覧にいれます。ただ、忘れていけないのは、
   その人の人柄も大事だと言う事です。例えば、私もご主人が、クレア様でなく、
   グラディス様だったら、ここまでお慕いは致しません」
トニーに手を握られて、そう見つめられると、もうクレアは何も考える事が出来なくなっていた。

それから、洗面所に駆け込むと、指をゴシゴシと洗った。
(あの指が…あの指が…)

それから、毎晩、寝室から、階下の居間で、深夜コツコツと小さなな音がするのを、
クレアはベッドで聴いていた。


一度、昼間、手伝おうとした。しかし、失敗した。
梯子の上から転げ落ちたが、トニーが目も止まらぬスピードで抱きかかえてくれたのだ…


招待の日が来た。
グラディスは、沢山過ぎる"仲間"を連れて来た。"楽しみ"に来たのだ。

しかし、グラディス達は、"楽しむ"事は出来なかった。口はポカンと開いたままだった。
そして、ようやく、出た言葉は、"…あんな、ハンサムは見た事がないわ…"


三週間の実験が終わった。

「いや、まいったな。この実験は…女房がまるで、別人になった…」
「こまった性格になったのかね?」
「いや、逆だ。申し分ない。しかし、あんなロボットを野放しにして置く訳にはいかん。徹底的な改造が必要だ」

そこにクレアがやって来た。
「まあ、トニイを改造するの。それなら、私に良い考えがあります。きっと、爆発的に売れますよ」

..............

ちょっと、落ちが違うんだけど、(あ、ストーリーも微妙に違いますが)、この方がたぶん、本質的なんでしょ。
ただ1964年の発表ですから。この話、この時点で、革新的だったとは思えません。プレイボーイ辺りの艶笑小話的な感覚から書かれた気がします。
10年前の、愛しのヘレンなんかがありきだった訳ですから、男女逆転の思考実験としては、どうでしょ?キャンディなんかも、数年後なんだと考えると…

やっぱり、艶笑小話…って事は、反動かあ?

記:2013.01.30


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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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