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宇宙の妖怪たち - 早川SFシリーズ
宇宙の妖怪たち


血をわけたなか Share Alike ジェローム ビクスビイ&ジョオEディーン Jerome Bixby & Joe E Dean訳:田中小実昌の あらすじ

ルシアノ号が沈没した。
航海士クレイグは、救命ボートにしがみ付き、何とか助かった。

この救命ボートにしがみ付いていたのは、もう一人、ホフマン シュタール。
ルーマニア人だそうだ。

救命ボートに乗れたのは、この二人だけ。
他に生存者は、いないようだ。

二人はボートに上がった。
クレイグはボートを調べた。

「食料も、かなりある。ここは、航路だから、待っていれば、別の船が来るさ」

しかし、沈没の際に、緊急無電は打てなかった。
(すぐに、救助に来る訳ではない。もしも、潮に流されたら、見つけられない場合も..)

快活なホフマンが、話を始めた。
自分は、冒険を求めて世界を回っている事。

マレイでは総督の顧問、ボルネオでは宝石採掘、絵も好きで、パリ美術館に
飾られた物もある...と。

「君に比べたら、僕の人生なんてつまらんものさ。アトランタのスラム街で、
   強い奴らにこづき回され、それが嫌で、航海士になったのさ」

食料と水は、二つに分けられた。
クレイグは、食欲がなかった。しかし、食わなければ。

「ホフマン!お前も食え」
「ああ、でも今は食欲がない。後で食うよ」

数日が経った。助けは来ない。

体力が劣るクレイグは焦燥し、疲れ果て、横たわっていた。
しかし、元気なホフマンに勇気づけられ、頑張っていた。

クレイグが、食料を取りに行くと、ホフマン用の食料が
手付かずなのに気がついた。

「どうして、食わないんだ。死んでしまうぞ」
「ああ、だが、本当に食欲がないんだ。それに、まだ元気さ」

クレイグは、日を追って衰弱して行く。
ホフマンは看病をする
「クレイグ。君が死んでしまったら、僕も死んでしまうよ。元気を出してくれ」

クレイグは、朦朧とした意識の中を話す。
この所、見る夢、バケモノに襲われる自分。

「ホフマン。聞いてもいいかい。君は食料も食べず、それでいて元気だ。
   それに、比べ僕は、食っても食っても、地を抜かれた様に、元気がない。
   もしかすると、君は吸血鬼なんじゃないかい??ははは!」

「実は、その通りなんだ」
その答えに、呆然と意識を失うクレイグ。

ホフマンは優しく子守唄を口笛で吹いた。ドイツのメロディー。

衰弱したクレイグは、ホフマンに食料を食べさせて貰う。
そして夜になり、クレイグが眠りに付くと、今度はホフマンがクレイグに
”食べさせてもらう”のだ。

「クレイグ、元気になっておくれ。君が死んでしまっては、僕も生きてはいけない」
吸血鬼に看病され、その腕の中に抱かれるクレイグ。

二人の関係は、かけがえのないものになっていた。

そして、食料も尽き、当てもなく海面をさまよっていたある日。
ホフマンは、航路に船影を見つけた。

手を振り、船を呼ぶ。幸い、船も彼らのボートに気がつき、近寄って来た。

手を降るホフマン。クレイグも気がつく。人間の助けが来たのだ。
とたんに、今、自分が看病し抱いているのが、吸血鬼だと気がつく。

慌てて、やめろ!とホフマンを、押しのけるクレイグ。
不意を尽かれたホフマンは、海面へと落ちた。

そこには運悪く、彼らのボートを狙っていたサメが!
たちまち、海の中へ引きずり困れるホフマン!

「ホフマン!ホフマン!」


クレイグは、たった一人の生存者として、助けられた。

それは、海軍の駆逐艦だった。
中には逞しい体をした船員達が、たくさんいた。

クレイグは、それまでとは、違った喉の渇きを覚えた。そして思い出した。
吸血鬼に血を吸われた者は、やがて...

そして思った。彼らは、昼間の激務に、夜はぐっすりと眠っているはずだ。

それを考えると、クレイグは舌なめずりを、するのだった。


..............

ミイラ取り落ちと言うんでしょうか、ゲイ落ちって言う可能性もあります。

しかし、前々作、前作と、この落ちの狼男、狼男、吸血鬼の、並べ方が巣晴らしいですね。
ジュディスメリルの並びなんでしょうか、で次の作品も吸血鬼の話です。

それから、「訳者:田中小実昌」、懐かしい名前です。

これを変換したら、「役者;田中小実昌」と出ました。
お、このIME判ってるな!
(普段は大バカだけど)

で、本作の作者はジェローム ビクスビイ(名作「今日は上天気」の作者)です。


記:2011.08.06

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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