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シティ5からの脱出 - 早川文庫
シティ5からの脱出


宇宙の探求 The exploration of space バリントンJベイリー 1972訳:小隅黎の あらすじ

我々の住む世界が属する物理的空間は、三次元連続体とでも言うものだが、
これは唯一の、自明なものではない。それよりも高位なものもあれば、また低位なものもありうる。

私は物理学者。阿片パイプを咥え、肺に吸い込む。

目の前にはチェス盤。私の心はチェスの騎士(ナイト)に語りかける。

チェス盤は閉塞した一つの世界。そこではポーンは前だけ、
ビショップは斜めに、キャッスルは前後左右にのみ、進む。

彼らの移動は、連続ではない、8×8の升目に区切られた非連続なものだ。
全くの不自由である。

しかし、本当にそうであろうか。

駒と駒との相対関係で、考えて見よ!
我々が、妻に、上司に、子供たちに、対面し、取り得る位置は、極めて少ない。

チェスの駒ほどの、ヴァリエーションも、持ち合わせていないではないか?

連続か、非連続かのみで、前者を高位と考えるのは誤りだ。

阿片パイプのせいか、急行列車のように、回転が速くなった私が、そんな事を考えていると、
チェス盤上の駒が、自由に動き回り(ルールに乗っ取って)、ナイトが、私にこう言った。

「あなたの所に、一時、避難させて頂き、ありがとう、ございます」

唖然としている私に、彼は、

自分が、宇宙の探求者である事、宇宙の様々なヴァリエーションに驚嘆していると、自分達の元々の
環境を模した場所(チェス盤)を見つけ、そこに避難した事を告げた。

彼は、その探求について語ってくれた。

他の時空に移動する時に、いきなり、異質なものに移動するのは難しい。
徐々に変化する空間を経由するのが、普通だ。
例えば、この時空連続体における、チェス盤のようなものを。

私は、彼らに我々の移動方法、空間上のA点からB点まで、直線で移動する事を説明した。
これらは彼らに取っては、驚嘆する方法だったようである!

それはともかく、私は、宇宙の局率は正であるか、負であるかを問うてみた。

しかし彼の答えは、かんばしくなかった。

結局のところ、宇宙は無限であり、すべての可能性があるのだった。
例えば、物理法則は、殆ど、この宇宙と同じで、光速度だけが、異なる宇宙もあるのである。

理論的に帰結する、普遍性などないのだ。

一様ではない空間を持つ宇宙もあれば、束のように構成され分枝されたAからBへ、BからCへは
移動可能だが、AとCの間では絶対に移動ができない、空間性を持った宇宙群もある。

時間方向が完全に可逆で、完全にやり直しができる宇宙。

空虚と言うものがなく、完全に岩や金属のようなもので埋め尽くされた宇宙。

オリガミのように、折りたたまれた宇宙。そこで物質は、折りたたまれ方により、
千変万化する。紙が折りたたみ方により、本物の飛行機になるのである。

1が基底数ではない宇宙。我々の宇宙では、2は1が二つと考えているが、
その世界では、2が基底数であり、1は1/2のように、不完全な数なのだ。

もちろん、その先には、3が4が5が...多くの基底数を別とする宇宙があるのだ。

そして、チェス人は去って行った。数時間は話したと思われた時間は、この宇宙では
ニ、三分に過ぎなかった。
チェス人の実在を示す証拠はない。私は、その記憶に誤りはない、と主張するだけだ。
宇宙には、我々には計り知れないものが、沢山あるのである。


..............

冒頭から、頭をくらくらさせる、ベイリーのアイデアが、冴えまくっております。
かなり、はしょりました(私にはうまく説明できない性質の宇宙が沢山あったので)。

記:2011.07.13

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三分 小説 備忘録

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