海外へ行こうという計画は１年前から温めていました。妻のあでりーが専門学校を卒業し、久しぶりに時間が取れることになったからです。それでも行きたいところがありすぎて、なかなか決められずにいた2014年6月。僕がサッカーのW杯に熱中しているさなか、急に妻が、「優勝した国へ行こう！」と言い出しました。半分冗談で聞いていた僕は、アルゼンチンが勝ったりすると、そりゃ行きたいけど航空券が高いわなあ、なんてぼんやり思っていました。結果、下馬評どおりの実力でドイツが優勝し、他に決める有効な手だてもないまま冗談は本気に変わったのです。

　もちろん、やりたいことはありました。一番は、フェルメールの絵を見ること。フェルメールとは、現存する絵が30数点ほどしかない画家で、その絵は世界中に散らばっています。これまで、日本とイギリスでそのうち１０点ほどを見てきました。ドイツにはなんと４都市に６作品があるため、これら全てを見られれば、一気に鑑賞済み作品が増えます。
　二つ目にやりたいこと。僕には「スターライト・エクスプレス」という大好きなミュージカルがあります。元はロンドンではじまり、日本を含め多数の海外公演も行われました。最初に名古屋で見て感銘を受け、次にロンドンで本場の空気を味わい、虜になりました。その後、二度のロンドン訪問での鑑賞、さらにはイギリスで巡回講演が行われた時も見に行き、観劇回数は９回を数えました。ところが、２００１年に１７年続いたロンドン公演が終了し、今ではドイツの公演を残すのみとなりました。こちらもいつ終わってしまうかしれず、近いうちに必ずドイツを訪れたい、そして今度は妻と二人で「スターライト・エクスプレス」を観たいという思いは、常に僕の頭にありました。
　三つ目にやりたいこと。僕と妻は普段から海外の旅番組を観るのが大好きで、ドイツの番組もいくつか観てきました。そこで観た風景や、美味しそうな料理などから、ドイツに惹かれる気持ちはありました。とにかくきれいな景色を見て、美味しいものを食べたい！　単純ながら強烈な欲望に突き動かされたという面はもちろん、少なくはありません。

　準備は、航空券の手配から始めました。格安航空券サイトをいくつか調べた結果、中国国際航空のチケットをWebサイトから直接購入するのが最安だとわかりました。なんと燃料費込みで79,000円！　前回のイギリス旅行と同じ航空会社で、あまりいい印象はないのですが、それでもこの価格は魅力です。ところが、しばらくするうちに燃料費が改定されたらしく、同日程で10,000円以上も値上がっていました。ふたたび探したところ、カタール航空のチケットが見つかりました。「Freebird」というサイトで、ページの作りやデータ入力方法がしっかりしていて信用できそうでした。さらに驚くべきなのは、料金の振り込み期限が出発１ヶ月前ということ。つまり、予約だけしておいて入金は期限直前まで待っておき、その間にさらに良いチケットが見つかれば無料でそちらに切り替えられるのです。（アルキカタドットコムなどでは、料金の振り込み期限は出発数ヶ月前となっており、それ以降に変更やキャンセルをおこなうには手数料がかかってしまいます。）　調べるとカタール航空の評判はおおむね良好で、なにより機内食が美味しいということで期待が高まります。燃料費込みで一人88,000円というのも納得の価格で、けっきょく、これより安いチケットは出てきませんでした。

　そしてこの旅での最大の挑戦は、宿の手配でした。初めて「airbnb（エアービーエヌビー）」というシステムを使ってみることにしたのです。これは普通の民家の一部を間借りするシステムで、宿泊費をかなり安く抑えることができます。今回、全部で15泊となるため、一泊分の料金は極力抑えたいと思っていました。
　airbnbではWebサイトから全ての手続きを済ませることができます。まずは地図から訪問地を検索すると、候補となる宿が一覧で表示されます。キッチン有り無しや無線LAN有り無しなど、種々の条件を入力して候補を絞り込み、部屋の写真や立地、料金などを見ながら、これはと思うところにコンタクトを取ります。簡単な英文で自己紹介を送ると、すぐに返答が戻ってきます。相手がＯＫならこれで予約成立で、あとはチェックイン時刻などを確認し合えば完了です。ドイツならば全ての表示はドイツ語か英語ですが、翻訳ボタンを押せば日本語変換されます。（google翻訳なので精度はイマイチですが、概略はじゅうぶん理解できます。）僕がもっとも参考にしたのは、宿泊者からのコメントで、なるべく多くの良い評価が掲載されているところを選びました。とてもわかりやすく良くできたシステムで、予約はスムーズにできました。トラブルが起こらないかは保証の限りではありませんが、あとはもう現地に行ってみるしかありません。
　結果がどうなったか。気になる方は、ぜひこの先の旅行記を読んでみて下さい。