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-KURENAI-
Vol.4
暫くは顔を合わせるのも見るのも嫌だったが、狭い船の中ではそれは無理な事で、朝食の席に現れたゾロは、憎らしいほど平然としていた。 内心は分からないが、少なくとも後悔や反省をしているようには見えない。 何を思い、何を考え、昨夜の行動に出たのか分からないが、ゾロが無かった事のように振る舞うのなら、サンジも同じように振る舞うしか手立てが無かった。 否。 そのようにしてしか、気持ちの均衡を保つ事が出来なかった。 動こうとしたがらない身体を無理に立たせ、みんなが起き出す頃に間に合うよう朝食が作れたのは、気力だけだったかもしれない。 今も軋む身体をシンクに凭せかけ、食事風景を眺めていた。 「サンジ!おかわり!!」 「またかよ」 ルフィに4度目のおかわりを催促され、少々うんざりしたように空いた器を受け取りながら、全員の皿に目を配る。 ナミの皿にはまだ充分に残っている。それにナミには丁度良い分量を注ぎ渡していたので、おかわりは不要だろう。 ウソップは半分程。そろそろ二杯目と言い出す頃だ。 ゾロは… ゾロの皿に目を移した所で、そのゾロがカタリと静かに立ち上がる。皿の上は何も残っては居ない。 「おい、もういいのか?」 そのままキッチンを去ろうとしていたゾロに、思わず声を掛けた。朝食はルフィ並に食べるゾロが、注ぎ渡された分だけで満足するとは思わなかった。 声を掛けられた事に少しだけ驚いたような顔をする。眉を微かに上げるだけの微かな動きだったが。 「……」 何かを言おうと口を僅かに開きかけ、そのまま口を噤んでしまった。 平然としている、と思っていたが、視線が絡まない。サンジの方を見ているのだが、決して目を見ようとはしていなかった。 「朝はしっかり食えよ。朝食が一番重要なんだぞ」 「おお!サンジ!!イイコト言うなぁ!!だから、おかわり早くくれ!」 「オマエは食い過ぎなんだよっ!」 サンジの視線がルフィに向かうと、躊躇いを残しながらも、くるりと背を向けて手だけをヒラヒラと振りながらキッチンを出て行った。 ゾロの背が閉まるドアに消えて行くのを、ぼんやり見詰めていると、ナミが問い掛けて来た。 「…ケンカでもしたの?」 「へっ?」 いつもなら小競り合いから乱闘に発展するようなやり取りが、何事も無く済んでしまった事を不審に思ったらしい。思わず間抜けな声が出る。 「なぁんか、ゾロもサンジくんもおとなしいし?ケンカでもしたのかな〜と思って」 「あ…いや…してないよ」 「ふぅん?」 目敏いナミが、サンジの切れた口の端を見逃す筈もないが、大きな瞳で覗き込まれてもヘラリと笑う事しか出来ない。 「ほら、ルフィ。おかわりなら今渡すからウソップの皿から盗るのはヤメロ」 ルフィはおかわりを待ちきれず、隣のウソップの皿から摘んでいたらしく、二人の騒ぎ声がサンジを我に返す。ナミの問い詰めるような視線から逃れるように、鍋に向かった。 ルフィに注ぎ足した器を渡し、ゾロの空いた皿を片づける。 −− 分からねぇ… 昨夜から何度思っただろう。 綺麗に食べ尽くされた皿を見ながら、我知らず溜め息が漏れた。 その時、ドオンと大きな音を立て、船が傾いだ。 「何?!」 「なんだ、なんだ?!」 「ナミさんはココに居て」 ナミにそう言い置き、慌ててキッチンから飛び出す。それでも皿を割らないようにシンクに放り込む事は忘れなかった。 「何だ?敵襲か?」 飛び出してきた(というか、まだ食事中だとばかりにテーブルにしがみついていたルフィをナミが叩き出したらしい)ルフィが呑気に麦わらを被り直す。 「…そうらしいな」 キッチンを出た瞬間目の前にはメリー号の倍程の船が数隻。髑髏マークの旗を見れば、それが民間船でも海軍でも無い事は明白だろう。 サンジが出た時には既に抜刀したゾロが甲板の先に立っていた。 伸びる手でメリーの頭を掴み、一気に飛んでいくルフィを横目に、優々と歩いてゾロの隣に立つ。 「んーと…いち、に〜…と、一人3隻な」 煙草に火を点けながら、船の数を数え、一人当たりのノルマをサンジが告げる。 「ん?おれだけでもいいぞ」 「ばぁか。テメェだけに運動させっかよ。いい食後の運動になんだろ」 ぐるぐる肩を回すルフィに、サンジはニヤリと笑って見せる。 「…お前…」 「あ?何だよ。テメェまでオレだけでいいとか抜かすんじゃねぇだろうな?」 小さく掛けられたゾロの声に、サンジは振り向き眦を釣り上げ煙を吹き付けた。 「ふーざけんな。オマエらだけに良いカッコさせるか」 「……」 「大丈夫か、とか言うなよ。オロスぞ」 何か言いたげなゾロを無視し、視線を前の船に向ける。 「あんなコトくらいで、どうこうなるような柔な身体してねぇんだ、オレは。テメェは前だけ見てりゃいい。それとも腹の傷が疼くか?」 「…うるせぇ」 「はっ!上等。来たぜ」 船尾に回り込まれないようにナミが指示を出して、ウソップが操縦しているのだろう。飛び乗ろうとする敵を軽々と海に蹴り落として行く。 ルフィが飛んでくる大砲を跳ね返しつつ、拳を絶え間なく繰り出している。 二本の刀で充分と、打ち振られる刀に照り返された光りが時折届くのを視界の端に捕らえ、ゾロの気配を背に感じた。 心地よい。 背後を気にせずに闘える。 ゾロも振り返る事はしない。 −− 振り返るな… −− 前だけ見てろよ、オマエは 「しつ…っけぇな!まぁだ出てくんの、かよっ!」 蹴っても散らしても湧いてくる敵に、辟易する。腰にじわりと痺れを感じ、折れていたアバラが軋んだ。 「めんどくせぇ〜な。ゾロ、サンジちょっと退いてろよ」 「ああ?」 「何だぁ?」 ルフィも同じように焦れたのだろう。敵船のメインマストを力任せに折ると、同じく力任せに振り回した。 「うわ…!」 「おわっ!!ば…馬鹿野郎っっ!!」 残ったのは粉々に砕けた船の残骸。 馬鹿げた風景に、甲板に座り込んだサンジは溜め息を付く。 「相変わらず信じられねぇ馬鹿だな…」 「…全くだ」 ゾロは肩を竦め、腕に結んだままのバンダナを外し、返り血で汚れた顔を拭い始めた。 それくらいでは落ちないどころか、逆に拡げているようで、益々汚れていくゾロを見てサンジは笑った。 「…っおい!サンジ!!」 へぇ、アイツオレの名前知ってたよ、と薄れる意識の中で思った。 −− そういや、昨日も呼んでたっけ… |
2004/9/6UP
有り得ない…
キリリクなのにこの長さ…(T_T)
そのうち推敲した方が良いかもしれませんね。
トホホ…
*Kei*